米Intelの開発者カンファレンスIDF 2013 San Francisco、初日の基調講演でCEOのBrian Krzanich氏が「(Intelは)コンピューティングの全てのセグメントでリードしていく」と宣言した。言葉にすると簡単だが、これは難題である。

■Brian Krzanich氏による基調講演のレポート記事はこちら
IDF 2013 - SoCでモバイル分野に切り込むIntel - Krzanich氏基調講演

モバイル市場だけを見ても、PC、タブレット、スマートフォンと多彩なデバイスが存在し、Windows、Mac OS X、Android、そしてウェブと様々なプラットフォームが混交する。こうした複雑な状況において、Intelがいかにモバイル市場をリードしていくか。それが「モビリティのスピードで革新する」と題された2日目の基調講演のテーマだった。

最初に登壇したのは、モバイル&コミュニケーショングループのHermann Eul氏(コーポレートバイスプレジデント兼GM)。モバイルプラットフォームは、通信、グラフィックス、イメージング、オーディオ、ディスプレイ、セキュリティ、電力管理、I/Oなど様々な要素で成り立つが、中枢にあるのはCPUコアだ。そして、それはIntelの強みである。

22nmのトライゲート・テクノロジで製造されたAtomコア「Silvermont」はコア電力の削減とピーク性能の引き上げを実現しており、ワットあたりの性能で競合製品をリードする。また柔軟にマルチコアを構成することが可能で、幅広いデバイスとターゲット市場に対応できるのが特徴だ。

モバイル&コミュニケーショングループのHermann Eul氏

そのSilvermontを搭載するモバイルプラットフォームが「Bay Trail」である。タブレット用の「Atom Z3000」(Bay Trail-T)、ノートPC用の「Pentium N3000シリーズ」「Celeron N2000シリーズ」(Bay Trail-M)、デスクトップ向け「Pentium J2000シリーズ」「Celeron J1000シリーズ」 (Bay Trail-D)、3つのマルチコアSoCで、タブレット、2 in 1デバイス、ノートPC、オールインワンなどからデスクトップまで幅広くカバーする。しかもAtom Z3000は、Windows 8だけではなく、モバイルで最大ユーザーを持つAndroidにも最適化されている。

■「Bay Trail」のニュース記事はこちら
Intel、"Bay Trail"こと「Atom Z3000」シリーズ発表 - x86タブレットを加速

「Atom Z3000」(Bay Trail-T)を正式発表

基調講演ではASUSのJerry Shen CEOやDellのバイスプレジデント Neil Hand氏が登壇し、Bay Trail-T搭載デバイスを紹介した。このほかにもシャープ、富士通、東芝といったメーカーがBay Trail搭載製品を投入するという。

「T100」という着脱式の2 in 1デバイスを発表するASUSのJerry Shen、CEO。HD解像度のIPSパネルを装備、11時間のバッテリー駆動が可能

Windows 8タブレットを披露するDell バイスプレジデントのNeil Hand氏。同社は「Venue」というブランドで新タブレットを展開する予定で、10月2日にニューヨークで発表会を開催するという

シャープ、富士通、東芝など、Bay Trailを採用するOEMメーカー

2014年になると、Silvermontアーキテクチャを採用したスマートフォン/タブレット向けSoC「Merrifield」が登場する。現行のClover Trail+よりも50%のパフォーマンス向上を見込めるという。同年にはまた、TD-LTEをサポートするXMM 7260を出荷してLTEモデムも強化する。

Eul氏に代わって登壇したPCクライアントグループのKirk Skaugen氏(シニアバイスプレジデント兼GM)は、パーソナルコンピューティングの再定義について語った。

2011年のUltrabookに続いて、翌年にIntelがタッチ操作を推し始めた時には懐疑的な声が多かった。しかしながら、PCメーカーとの協力が実って今日の第4世代Coreプロセッサを搭載したPCの過半数がタッチ機能を搭載している。そして今年Intelが力を注いでいるのが2 in 1デバイスである。コンテンツを消費するのに適したタブレットと、生産性に優れたノートPCの長所を兼ね備えたデバイスだとIntelでは位置付けている。

2 in 1デバイス、ディスプレイサイズは10インチ以上、フルPC(Windows 8)で、タッチ機能を備え、バッテリー駆動時間が長い

2 in 1デバイスの条件を満たしたデバイスは、今年の第1四半期時点では5製品だった。第2四半期に15製品に増え、年末までには60製品に拡大する見通しだ

2 in 1の方法は着脱式や回転式、折りたたみ式など様々だ。PCメーカーのユニークなアイディアが詰まった製品ばかりだが、これらは決してプレミア価格のPCばかりではない。Bay Trailの登場によって最も安い2 in 1デバイスは、いずれ349ドルぐらいになるという。

また2 in 1だけではなく、年末商戦までに低価格ノートPCは199ドルから、タッチ機能付きのノートPCは299ドルから始まるぐらいまで価格が抑えられるという。Ultrabook、ノートPC、オールインワン、デスクトップ、タブレットに2 in 1が加わり、価格帯も広がることで、PCユーザーは豊富な選択を楽しめるようになる。

こうした選択はビジネスユーザーも利用できる。Skaugen氏は第4世代となる「Intel Core vPro」の提供開始を発表した。2 in 1デバイスやUltrabook、タッチ機能搭載のノートPCなど、新しいフォームファクタのデバイスをサポートしながら、生産性やコラボレーションを向上させる機能の追加、堅牢なセキュリティ、運用管理の強化を実現している。

9日に発表したビジネスPC向けSSD「Intel SSD Pro 1500」を見せるSkaugen氏

2014年に14nmプロセスで製造される「Broadwell」が登場すれば、モバイルPCの進化はさらに加速する。消費電力がさらに抑えられ、優れた処理能力やグラフィックス性能を備えながら、ファンレスでバッテリー駆動時間の長いシステムが可能になる。

現行のHaswell Y(左)と、14nm世代のBroadwell Y(右)

Cinebenchを使ってHaswell Y(青)とBroadwell(赤)を比較、同じ性能レベルでBroadwellの消費電力は最大30%少ない

ユーザーが様々なデバイスを利用するようになると、異なるプラットフォームで一貫した利用体験を提供することが開発者の課題になる。最後にSoftware and Services Group担当バイスプレジデントのDoug Fisher氏が、そうした開発者の悩みを解決するツールや取り組みを紹介した。

例えばIntelはHTML5アプリの作成を支援する開発環境「XDK NEWソフトウエアツール」を提供している。XDK NEW、Intelが買収したAeponaやMasheryのAPIサービス、クラウドサービスプラットフォームを用いることで、ビジネスやコンシューマ向けにカスタマイズしたアプリケーションやサービスを開発できる。

Intelは、Intel Developer Zoneを通じて、様々なフォームファクタ、プラットフォーム、OS、そしてHTML5に対応するための開発ツールや情報を提供している。

GoogleでAndroid/Chromeチームを率いるSundar Pichai氏が登場。Haswellを搭載したChormebook (HP、Acer、東芝)とChromebox (ASUS)を発表した