PCI-SIGは今年もSanta Claraで恒例のPCI-SIG Developers Conferenceを6月4日~5日のスケジュールで開催した(Photo01)。ということで、いつものようにUpdateをご紹介したい(Photo02,03)。
Photo02:おなじみAl Yanes氏(President and Chairman, PCI-SIG) |
Photo03:技術的な説明を担当した、これもおなじみRamin Neshati氏(Marketing Workgroup Chair)。前はTreasureという肩書きもついてた気がするのだが |
さて、今年のUpdateであるが、あまり大きなものはない。昨年からの傾向として、High-Speed化よりもむしろ省電力化の方が大きなトピックになっており、これもあってかまずはIoTとかSoCへの適用が最初に出てくるようになっているところか(Photo04)。以下個別に説明を。
順調に推移するM.2
まずIoTに関して(Photo05)であるが、PCI Express Gen2からHalf-Swing(もしくはLow-Swing)と呼ばれる低電圧仕様に加え、PCIe Gen 3.1でL1 Sub-stateが追加され、L1状態における待機電力をさらに削減可能となった。またM-PCIeにより、さらに省電力化も可能になったとする。またSoCへの統合に向けた若干のプロトコル拡張がECRの形で現在策定中であるとする。
Photo05:Half-Swingは信号の振幅電圧を800mV→400mVにするもの。当然Data EyeのHeightは半減するが、SiP上での接続などにはこれでも十分であり、テストでも問題なく動作することが実証できたとする |
その大きなトピックであるが、M-PCIeへの移行は順調であるとする(Photo06)。Neshati氏によれば「半年前にM-PHYを使ったサンプルがリリースされたが、いきなりWindows 8を起動させ、ちゃんと動作することが確認できた」としている。全体としては昨年の話とあまり変わらなかった。
一方M.2に関しては、特に滞りもなく順調に推移しているという話であった(Photo07)。実のところデバイス開発側の関係者に聞くと、M.2とSATA Expressを比較した場合、恐らく圧倒的に多いのがM.2で、SATA Experssは割と限定的であろうという意見が多い。
そもそもSATA ExpressにしてもM.2にしても、Storageとして使う場合はSSDになる。そうするとM.2の実装面積があれば十分で、SATA Expressの想定する2.5/3.5inchのドライブほどの体積は要らない(むしろ実装体積がデカくなる分、不利)という意見が多く、またSATA Expressは原理的にSSDのみの対応なのに対し、M.2はI/O拡張としての利用も想定しているあたり、はるかにマーケットが大きいという判断な様だ。こうしたこともあってか、M.2は既に「成功が見えている規格」という見方をPCI-SIGではしているようだ。
余談であるが、特にモバイル向けにはより省電力なソリューションとして、M-PCIeを使ったM.2が出てきても不思議ではない。これに関して尋ねたところ、「電気的には今のM.2は既にM-PCIeに対応している。その上の規格に関してはM-PCIeで既に策定されているから、規格上はこれを組み合わせれば問題はない。ただ実際にそうした製品が出るかどうかはPCI-SIGはノータッチなのでカードベンダーに聞いてほしい」(Neshati氏)との事だった。
もしM-PCIeベースのM.2カードが混在した場合の相互運用性がどうなるかはすごく気になるところだが、いまのところMIPI PHYはSoCと周辺回路の接続などに限られているようで、特に拡張カードにMIPI PHYを利用するという話は全く聞かないので、仮に実現しても、それはそのメーカーの独自仕様という形になるのかもしれない。