iPhone 5cの位置づけ
「なぜiPhone 5の低価格版が登場しなかったのか?」という疑問にはいくつかの推測があるが、おそらくはiPhone 5のケースは金属削り出しなど製造コストが全体に高めで、これが発売から1年を経過した現在でもコスト低減につながっておらず、利益率を高めるためにiPhone 5cでポリカーボネートの筐体が採用され、従来のiPhone 5のポジションに収まったというものだ。
実際、モデムチップ以外の部品のほとんどはiPhone 5の流用で、スペック的に異なるのは対応するLTEネットワーク周波数が拡大したのと、大容量ストレージ版が存在しない点くらいだ。
一方で発表の際にも「iPhone 5cはコスト削減を狙った廉価版」というイメージがつかないようにすることにAppleは腐心しており、マーケティングでもカラーバリエーションや着せ替えなどのファッション性を前面に出すようにしている。
Appleの販売戦略は成功したのか
では、こうした試みが実際に成功したのかといえば、非常に難しいところだ。例えば、1月末に出たWall Street Journalの記事では、この点について「Apple幹部らがiPhone 5sの需要のほうが強いと説明していること」「iPhone 5cについての言及を避けていること」の2つを挙げている。
また、3月中旬になり台湾Digitimesが出した報道によれば、同時点で300万台以上のiPhone 5cの在庫が存在しており、そのうち200万台が製造を担当したPegatronの倉庫に、残り100万台が販売店または携帯キャリアの倉庫内に存在している可能性が指摘されている。
この点から推測できるのは、当初Appleが考えていたほどにiPhone 5cの需要が少なかったということだ。昨年2013年11月時点でAppleがiPhone 5cの発注量を減らし、一部生産ラインがストップしたという話も出ており、既存生産分についてはすでに在庫調整に入っている可能性がある。その状況でiPhone 5cの8GB版が登場したというのは、ある意味で驚きかもしれない。