そして、エレクトロニクス事業の低迷要因として、PC事業の存在も見逃せない。

PC事業は、日本産業パートナーズに売却し、VAIO株式会社として、7月1日から新たな体制で事業を開始する。ソニーからは完全に切り離れた形で事業を行うことになるが、それでもソニーに残る赤字は大きい。

ソニーのPC事業は、2012年度に386億円の赤字を計上。さらに、2013年度には917億円の赤字を計上した。2013年度の赤字のなかには、PC事業の収束を決定したことによる費用として583億円が含まれており、これもエレクトロニクス事業の収支に悪影響を及ぼしている。

そして、気になるのは、売却後の2014年度以降も、PC事業の赤字が継続するという点だ。

ソニーによると、2014年度にもPC事業で800億円の赤字を見込むことを明らかにしている。ここでは、カスタマーサービス費用などを含むPC事業の収束に伴う費用として約360億円、販売会社の固定費負担額として約270億円が含まれるという。さらに、2015年度に関しても「2014年度ほどの額にはならないが、カスタマーサービス費用は残ることになる」(ソニーの吉田CFO)と、赤字が継続することを示した。

こうしてみると、ソニーは2012年度から15年度までの3年間で、PC事業で2,100億円規模の赤字を計上することになる。驚くべき赤字額だ。言い換えれば、赤字事業の収束には、これだけ多くの費用がかかることを示したともいえる。

事業売却のタイミングは非常に難しいが、この点から見ても、ソニーのPC事業売却のタイミングは遅かったという指摘は的を射ているといえよう。

2015年度には連結営業利益で4,000億円規模を目指す

では、ソニーの事業構造改革はどう進められるのだろうか。

ソニーでは、2013年度と2014年度で、事業構造の変革などに伴う費用として、3,000億円を計上することを示している。具体的な構造改革の内容については、新たなものは発表されていないが、「大きな費用を使うことになるが、2015年度以降には、年間1,000億円以上のコスト削減効果を見込むことができる。事業売却などの大規模な構造改革は、すべてを今年度中にやってしまうことになる。来年度以降に先送りにするということはない」とする。この発言を受けてアナリストの間では、さらなる事業売却や資産売却に関心が集まっている。

だが、テレビ事業については「テレビ事業を売却するといったことや、収束することは考えていない。また、資本提携などの動きについては否定するものではないが、現時点で、そうしたものを想定したビジネスをしているわけではない」と、平井社長は語る。

一方で、吉田CFOは「まずはコスト構造を最適化し、次にコア事業に集中する。そして、新規事業にチャレンジする。同時並行でやることも大切だが、プライオリティの順番を間違わないようにしなくてはならない」と、吉田氏流の構造改革の考え方を披露してみせる。

ソニーの構造改革の取り組みは、もはや後がない。これは平井社長の残された最後の改革の一手といえるかもしれない。

平井社長は「我々がコアと定めた事業については成長ドライバーになるうる製品が出ており、業績面での改善は大きいものの、赤字事業がこれを打ち消し、全体として収益改善が想定通りに進んでいない。変化が激しく、厳しい競争環境のなかで、我々の環境変化への対応力とスピード力が不足していた。変化への打ち手が遅れたといわざるを得ない」とし、「2014年度は3年計画の最終年にあたるが、次の2015年度からの3カ年を成長フェーズに位置づけ、持続的に収益があげられる企業へ変貌するために、今年度は構造改革をやりきる年と位置づけ、徹底した変革に取り組む」と語る。

また、「度重なる下方修正や赤字を継続する体質を変え、何年も続けて構造改革をやり続ける体質からの脱却も図る」とも語り、「私の経営責任は構造改革を徹底的にやりきり、来年度以降、成長軌道に持って行くことである」とする。

2015年度には連結営業利益で4,000億円規模を目指す。これが構造改革後の次の成長戦略のターゲットとなる。

「構造改革の先送りはしない。今年度中にやるべきことをやらないと、中長期の戦略は描けない」と語る平井社長の決意は、本当に形になるのだろうか。

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