ポジティブな話でみていくと、Y!mobileは無限の可能性を秘めている。世界各国の携帯事業者をいろいろ見てきたが、コンテンツやオンラインサービスを所持する事業者(SP)が、自ら携帯電話事業(MNO)に乗り出してきた例は、おそらく今回のY!mobileが世界初だ。

フランスではメディア企業Vivendiが傘下にSFRという携帯キャリアを抱えているが、それとは枠組みが異なる。こうした話をしたら、同業者の1人に「ドコモやKDDIだってサービス事業者で携帯キャリアだ。区分けそのものが意味ない」と即座に反論された。

だが、インフラ事業者が携帯ネットワークを構築し、そこにサービスを展開していくスタイルとは異なり、すでに強力なサービスを持った事業者がさらなる窓口を求めて携帯キャリアの世界に足を踏み入れるわけで、そもそもスタンスが異なる。宮坂氏は「まだ料金体系含めててサービス提供スタイルなども決まっていない」とコメントしており、実際本当に決まっていないと思われるが、次の一手しだいでは非常に面白い試みになると筆者は考えている。

過去には、米国でWalt Disneyという世界最強のコンテンツを抱えた巨大なメディア企業が、「Disney Mobile」の名称でMVNOによる携帯キャリア事業参入を実現したことがある。ここでMVNOの回線を借りていた相手は、現在ソフトバンク傘下の米Sprintだ。後にDisney Mobileは日本にも進出するものの、その直後に本国での事業は不振もありビジネスを終了している。MVNOを使ったコンテンツやサービス事業者(SP)の進出は比較的以前から存在しているが、成功例はほぼないに等しいと考えている。

Y!mobileロゴとヤフー宮坂社長。同社の次の一手に注目したい

その意味で、あえてMVNOではなくよりリスクの高いMNOを選択し、事業の自由度を重視したうえでY!mobileを立ち上げたヤフーのチャレンジ精神は非常に興味深い。捨て身の行動は本気度の表れであり、個人的にも2~3年後の展開を非常に楽しみにしている。