コンセプトを体現する試作機

今回、試作品をAdobe MAX 2014に展示した理由は、クリエイターの声を収集するという狙いのほかに、もうひとつの狙いがある。それは、VAIO株式会社が掲げた「本質+α」を、ひとつの形として表現するという狙いだ。

VAIOが目指す「本質」には、「PCとして認められる本当に必要な性能と機能を持った製品を作る」という意味を込め、「+α」には、「人の気持ちに突き刺さるような一点突破の発想、VAIOならではの審美眼に根ざしたモノづくり」といった意味を込める。

伊藤ダイレクターは、「『本質+α』という言葉には、概念的な要素が強く、モノで示さないとそれが伝わりくいという部分がある。多くのユーザーからも、VAIOが目指す『本質+α』とはどんなものなのか。言葉だけでなく、早くモノを見せて欲しいという声があった」とする。

新たなVAIOを表現するのは、とにもかくにも製品である。

VAIOが年度内に投入する予定の新製品は、いくつかの製品が並行的に開発が進んでいる。だが、「クリエイティブタブレットPC」は、そのなかでも先行して開発を進め、Adobe MAX 2014での展示に間に合わせてきものだ。つまり、「クリエイティブタブレットPC」が、VAIOが初めて披露した「本質+α」の形だったといってもいい。

もちろん、タブレットのみで使用することも可能

伊藤ダイレクターは、「クリエイティブタブレットPC」の位置づけを、「自動車メーカーでいえば、コンセプトカーのようなもの」とする。

「コンセプトカーの役割が、走りを極める、あるいは次のクルマのあり方を探求する、メーカーとしての世界観を表現するというものであるように、クリエイティブタブレットPCは、VAIOが向かうべき方向を示しているものになる」。

つまり、単にクリエイター向け製品を公開した、という観点だけには留まらないものとも位置づけるのだ。

というのも、プロクリエイターが求めるツールは、創造性の質と、生産効率の両面を追求したものであり、創造性と生産性の追求は、VAIOが目指した「本質」でもあるからだ。つまり、これは今後、VAIOが投入するビジネスコンシューマをターゲットとした製品群にも共通する考え方だといえよう。

そして、クリエイター向けの本質を追求することで、それが「+α」へと変わる。これと同じロジックで、ビジネスコンシューマを対象としたPCづくりが行われることになる。

VAIOにとっては、様々な意味と狙いが込められたのが、今回のクリエイティブタブレットPC。VAIOの次の製品に期待を抱かせるには十分な仕様だといえるだろう。