8月1日より、新たな携帯キャリア「Y!mobile(ワイモバイル)」がスタートした。国内インターネット企業の代表格であるヤフーとの連携サービスなど、既存のキャリアにはない独自サービスを展開する同社は何を目指すのか?

Y!mobileサービスを知る上でキーとなる3名に話を聞く本企画。取締役兼COOの寺尾洋幸氏に続く2人目は、取締役でプロダクト&コンテンツ担当の村上臣氏。同社が7月に発表したスマートフォンの新製品「STREAM S 302HW」「DIGNO T 302KC」を中心に、製品戦略について聞いてきた。

ワイモバイル 取締役 プロダクト&コンテンツ担当の村上臣氏

単純なLCCではなく、ユニークな存在に

Y!mobileの新製品のコンセプトについて村上臣氏は「世界規模で出荷されるコストメリットのある端末を導入し、自社開発を加えてスピーディに提供することを目指した」と説明する。高品質な端末とサービスを組み合わせリーズナブルに提供する―― というのが同社の考え方だ。

インタビュー時に用意いただいたY!mobile端末。本稿で解説する「STREAM S 302HW」「DIGNO T 302KC」のほか、モバイルWi-Fiルーター「Pocket WiFi 303HW」 も

7月に発表した新製品の「STREAM S 302HW」はHuawei製、「DIGNO T 302KC」は京セラ製と、グローバル市場で端末を提供するメーカーの製品。カメラや防水などの日本ユーザー必須の機能を備えながら「料金面でも満足してもらえるように」というスタンスでセレクトしたという。

ワイモバイルの前身となるイー・アクセスとウィルコムは、当初「ローコストキャリア(LCC)」という表現を採用していたが、Y!mobileではLCCという表現は使っていない。「LCCではなく、別のアングルのキャリアとしてユニークな存在になりたい」と村上氏は思いを語る。

「STREAM S 302HW」「DIGNO T 302KC」の魅力とは?

Y!mobileサービスの提供開始にあたり、月額2,980円からという魅力ある価格の料金プランを用意した同社。端末価格を含め、フィーチャーフォンユーザでも無理なくY!mobileスマートフォンに移行できるよう配慮している。

「STREAM S 302HW」は、SIMフリーで厚さ6.8mmの薄型ボディを実現しながら、端末価格は25,920円と低価格。「サクサク感はAndroidのハイエンドモデル並み」(村上氏)だという。

加えて、「スリムで軽くて無理なく2台目としても利用できる」と村上氏。プライベート用の端末として、STREAM Sを使っているという。もちろん、パケットマイレージなどのY!mobileスマートフォン向けサービスも利用可能。「ワイモバイルの世界観を実現できている端末に仕上がっている」と自信を見せる。

「STREAM S 302HW」は、4.7インチのHDディスプレイを搭載した薄型軽量スマートフォン ※画像は7月に開催されたY!mobileサービス発表会のもの

続いて、2014年9月に発売予定の「DIGNO T 302KC」。同製品は、米国防総省が定めたMIL規格に準拠した耐落下衝撃性能や防水、防塵性能を備え、アクティブな使い方をする人をターゲットにしているという。こうしたタフ性能を採用するとコストは上がるが、「お手頃価格で日本仕様がキッチリ入った端末を出したかった」と村上氏は語る。

また、カラーバリエーションもサイクリングイベント「ツール・ド・東北」をイメージしたグリーンのスペシャルカラーなど「アウトドアに映える鮮やかな色」から普段使いの落ち着いた色まで5色揃えた。さらに幅広いユーザーに使ってもらえるよう、いかにもタフネスというデザインではなく、日常的に使えるデザインを採用したという。

「DIGNO T 302KC」は、防水、防塵に加え耐衝撃性能も備えたモデル。豊富なカラーバリエーションも魅力

ちなみに、Y!mobileスマートフォンの大きな特長でもあるヤフー連携サービスの導入についても工夫している。100個ぐらいあるというヤフー関連アプリを「インターネットは自由なもの。自由に使って欲しい」という考えのもと、「端末ごとのユースケースを考えて厳選」(村上氏)してプリインストールしたという。

「STREAM S 302HW」「DIGNO T 302KC」はともに、価格と機能のバランスを考えたコストパフォーマンスモデルだが、ハイエンドモデルを好む層には、Android OSを提供するGoogle製の「Nexus 5」も併売すると村上氏。このほか、各社が立て続けに提供し、話題となっている格安SIMサービスについても言及。通信費を抑えるために格安SIMを選んでいる人にとって、ただ安いだけではないY!mobileスマートフォンのスマホプランS(1GB)は「競争力のあるプラン」と自信を見せる。

スマートフォンだけでなくIoTの世界も

「別のアングルのキャリアとしてユニークな存在になりたい」と村上氏が述べたように、ワイモバイルは、いわゆる”携帯キャリア”という枠にとらわれない独自性を追求している。その一端が、同社の旗艦店である「ワイモバイル六本木 Internet Park」に展示されている「IoT(Internet of Things=モノのインターネット)」製品の数々だ。

国内ではここでしか見られないないものもあり、「こうした製品を展示しているのは、IoTの世界の提案のためだ。「新しいものにはチャレンジしていきたい」という観点からこうした製品の展示を実施しており、並んでいる製品は、村上氏が「世界中を歩いて直接買ってきたようなモノもある」とのこと。

「今、スマートフォンが家庭内の電化製品のハブになろうとしている。スマートフォンが、音楽や電子書籍などをソフトウェアで飲み込んでいったように、家電の領域も飲み込もうとしている」と村上氏は語る。今後もスマートフォンと接続して使うことで、「こんなこともできる」といった世界観を紹介・提案していく考えだ。

「STREAM S 302HW」「DIGNO T 302KC」といったスマートフォンはもちろん、同社が視野に入れるIoTの世界にも注目したい。

第1回:取締役兼COO 寺尾洋幸氏インタビュー
第2回:取締役プロダクト&コンテンツ担当 村上臣氏インタビュー
第3回:Y!シナジー推進室 室長 三浦由佳氏インタビュー