App Storeでの「おすすめ」

だが世間の関心は買収の行方よりも、むしろAppleがTopsy買収で何を実現するのかという点に注目が集まっているようだ。一般に、Appleはソーシャルメディア系の取り組みが弱いといわれており、過去のPingの例にもあるように芽が出る前に自然消滅していったサービスもある。だが今回のTopsyはSNS自体を運営する企業ではなく、その上でユーザーによって展開されるソーシャル活動を分析して顧客企業にサービスとして情報を提供する企業だ。WSJでも指摘しているように、広告関連の価値を高めたり、iTunes/App Store、Siri等に搭載されたお勧め機能をリファインすることがその目的にあると多くの関係者は考えている。

広告やお勧めエンジンにTwitter分析を加えることで、リアルタイムでのトレンドや地域別、クラスタ別の動向が把握可能になり、よりお勧め精度や効果が高くなるというわけだ。現在、Appleが鳴り物入りで始めたiAdは往時の勢いはみられないが、これをより広告効果の高いプラットフォームとして再び活用することが可能になるかもしれない。iAdだけでなく、サービスとして直接競合するPandoraやSpotifyに対し、iTunes Radio向けの広告サービスを展開する際の柱になるという指摘もある。またApple自身のサービスだけでなく、Topsyの解析サービスそのものを広告プラットフォームの一環として提供する方法も考えられるだろう。もっとも、過去の事例から考えるとこうした対外的サービスの可能性は少ないといえるが、もし実現するならば面白い試みだといえる。

広告に加えて注目なのがお勧め機能だ。現在、ダウンロードランキングとサイト編集者によってのみ露出が可能なApp Storeにおいて、別の視点でのアプリの紹介や、ユーザーごとにパーソナライズされた結果を提示することも可能だろう。これはGenius等に依存するiTunes Storeでも同様で、手持ちの楽曲による統計分析だけでなく、友人とのソーシャルストリームや地域別トレンド特性などを交え、より効果的な見せ方が出てくるかもしれない。Siriによるお勧め検索もまた、このリアルタイムでのソーシャルストリームや解析により、よりホットな情報を紹介できるはずだ。

いずれにせよ、この買収が完了してサービスへの統合が進んだ来秋以降のAppleのオンラインサービスでは、さらに各種機能が拡充された状態で登場することになるだろう。