冒頭で示したように、今回のVN970/NSは、「進化」と「融合」を開発コンセプトにおいている。

進化という点では、「フォトフレームデザインの進化」、「生活を変えるテレビスタイルの提案」があげられるが、その一方で、「融合」という側面では、AV機能に特化したPCに位置づけられていたVALUSTAR Wと、VALUSTAR Nとの融合を、今回のVN970/NSで実現した点があげられよう。

その最大の要素ともいえるのが、「ハイクリティサウンド」の実現だ。

VN970/NSでは、従来からのFR-PORT方式をさらに強化。フルレンジに加えて、低音ウーハーを搭載した新設計のYAMAHA 2Wayスピーカーを採用し、これまでのVALUESTAR Nシリーズに比べても、よりリアルな音を再現できるようにしたという。

「既存のVALUSTAR Nのターゲットユーザーだけでなく、VALUSTAR Wを購入していたような音にこだわるユーザーに対しても、満足してもらえる音質の実現を目指した」(石井氏)。

新たに磁性流体を採用したスピーカー

開発当初から、高音質の実現のために2Wayスピーカーの搭載は決定していたという。その上で、いかに高音質でありながら、薄型のスピーカーを開発するかが課題となった。そして、NECパーソナルコンピュータとYAMAHAは、共同で新たなスピーカーの開発に着手。そのゴールとして、新たに磁性流体を採用することになった。

磁性流体は、高級オーディオの一部に搭載されている素材で、歪みや振動を抑制するという特徴がある。YAMAHAとともに試行錯誤を繰り返し、素材において、最適なバランスを生み出した。

本体のスピーカーに内蔵している磁性流体。液体状で磁力を持つ

また、実際に筐体のなかにスピーカーを搭載してみると、想定したような音質が再現されない場合もあり、そこでも何度か調整を繰り返したという。

「磁性流体をPC用スピーカーに採用したのは、今回の製品が世界で初めてとなる。小型スピーカーでは、2つのスピーカーが干渉してノイズが発生しやすいという課題があったが、磁性流体を採用することで音の歪みを低減させながら、スピーカユニットの厚みを抑えたデザインを実現している」という。

再生周波数帯域は、100Hz~20kHzとなっており、低音の再現性を高めている。従来のVALUSTAR Nからの音質の進化は大きなものだといっていいだろう。

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