VAIO株式会社が開発中の「VAIO Prototype Tablet PC」が、2014年11月2日、大阪・梅田のソニーストア大阪において初めて一般公開された。

トークショーで公開された「VAIO Prototype Tablet PC」

同日に2回に渡って開催された「未来のVAIOによって描かれる、新しいPCライフ」と題したトークショーにおいて、VAIO株式会社の商品企画担当ダイレクターの伊藤好文氏と、フォトグラファーの御園生大地氏が、「VAIO Prototype Tablet PC」によるデモストレーションを行いながら、同製品へのこだわりや、VAIOが目指す「本質+α」の考え方などについて説明した。

今回のトークショーは、ソニーストア大阪が、2014年11月9日にオープン10周年を迎えるのに合わせて開催したソニーストア大阪10周年記念祭「楽しい生活with SONY」の目玉イベントのひとつ。11月3日には当初予定されていなかった「VAIO Prototype Tablet PC」の参考展示も急遽行われた。

「VAIO Prototype Tablet PC」は、米ロサンゼルスで開催されたAdobe MAXで、同社が初公開したVAIOブランドのタブレットPCの試作品。Adobe MAXは、参加費用が1500ドル(約15万円)となるクリエイターを対象にしたプライベートイベントであり、一般ユーザーを対象に公開されるのは今回が初めてのこととなる。

各回とも先着順で決定した20人が参加。さらに立ち見での参加を含めて各回60人以上がトークショーに参加した。

トークショーは11月2日に一日限定で開催した

「VAIO Prototype Tablet PC」トークショーの様子。立ち見でも多くの人が参加した

VAIOのPCは「創造性と生産性の両立」

VAIOの伊藤ダイレクターは、「VAIO Prototype Tablet PC」の開発経緯について触れ、クリエイター向けとした「VAIO Prototype Tablet PC」の開発は、ソニー時代の2012年秋に発売した「VAIO Duo 11」において、イラストレーターから、「机に縛られずに外に持ち出しても、創作作業ができるPC」として注目されたことが発端だとした。

インタビューに応えてくれたVAIO株式会社の商品企画担当ダイレクターの伊藤好文氏

VAIO Duo 11」はもともと、クリエイターの利用を想定したPCではなかったという。ビジネスパーソンが、ペン入力を利用して、PCをノートの代わりに使うことを目指して開発した商品であった。だが、クリエイターから、持ち運べる「VAIO Duo 11」は創作する場を広げられるという評価があがり、そのことがこの領域に向けて本格的に取り組むきっかけとなった。その後、写真家やイラストレーターなどとの連携を開始。アドビとも連携を行い、デザインや機能を研ぎ澄ましていった。

こうしたソニー時代からの取り組みが、「VAIO Prototype Tablet PC」につながっているという。

そして、「『VAIO Prototype Tablet PC』が目指すゴールは、クリエイターにデスク外の第2の場所で、プロレベルの創作を支援することにある」と位置づけた。まずはAdobe MAXで、「VAIO Prototype Tablet PC」を公開したのも、クリエイターを対象にするという明確なターゲットを持った製品であったからだ。

伊藤ダイレクターは、「Adobe Maxは、クリエイターに使ってもらうことで、我々が研究開発してきたものが正しかったのかどうか、どう改善すればいいのかを確認する場でもあった」としたほか、「自動車メーカーはコンセプトカーを開発し、レーシングドライバーによって細かいフィーリングを突き詰めていくが、『VAIO Prototype Tablet PC』もそれと同じ役割を持った"コンセプトPC"といえるもの。クリエイターに利用してもらい、次のPC、これからのPCはどうあるべきかを突き詰めていくことになる」と語った。

「クリエイターは、創造する仕事でPCを使い、しかも、限られた時間のなかで創作物を生み出す。つまり、創造性と生産性の両立が求められている。クリエイター向けのPCを作ることは、VAIOが投入するすべてのPCの考え方につながる。VAIOが投入するPCの役割は創造性と生産性の両立にある」(伊藤ダイレクター)。

トークショーでは、VAIOのホームページに掲載されている「PHILOSOPHY」のページにおいて、その背景に使われている写真が、「VAIO Prototype Tablet PC」であることを初めて明らかにされた

そのほか、伊藤ダイレクターは、「VAIO Prototype Tablet PC」は、「パフォーマンス」、「モビリティ」、「クリエイティブUX」の3点が特徴だとし、パフォーマンスについては、HプロセッサーラインのQuad Coreプロセッサの採用やグラフィックアクセラレーターにはIris Proを搭載していること、PCIeのハイスピードSSD採用していることに触れ、具体的な指標を示しながら高性能ぶりを説明。「モビリティ」については、「今日は重量などは明らかにできないが、このあと、みなさんに実際に触っていただき、軽さを体感してもらいたい」として、参加者に直接触れてもらう時間を設けた。

そして、「クリエイティブUX」については、デタッチャブル形状の採用、ワイヤレスキーボードの採用により、クリエイターが使いやすいレイアウトを可能にしたこと、独自のフリーストップスタンドにより、手で補助することなく、自由に角度を変えられることなどを紹介した。そして、ディスプレイに採用したダイレクトボンディング方式によって、ペン入力時の視差を小さくでき、細かい部分まで描画できる点にも触れた。

「『VAIO Prototype Tablet PC』は、小さなボディにデスクトップ並の高性能を実現し、いつでもどこでもストレスなく本格的な描画ができる製品を目指している。みなさんの声がこの製品をさらに進化させることになる。ぜひ、多くの意見を聞きたい」と参加者に呼びかけた。

場所の制約から解放する唯一のタブレット

一方、御園生氏は、Photoshopを使用して「VAIO Prototype Tablet PC」のデモストレーションを行い、その特徴を示してみせた。

御園生氏が高い評価を寄せているのが、高精細ディスプレイだ。「VAIO Prototype Tablet PC」は、12.3型のアスペクト比3:2のディスプレイを搭載。Adobe RGBカバー率が95%以上、2,560×1,704ドット、250dpiの高解像度を実現している。

フォトグラファー/レタッチャー/3DCGクリエイターの御園生大地氏

「VAIO Tap 11と比較すると、赤の再現性に優れており、食べ物や花などがいきいきとして表現できる。これはプロの目からみると大きな差である」としたほか、「色の確認を行うのにモニターの表示性能が不十分なデバイスが多いが、「VAIO Prototype Tablet PC」は、余裕のある表示性能を持ち、IPS液晶による視野角の広さがあるのが特徴。撮影現場で、クライアントと話をしても仕上がりの色合いを共有できる。プロにとって何事にも変えられない利点である」と述べた。

また、「静止画を扱うクリエイターにとっては、十分すぎるスペック。これ以上のものはいらない。撮影現場で画像を閲覧し、ホテルやカフェといった出先でもレタッチができる。どちらの作業も1台でこなすことができるデバイスはこれしかない。クリエイターを、場所の制約から解放する唯一のタブレットになる可能性を秘めている」と期待を語った。