漫画「よつばと!」に登場するキャラクター・ダンボーをデザインした大ヒット製品のモバイルバッテリーを生み出した、ティ・アール・エイの「cheero」ブランド。同社は単にキャラクタービジネスでの成功を狙ったわけではなく、実直なまでにものづくりにこだわり、その結晶としてダンボーというキャラクターとバッテリーを融合させていたのだった。
インタビュー前編では、ティ・アール・エイ cheero事業部の東潤氏にダンボーバッテリーの制作秘話を語ってもらったが、ここからの後編では、同社が海外事務所を設置した意図や、ダンボー「以外」のキャラクターコラボ製品に挑戦した際に東氏が痛感した「愛されるモノを作るために必要なこと」をうかがっていく。
――つい先日アメリカに海外拠点を設置されて、ダンボーバッテリーの販売を米Amazonでも開始していますね。今後の海外展開について、方針を教えていただけますか。
USAの事務所は、弊社の製品の販売チャネルとして、ダンボーバッテリーだけではなく、弊社の製品を販売するための海外部門として設置しました。
また、弊社はモバイルバッテリーから出発してはいますが、スマートフォンだけにこだわっているわけではないんです。近年は米国発のクラウドファンディング「Kickstarter」で面白いプロダクトがどんどん出てきているので、そのローカライズなどを行っていければとも思っています。
――確かに、Kickstarterで成立したプロジェクトには興味深いものが多くありますが、海外サイトを通じた出資はまだなじみが少ないですし、成立後に通販できるかどうかも事業者次第なので、国内販売が始まれば注目されそうですね。
ええ、そうですよね。加えて、実機に触れるところもありませんから、たとえ欲しいと思っても、諦めてしまうような状況があります。国内では店舗の流通のコネクションもあるので、どうにかして買いやすい状況を整えていけたら、と。
――ローカライズを行う予定の製品にはどんなものがありますか?
製品について今のところ具体的な内容はお伝えできないのですが、ガジェット周りが中心で、すでに交渉も始めています。
――そのほかに、米国の事務所を通じて仕掛けていきたいことなどはありますか?
「Kickstarter」のローカライズとは逆の流れで、日本の伝統工芸をアメリカで展開していければと考え、京都や福岡で伝統工芸に取り組む会社の方々と準備を進めているところです。長らく受け継がれてきた伝統工芸の規模が縮小している中で、例えば漆のiPhoneケースを作るなどして、今求められている物に伝統工芸を組み合わせ、頑張っている方々が大勢いらっしゃいます。
ただ、小さい規模で良い物を作っている会社は多くあるのですが、海外に出るにはさまざまな壁があるんです。お金や言語はその最たるものですが、コンプライアンスや各種申請の必要なども国によってすべてバラバラで、小さな会社が直接乗り込むのはかなり厳しいのが現状だと認識しています。
もちろん、まずはわれわれの製品を米国はじめ海外でしっかり売る、というのがファーストステップではあります。その過程でできた販路に乗せて、日本と海外、逆に海外と日本をつなぐような、グローバルワイドでの製品展開をもうひとつの事業の柱にしていきたいと思っています。
――ところで、近年はKickstarterのようなクリエイター支援の仕組みの醸成と並行して、個人向け3Dプリンタの発売やそれらを使ったサービスなど、3Dプリンタの話題も非常に多く挙がっています。ものづくりを手がける東さんからは、この3Dプリンタブームはどう見えますか?
ものづくりを行う立場から言いますと、3Dプリンタはモックづくりには非常に向いているマシンだと思います。ただ、3Dデータを作ることができる人は現状かなり少ないため、一般層への普及はまだまだこれからだという感覚でいます。とはいえ、遅かれ早かれ、一般の方に3Dプリンタが寄り添うフェーズは来るのでは感じています。
弊社のサービスとして3Dプリンタを取り込むとすれば、3Dプリンタで製品の一部のパーツを作り替え、ユーザーの個性を反映したものづくりができるような展開もしていけたらと思っています。これはジャストアイディアですが、シンプルなバッテリーに対して差し込みで被せられるようなケースのモデリングデータを公開して、その上に個々人の好きなデザインを施してオリジナルのケースを出力するなど、でしょうか。気軽に楽しめるレベルでの3D×プロダクトといえるような取り組みは行っていけたらと検討しています。