個人的には、AFモード「エリア選択」時にボタンひと押しでピント部分が拡大できる「フォーカスアシスト」機能が非常に便利だった。このほか、フルタイムAFのように常に動作し、あらかじめある程度ピントを追っておいてくれる「プリAF」や、顔認識AF「顔キレイナビ」などを組み合わせて使用すれば、かなりピント精度を担保できるのではないか。

……と思ったら、なんと、プリAFをオンにするとフォーカスアシストは使用できなくなり、顔キレイナビをオンにするとエリア選択AFが強制キャンセルされることが判明。機構的な問題もあるのだろうし、それ自体は仕方のないことかもしれない。だが、せめて画面にひとことメッセージを出してくれると親切だろう。内部的に排他となっている要素を設定すると、競合設定が(黙って)キャンセルされるため、最初は壊れたのかと不安になった。ちなみに取扱説明書の各機能解説には、これらが排他要素であることが記されている。

AFモード「エリア選択」のポイント設定画面

顔認識情報は再生時にも有効

ボタン一発で顔のピントを確認できる

1,630万画素ローパスフィルターレスの「X-Trans CMOS II」センサーが紡ぎ出す画質は、もはや周知のハイクオリティ。高画質という点では紛れもなくXシリーズの流れを汲むアウトプットながら、標準の画作りはコントラストを強めた「誰もが実感できる高画質」にシフトしているように感じた。高感度では、その方向性がより顕著に現れる。ドラマチックな描写は好みが分かれるかもしれないが、そもそもX-T1はRAW現像やフィルムシミュレーションの奥深さを味わいたい人、そのスキルがある人こそがそそられるカメラ。自分好みの画質設定や現像設定を探り、見つけ出す楽しみがあるともいえる。

最後に動画機能について触れておこう。設計上、ことさら強く動画を意識しているわけではなさそうだが、フルHD、HDともに60p、30pに対応するなど押さえるべきところは押さえている印象。「UHS-II」規格の高速SDメモリーカードに世界で初めて対応したこともプラス要素だろう。なお、動画録画ボタンがとかく背面側に置かれることが多い中、シャッターのすぐ隣に置いたことは大きく評価したい。筆者はこれを大変使いやすく感じた。

ちなみに、AFモードをコンティニュアスにして、フォーカスをエリア選択にすると、動画でフルタイムAFが効くそうだ。動画撮影モードや動画AF設定を持たないこんな仕様も「本機は写真機であるからして」と言外に主張しているようで面白い。マイクのボリューム設定ができるのも評価が高い。

少々辛口になってしまった部分もあるが、それはとりも直さず、X-T1の中に富士フイルムの本気を見たからにほかならない。たとえば「端子カバーを開けた状態で撮影した場合の光漏れ問題」に対する素早い対応にも、それは表れている。以前には、発売後1年以上を経た製品に対してもファームアップを適用して機能改善を図った実績もある。こういったサポートは今後も引き継がれるだろうし、その真摯な姿勢は購買意欲と決して無関係ではないだろう。

ダンス発表会のリハーサル風景。照明も入っていないので見た目以上に暗い 1/26秒 f4.5 ISO1000 54mm相当(原寸大画像を見る)

この照度、画角でもキャストの顔がはっきりとわかる! 1/29秒 f3.6 ISO800 27mm相当(原寸大画像を見る)

1/10秒の手持ち撮影とは思えない精度 1/10秒 f4.5 ISO800 27mm相当(原寸大画像を見る)

1/7秒の手持ち。PCモニターサイズで全体表示なら問題ないレベル 1/7秒 f4.0 ISO800 69mm相当(原寸大画像を見る)

画作りが固いので、車は相性の良い被写体だ 1/129秒 f4.0 ISO200 27mm相当(原寸大画像を見る)

可倒式モニターのおかげで、ローアングル撮影もしやすい 1/148秒 f4.0 ISO200 56mm相当(原寸大画像を見る)

ヌケの良さが際立つモノクローム 1/10秒 f8.0 ISO800 27mm相当(原寸大画像を見る)

f8にしては中央左奥のビルに描写の流れが目立つような…… 1/272秒 f8.0 ISO400 42mm相当(原寸大画像を見る)

女性を撮るには描写が力強い。好みの設定を探りたいところ 1/48秒 f5.0 ISO800 83mm相当(原寸大画像を見る)

逆にこういう建造物はハマる 1/5秒 f4.5 ISO3200 27mm相当(原寸大画像を見る)

まるでCGのよう 1/2秒 f2.8 ISO3200 27mm相当(原寸大画像を見る)

玉ボケの形に注目 1/65秒 f4.0 ISO200 56mm相当(原寸大画像を見る)

雪の表面。ややマゼンタが被っている 1/65秒 f4.0 ISO200 56mm相当(原寸大画像を見る)

撮影画面に重ねて情報を表示できる

富士フイルムの十八番「フィルムシミュレーション」機能

Wi-Fi機能も搭載。使い始めるとやはり便利だ

パノラマ撮影モードも搭載。コンデジ向きの機能のような気もするが……