トヨタの全車速型のミリ波レーダーによるクルーズコントロール

そんなわけで、まずは首都高を使って行われたトヨタ自動車(トヨタ)の「高速道路における高度運転支援技術」ならびに本田技研工業(ホンダ)の「安全運転支援システムデモ」、操舵と速度制御に加えて歩行者や他車を検知して停止する自動運転機能を披露していた産業技術総合研究所(産総研)の「自律移動車からの他車の発見と停止デモ」から紹介したい。

トヨタの「高速道路における高度運転支援技術」は、車車間通信を利用する全車速型のミリ波レーダーによるクルーズコントロール「C-ACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)」と、あらかじめレーダーなどを駆使して適正な走行ラインを算出してステアリングと加減速を制御する「Lane Trace Control(LTC)」を組み合わせた、レクサス(トヨタの世界戦略向け高級ブランド)の高級ハイブリッド車「LS600hL」(車両は税込み価格1550万円)による同乗走行デモだ(画像3・動画2)。動画にはLTCによる手放し運転も収録している。

なお、市販車に搭載されている車線逸脱防止支援システムは「Lane Keeping Assist」と呼ばれるもので、こちらはフロントウインドウ中央上部の車内に備えられたカメラを用いて白線を認識してレーンからの逸脱を防いでくれる仕組みだ。

画像3。レクサス LS600hL
動画2。高速道路を使用したデモ。手放し運転も披露された

ちなみに、動画の手放し運転は今回のデモのために正式に許可を得て行われているものである。一部のメディアが「自動運転は危険だ」的な風潮を作り出そうとしているのか、この手放し運転に対して悪いイメージを植え付けようとした記事を掲載したようだが、筆者は断固としてそれに反意を唱えたい。

この技術を潰すことまでは不可能だとしても、そういう足を引っ張ることをしていれば技術革新は停滞し、それは日本の自動車産業にとって間違いなく死活問題となってくる。現在、すでに自動運転技術では欧米が猛烈に開発を進めており、日本よりも先行しているわけで、今後の50年、100年先を考えれば、来るべき自動運転の時代に「日本車の自動運転技術はレベルが低い」となってしまったら、日本の基幹産業である自動車産業はどれだけダメージを受けることだろうか。

ともかく、こうした状況は非常に好ましくないので、もっと日本の自動運転技術を発展させられるよう、応援したいと思う(本当に、なぜ日本の基幹産業の将来に打撃を与えようとしているのか、日本の行政といい一部のマスコミといい、将来の見る目のなさには残念極まりない、というかその浅慮さに軽蔑すら感じるので、個人的な感情の入った文章で申し訳ないのだが、はっきりと書いておきたい)。またこのことに関しては、最後にもう少し詳しく話をさせていただく。

ホンダのナビと連動させた安全運転支援システムデモ

続いては、ホンダの安全運転支援システムデモ。こちらも高速道路と一部一般道を使用した同乗走行デモで、車間制御をアシストする「ACC(Adaptive Cruise Control)」とステアリング制御をアシストする「LKAS(Lane Keep Assist System)」をメインに、ホンダ車に搭載されているカーナビの「インターナビ」のフローティングカーデータを利用した「Traffic Hazard Information」および「安全運転コーチング」が行われた。車種は、「アコード ハイブリッド EX」(税込み価格390万円)である(画像4・動画3)。

ACCとLKASはトヨタとほぼ同じだが、両者のシステムの違いは、ホンダのLKASは手放し運転ができない仕様であること。本来は手放しにしても問題ないようにも設計できるのだが、同社の安全設計に対する考え方として、現時点では手を放すことで応力がステアリングにかからなくなると、それを検知してアラートを鳴らすシステムとなっているというわけだ。なので、動画中ではトヨタの時のように両手放しとはならず、右手だけは軽く添えられている(ただし、かなり手放しに近い握り方をしている)。デモでは、コーナーでもLKASが働くのがわかるはずだ。

また、「Traffic Hazard Information」および「安全運転コーチング」は、インターナビのデータを利用するシステムだ(スマホでも使用可能で、デモはスマホを使用)。前者は、事前に狭い道であるという情報がある道路にさしかかった時や、同じインターナビ装備のホンダ車が以前にハードブレーキを踏んだ箇所(要は、ヒヤリハット的な危険に遭遇した可能性が高い)にさしかかると、「Narrow Lanes」や「Hard Brake」として音声とモニタに文字を表示して教えてくれるというものである。特にHard Brakeは、事故につながりかねないポイントを事前に教えてくれるので注意しやすい感じがした。

安全運転コーチングは、一時停止などをきちんと停止して丁寧な運転を心がけると、その運転をほめてくれるというもので、丁寧な運転に応じて「スマイル」というポイントが貯まる仕組みだ。実際には単に安全運転をほめてくれるものではなく、その走り方がマップ上で記録されログで確認できるほか、自分の運転のカルテも見られる。こちらは、新型フィットにすでに搭載されている機能だ。

画像4。アコード ハイブリッド EX
動画3。高速道路および一般道を使用したデモ

歩行者や他車を検出し、衝突を予防する産総研の取り組み

速度コントロールだけでなく、ステアリングも含めた自動運転系の技術の最後は、産総研を中心に、名古屋大学(名大)と長崎大学との共同研究による「自律移動車からの他車の発見と停止デモ」だ。こちらはトヨタのプリウスをベースにした、ゼットエムピーが販売している「RoboCar」である。そのルーフにレーザーレンジファインダを搭載し、歩行者や他車を検出。なおかつ、それらが動いている場合はその動いている方向も検出し、自分の進路と重なる場合はブレーキをかけて止まるというものだ(画像5・6、動画4)。

ステアリング自体は長方形のデモエリアの四つ角で操舵する形で(左回りで、どの角でもだいたい操舵角は同じ程度)、アクセルはそれほどデモエリアが広いわけではないので低速でほぼ一定という具合だ。ちなみに、本来は外からの撮影のみなのだったのだが、今回は特別に載る許可を得て、内部からも撮影することができた。よって、動画は外の様子(歩行者や他車を認識している様子を含む)と車内の様子の2本立てだ。

画像5(左):産総研・名大・長崎大による自律移動車はプリウスベースのゼットエムピー製RoboCar。画像6(右):レーザーレンジファインダで周囲の歩行者や他車、障害物などを検出する仕組み

動画
動画4。産総研のデモ。外と内の両方からその様子を紹介