こうして蓄積した電波の特性を踏まえたシミュレーターも開発しており、実際の電波の動きとシミュレーションが一致してきたことで、3.5GHz帯のネットワーク設計が実際にできる段階になっているという。

「電波の見える化」によって、3.5GHz帯の電波特性を計測している

測定には、この機材から3.5GHz帯の電波を送出し、その状況を記録し、見える化した

シミュレーションの結果と、実際の電波のデータが同様の傾向を示した

公開された実験では、3.5GHz帯の直進性を示すために、電波の死角となる曲がり角の曲がる直前と曲がった直後の電波状況を紹介。移動距離はわずかだが、曲がった途端に3.5GHz帯を受信した

この見える化では、さらに「Massive MIMO」の効果も検証されている。MIMOはアンテナを増やして通信速度を向上させる技術だが、Massive MIMOでは、アンテナ数を数十~100以上という数まで増やすための技術。電波が建物などに反射して端末に達する経路も考慮する必要があり、見える化によって電波がどのように伝播するかが分かる。

複数の端末が1つの基地局から電波を同時に受信する場合、近くにいる端末が利用している電波が干渉してしまい、速度が低下することがある。声を解消するために、端末から基地局に対して干渉情報を送信し、干渉を考慮して電波を送信する、という「Advanced MIMO」技術も開発されている。これにより、スループットが50%以上向上できる、という。

Massive MIMOでさらなるピーク速度の向上を図る

Advanced MIMOでは、スループットが向上できる

もう1つが、小セルを重ねることで頻繁なハンドオーバーが発生し、通信に問題が起きる場合の対策だ。通常、携帯端末と基地局は、制御信号とユーザーデータのやりとりの2種類の通信を1対1で行っている。端末が移動して基地局が切り替わると、その都度切り替えを行うハンドオーバーが発生する。

ベースとなる800MHz帯の基地局(マクロセル)の中に複数の3.5GHz帯の小セルが混在している環境では、少しの移動でもハンドオーバーが連続して発生することになる。本来はハンドオーバーで継続する通信だが、ハンドオーバーの際には一瞬切断する。これが連続することで、通信が不安定になる、というのが問題だった。