Freescale Semiconductorは10月23日、次世代スマートメータ向けに設計された32ビットARM Cortex-M0+コアベースのマイコン「Kinetis M」シリーズを発表した。

同製品は、高性能のアナログフロントエンド(AFE)、ハードウェアによる改ざん検知、および低消費電力動作の統合により、安全で高精度の単層、二相、および三相電力メータの設計を可能にする。また、0.1%の計測精度と全てのESD条件を満たす複合的な計測ファームウェアを内蔵した、電力メータのハードウェアリファレンスデザインも提供される。

従来のスマートメータの設計は、一般的に2つのチップを搭載し、WELMECやOIMLなどの国際規格に準じて料金請求用ソフトウェアとメインアプリケーションコードを分離して処理していた。「Kinetis M」シリーズは、メモリ保護ユニット、ペリフェラルブリッジ、保護機能が設定されたGPIO、およびDMAコントローラをオンチップに統合することにより、これらのタスクを1チップで処理する。外部からの改ざんに対しては、独立型リアルタイムクロック(iRTC)による自動タイムスタンプ機能を備えた、能動的にも受動的にも動作する改ざん検出ピンで防護する。さらに、乱数発生器を利用すれば、高速かつ簡単に暗号化アルゴリズムを組み込むことが可能となっている。

また、その中枢であるAFEは、メータ以外にも、高精度が要求されるさまざまな産業計測アプリケーションにも応用することができる。AFEの具体的な機能としては、最大4つの独立した24ビットΣΔ型A/Dコンバータ(ADC)による電圧と電流の同時計測や、低ノイズの2つのプログラマブルゲインアンプによる、2000:1の入力ダイナミックレンジ、最大12チャネルの16ビット逐次比較型(SAR) ADCによる、三相アプリケーションでの高精度の電圧計測、全動作温度範囲で低ドリフトを維持する高精度の電圧基準回路、位相変位補償器による正確な電力量計算などを備えている。

CPUは、これらの機能に基づいて0.1%の精度で電力量を計算し、同時にこうしたシステムの最新の規制基準に沿って、94dBのS/N比を達成している。さらに、オンチップのアナログコンパレータは高精度で周波数を検出する。これは、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを利用するメータに不可欠な条件だとしている。

このほか、50MHz動作の32ビットARM Cortex-M0+コア、高速GPIO、32×32MAC、および高いコード密度とエネルギー効率、64/128KBのフラッシュメモリ、16KB SRAMのほか、低消費電力モードとセグメント故障検出機能を備えたセグメントLCDコントローラ(64/100LQFPパッケージのみ)を搭載している。また、数種類の低消費電力モードおよび低消費電力ブートモードを含む高速ウェイクアップのオプションを備える。さらに、24ビットADCクロック専用のPLLにより、低周波数の水晶振動子を利用してジッタを低減し、AFE性能を最大化することができる。

なお、「Kinetis KM34」は、128KBのフラッシュメモリ、4つの24ビットADC、および低消費電力のセグメントLCDコントローラを搭載し、パッケージは64LQFP、100LQFPで提供される。価格は1万個購入時で2.01ドル。5mm角の44LGAパッケージの「KM1x」ファミリは1万個購入時で1.63ドル。「Kinetis KM34」は11月から出荷を開始する予定。44LGAパッケージの「KM1x」ファミリは2014年第1四半期より生産開始の予定。

開発サポートとして、Tower SystemのTWR-KM34Z-50M開発プラットフォーム、Processor Expertオートコードジェネレータが組み込まれたCodeWarrior Development Studio、MQXTM Lite RTOS、および改ざん防止サポートがオプションとして設定される各地域向けの事前認証済みの単相、二相、および三相電力メータのリファレンス・デザインなど、さまざまなツールも用意されているほか、無料で提供される数多くの高性能フィルタおよびFFTベースのメータリングアルゴリズムを利用することで、開発コストを削減して市場への製品投入期間の短縮を図ることも可能になるという。