CSIシリーズと見紛う新サイバー犯罪対策センターが完成

クラウド化が進む一方で、以前と変わらないのがセキュリティ対策である。近年のMicrosoftがセキュリティに注力しているのは、本レポートでも何度か触れてきたが、先頃「The Official Microsoft Blog」に掲載された記事によると、セキュリティ対策をさらに押し進めているという。

セキュリティホールを狙って情報取得だけでなく金銭を狙うサイバー犯罪は年々増加し、記事によるとサイバー犯罪に対する費用は5,000億ドルに迫るそうだ。想像の域を超える被害を生み出す原因は、マルウェアに感染してゾンビ化したコンピューターで構成されるネットワーク「Botnet」にあり、何百万台ものコンピューターが感染しているという(図05)。

図05 Microsoftが作成したBotnetのイメージ動画。ネットワーク経由でコンピューターがゾンビ化(感染)している

Microsoftはサイバー犯罪に対応するため「DCU(Digital Crimes Unit)」という部署を用意してきた。法律の専門家や調査員、技術開発者などで構成されたDCUは、2012年に猛威を振るったZeus Botnetの壊滅に尽力したことでも有名だ。そして新たな「サイバー犯罪対策センター」を本社に設立したことを明らかにしたのである(図06)。

図06 新たなサイバー対策センターのWebページ

「Digital Detectives(デジタル探偵)」と名付けられているとおり、Webや電子メールだけでなくSNSやミニブログなど広い対象から、著作権侵害や児童ポルノ、組織的犯罪などを調査し、FBIなど公的機関と協力していくという。同社の画像照合技術である「PhotoDNA」などを利用すれば、児童ポルノ対策などで効果を期待できるだろう。

同社のエグゼクティブバイスプレジデント兼顧問弁護士のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏は「(一見すると施設はテレビドラマのワンシーンのように見えるが)これは現実であり、Microsoftのビジネスインテリジェンスとビッグデータを具現化したものだ」と、人気ドラマのCSIシリーズに絡めた冗談を語っている(図07)。

図07 エグゼクティブバイスプレジデント兼顧問弁護士のBrad Smith氏

今後も加速的に我々の生活に浸透するクラウド化は、さらなるサイバー犯罪の増加を招き、過去に類を見ない被害を生み出すだろう。OSというコンピューターにおける基盤を開発するMicrosoftとしては、OSのセキュリティ向上はもちろん、コンピューターを利用したサイバー犯罪の抑止や掃討といった社会的責任も担っている。新施設によるDCUの活躍を期待したい。

阿久津良和(Cactus