Microsoftの次期CEOの後任が、数名に絞り込まれたとロイターなどが報じている。候補メンバーはNokiaの前CEOであるStephen Elop(スティーブン・エロップ)氏に加え、The Boeing出身で現在Ford MotorのCEOであるAlan Mulally(アラン・ムラーリー)氏などの名前が挙がったそうだ。誰がCEOの席に着くかによって、同社の方向性は大きく変化するだけに、エンドユーザーにも興味深い話だろう。この件に関しては正式発表後に詳しく報告するとして、今週はイメージ戦略を中心に変化するMicrosoftの各施策をレポートする。

正式公開されたWindows 7用IE 11

11月8日1時(米国時間)、Microsoftは自社ブログ「IEBlog」でWindows 7用Internet Explorer 11が完成し、正式公開に至ったことを明らかにした。Internet ExplorerチームのグループプログラムマネージャーであるRob Mauceri(ロブ・モーセリ)氏とSandeep Singhal(サンディープ・シンガル)氏は共同名義で記事を投稿し、「世界各国の95種類におよぶ言語に対応したWindows 7用Internet Explorer 11がダウンロード可能になった。数週間以内にWindows Update経由で自動更新する」と紹介している。

執筆時点では公式サイトからダウンロードすることはできなかったが、既にMicrosoftダウンロードセンターには、x86版x64版に加え、IEAK(管理者キット)言語パック管理者用テンプレートが公開されていた。ただし、IEAK以下はすべて英語版のみである(図01~02)。

図01 64bit版Windows 7用IE 11のインストーラー「IE11-Windows6.1-x64-ja-jp.exe」。約60MBとファイルサイズは小さい

図02 稼働に必要なコンポーネントはインストール時に自動ダウンロードする仕組みだ

両氏は記事内でInternet Explorer 11によるCPU使用率や、バッテリー消費の低減、JavaScript実行の最適化に伴い、Webページのパフォーマンスを約30%高速化したことをアピールした。具体的なロジックや高速化の実例は過去のレポート記事をご覧いただきたいが、Internet Explorer 11はJavaScriptエンジン"Chakra(チャクラ)"を改善し、ECMAScript 5コンストラクトのコンパイルサポートや、不要になったメモリー領域を開放するガベージコレクションの動作改善など、数多くの改良を加えている。

これらの実例を体験したい方は、Internet Explorer 11インストール後にJavaScriptのパフォーマンスを測定するベンチマークページ「EtchMark」や、アニメーション描画の速度を測定する「Popcorn!を実行してほしい(図03~04)。

図03 Internet Explorer 11へアップグレードした状態。バージョンは「11.0.9600.16428」と、Windows 8.1搭載版よりも若干新しい

図04 ペイント速度を測定するベンチマークページ。なお、同環境のMozilla Firefox 25は「28.03」というスコアだった

さらに両氏によると、Internet Explorer 11はECMAScript 6に対応しているという。そもそもECMAScriptとは、IT通信システムの標準化団体Ecma Internationalが策定したスクリプト言語であり、現行のバージョン5.1は2011年6月に標準化されている。そしてバージョン6およびバージョン7は標準化作業中の真っただ中にあるものの、近いうちに標準化されるのは確実だ。そのECMAScript 6に取り込まれる予定のECMAScript Internationalization API 1.0をいち早くサポートし、JavaScript上で通貨書式や日時書式の指定が可能になるというもの。その結果はWorld Data demoにアクセスし、自身の目で体験してほしい(図05)。

図05 「World Data demo」では通貨など異なる単位への変換が瞬時に行える

Windows 8.1プレビューリリース以降、Internet Explorer 11を各場面で使用し、リリース直後とは比べものにならないほど成長したことは肌で感じている。Windows 7を利用中のユーザーであれば、アップグレートを躊躇する理由は何ら存在しないだろう。互換性によるトラブル発生を除けば、Internet Explorer 11はWebブラウジング以外にも、各機能のパーツとして利用されるからである。

筆者も可能であれば普段使用するWebブラウザーを変更してもよいと考えているが、アドオンを用いた利便性の向上を期待するのは難しい。これはInternet Explorer 7から組み込まれたアドオンを厳選して自身の安定性を図るというコンセプトが異なるからだ。

Internet Explorer 8にはWebページ上のコンテンツを切り取る「Webスライス」や、文字列を特定のWebサービスで利用する「アクセラレータ」といった機能を組み込んでいる。開発環境が乏しかったからか、それとも開発者の心をつかむ何かがなかったからなのか理由は不明ながらも、ソフトウェア開発者が参加して盛り上がることはなかった。

もっともユーザーレベルでは、アドオン管理の煩雑さやWebブラウザー本体がバージョンアップする際の足枷となり、アドオン環境が縮小化しつつあるのは事実だ。FlashプレーヤーではなくHTML 5で動画を再生するのも、Webブラウザー本体だけでコンテンツを処理するという原点回帰の流れである。この点を鑑みればInternet Explorer 11は他のWebブラウザーと十分競合できる存在となるだろう。

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