先週は「Surface Pro 3」のCore i3モデルの国内発売が2014年秋以降に延期され、米Microsoftの取締役会メンバーにワイヤレス業界で有名なJohn W. Stanton氏が加わるなど興味深い一週間だった。今回は、先週アップデートしたばかりのOneNote for iOSに注目したい。Microsoftが新たに目指す"プロダクティビティ&プラットフォーム企業"を表現しているプロダクトだからだ。

スマートフォン/タブレット版のOneNoteは使えるか?

ある日、同業者に「最近のMicrosoftはOneNoteを推してるね」と話しかけられた。そう言われて思い返すと、Windows/Windows RT/Windows PhoneといったWindowsプラットフォームはもちろん、Mac OSやiOS、Android向け無料版OneNote 2013をリリース中。先頃発売されたSurface Pro 3も、付属するSurfaceペンのトップボタンを押すとOneNoteが起動するなど、その組み合わせを強くプッシュしている。

ペンで手書きメモを作成するソリューションが使いやすいSurface Pro 3

OneNoteは2002年は、開発コード名「scribbler」が示すように走り書きした内容をメモとして記録する機能を中心としたデジタルノートアプリケーションだ。当初から音声入力などにも対応し、既存のワープロとはひと味違うものだった。

当時、MicrosoftはWindows XP Tablet Editionをリリースし、Tablet PCのブームを巻き起こそうと模索していた。しかし、いかんせんサポートツールも盛り上がらず、そのブームはほどなく鎮火した。

だが、時も変わった2010年には、iPadやAndroid搭載タブレットがリリースされ、"タブレット元年"とも言える再ブームが到来した。現在では、従来型のPCを追い落とす勢いでタブレット市場は急成長している。

企業方針の転換をメールで全従業員に配信したNadella氏

このほど、Microsoftの新CEOであるSatya Nadella氏は、「At our core, Microsoft is the productivity and platform company for the mobile-first and cloud-first world.」、すなわち、モバイルとクラウドを第一とする、世界のためのプロダクティビティ&プラットフォーム企業へと方針を転換した。

Nadella氏は、"すべての個人と組織"に"デジタルな仕事と日常生活のエクスペリンス"を提供することを目的に、マルチプラットフォーム化を目指すと語った。Windowsはもちろん、iOSやAndroidといった他社製OSに関しても、デジタルな仕事と日常生活の向上を実現するアプリケーションやサービスを提供していくという。

その一部がOneNoteの一部無料化なのだろう。OneNoteは、Windowsデスクトップアプリ版のみ無料/有料版が混在し、Windowsストアアプリ/Windows Phone版、iOS版、Android版Mac版、そしてWeb版が無料である。

Windowsストアアプリ版「OneNote」

iOS版「OneNote」

Android版「OneNote」

単に無料アプリケーションをマルチプラットフォームで展開している訳ではない。ポッドキャストのサポートや、メール送信によるWebクリップ機能、Google Chrome用拡張機能など、アプリケーション本体だけでなく周辺ツールの準備も怠っていない。つい先日も、Mac OS版とiOS版のマイナーアップデートを行ったばかりだ。

長年筆者はちょっとしたメモをテキストファイルにまとめてきたが、最近はOneNoteに移行させつつある。それというのも図版(HTML+画像で取り込みたいので不満は残るが)やWebページのキャプチャー、アウトラインプロセッサー風にインデントで処理できるからだ。タグ機能が用意されていないなど、他のデジタルノートアプリケーションからすれば見劣りする部分もあるが、最終的にデータを集約できるメリットは大きい。

そして、今回のマルチプラットフォーム戦略により、タブレットやスマートフォンでもOneNoteの編集が可能になったのである。では、完成度はどれほどのものなのだろうか。

たとえば、iPhone/iPad版には、Windowsストアアプリ版にはないファイル挿入機能が新たに加わった。だが、すべてのアプリケーションが追加機能をサポートしている訳ではない。iOS版OneDriveやGmailなどを試してみたが、「OneNoteで開く」を確認できたのは標準のメールだった。

iOS版OneDriveでPDFファイルを開き、OneNoteに追加を試みたがアプリケーションが選択できなかった

iOS標準のメールアプリで添付ファイルを開いて共有設定を行うと、「OneNoteで開く」が現れた

添付ファイル付きブックをWindowsストアアプリ版で開いた状態。閲覧を始めとする操作が可能である

iPad版OneNoteで<挿入>タブを開いても、ファイルが候補に現れない

添付ファイルはWindowsストアアプリ版でも操作できるが、気になるのはiPad版である。上図のとおり<挿入>タブが用意され、ここからファイル添付が可能になるのかと試行錯誤してみたが、操作方法はiPhone版と同じく共有ボタンを使うというものだ。せっかく<挿入>タブを設けている以上、UI的な問題が残っていると感じたのは筆者だけだろうか。

この他にもOneDriveへのサインインが未完了なため、ノートブックの同期が終わらないなど、いくつかの不具合に出くわしたが、いずれにせよタブレット/スマートフォン用OneNoteは多くの改善が必要であることが確認できた。Microsoftにはさらなる努力を期待したい。

阿久津良和(Cactus)