既報のとおり、Microsoftは4月2日(現地時間)、開発者向けカンファレンス「Build 2014」で「Windows 8.1 Update」を発表した。4月8日(現地時間)からWindows Update経由で配布を始めるが、MSDN/TechNet参加者には当日からアップデートファイルを提供している。

Windows 8.1 Updateは、「Windows 8.1 Update 1」や「Windows 8.1 Spring Update」「Windows 8.1 Feature Pack」などさまざま呼称で事前に報じられてきたが、最終的にアップデート番号を取り除いたシンプルな名称に落ち着いた。

MSDN/TechNet参加者には当日からアップデートファイルを提供

Microsoftは、Windows 8からWindows 8.1へのアップデートプログラムをWindowsストア経由で配布したが、Windows 8.1 Updateではシステムファイルの変更が小規模なのかWindows Updateを選択した。そのWindows 8.1 Update用の更新プログラムでは、6つ(x86版は7つ)の更新プログラムをZIP形式で圧縮し、ユーザーには順番に適用することを求めている。

TechNet経由で入手した64ビット版「Windows 8.1 Update」。6つの更新プログラムを順番にインストールする形式だ

実際に試したところ、2014年3月の定期更新日に配布したKB2919442は適用済みの状態で、2014年4月に更新を行うKB2919355をはじめ、KB2932046/KB2937592/KB2938439/KB2949621の適用を求められた。なお、後者4つに関しては執筆時点でナレッジベースは用意されていない。また、更新プログラムの適用時にコンピューターの再起動を求められるが、筆者が試した限りでは、最後の1つを適用してから再起動しても動作に問題が生じることはなかった。

更新プログラムの1つ「KB2932046」。ナレッジベースは未公開だが、更新プログラム名に「Feature Pack」の文字が残されている

Windows 8.1 Updateのバージョン番号やビルド番号はアップデート適用前と変わらない状態である。なお、Windows 8.1 Updateの詳細に関しては、後日寄稿する「Windows 8.1大百科」で詳しく述べる予定だ。

興味深いのはスタートメニューの復活や、Windowsストアアプリのウィンドウ化が見送られた点だ。キーノートに登壇したMicrosoft Operating Systemグループ担当EVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)のTerry Myerson氏は、現在開発中の次期アップデート版を披露し、そこでスタートメニューの復活やWindowsストアアプリのウィンドウ化を実現するとした。

Windows 8.1 Update適用済みのバージョン情報ダイアログ。大きな変化はない

OS関係の責任者であるTerry Myerson氏

将来改良されるスタートメニューのスクリーンショット

直上の画面は同社公式ブログ「Blogging Windows」から抜粋したものだが、スタートメニューをよくご覧いただきたい。Windows 7でプログラムメニューやコントロールパネルなどへのリンクが並んでいた領域に、タイルが並んでいる。キーノートではアプリケーション一覧からアイコンをドラッグ&ドロップすると、スタート画面の表示領域が広がってタイルを追加するデモンストレーションも行われた。これを便利と呼ぶか否かの判断は先送りするが、今回のWindows 8.1 Updateに同機能は含まれていない。

この改良されたスタートメニューは、今後のWindows 8.1 Update 2 (仮称)もしくはコード名「Threshold (スレッショルド)」で開発が進められているWindows 9 (仮称)で実装する機能と思われる。

OSの再統合を進めているOperating Systemグループ担当CVP(コーポレート・バイスプレジデント)のJoe Belfiore氏は、「Windows Phone Blog」でWindows 8.1とWindows Phone 8.1の統合について述べている。

今回リリースされたWindows 8.1 Updateと、「Windows Phone 8.1」の共通機能として、テーマカラーや無線LANアクセスポイントのパスワード設定などが共有されるそうだ。これはWindows 8.1における「同期の設定」ですでに実現している機能だけに、"Windows Phone 8.1が「同期の設定」に対応した"と見るのがスマートだろう。

主に「Windows Phone 8.1」に関する新機能を紹介していたJoe Belfiore氏

また、Operating Systemグループ担当CVPのDavid Treadwell氏はキーノートで「ユニバーサルWindows Apps」という概念を発表。文字どおりスマートフォンやタブレット、PCといった異なるデバイスで同一のアプリケーションを実行可能にするというものだ。

Windows Phone 8.1以降で実現する「ユニバーサルWindowsアプリ」

異なるデバイスに同一のデザインや操作性を提供可能にするという

そもそも同社のOSはWindows Runtime (WinRT)という新しいプログラミングモデルを実装している。そのため、ARMやx86といった異なる環境でも同一のWindowsストアアプリが動作していた (ハードウェアの差異はWindowsコアが抽象化している)。後はAPIのすりあわせや、ディスプレイサイズといった部分の整合性を取れば、プラットホームの共通化は難しいものではない。

以前から同社がOSを再統合すると各所で報じられてきたが、今回のユニバーサルWindowsアプリやWindows Phone 8.1の設定共有などは、その一環なのだろう。なお、将来的にはXbox Oneも同じプラットホームに含まれるという。

OS以外を主軸製品として捉えるようになったMicrosoftの戦略は、いまだ全体像を見せていない。Build 2014におけるOS関連の発表は、Windows Blueで目指したOS再統合の第一歩なのである。今後OSとしてのWindows RTやMicrosoft Azure (旧Windows Azure)の台頭で影響力が低下しつつあるWindows Serverの今後が興味深い。

阿久津良和(Cactus)