考察とまとめ

ということで、普段よりも大分テストを省略しての比較を行わせていただいたが、概ねIvy Bridge-Eのポジションは明確になったと思う。とにかくコア数が問題になるようなアプリケーションではSandy Bridge-Eの良い代替になるだろうし、Haswellを上回る性能が出る。あるいは4chのメモリコントローラをフルに生かした広帯域、あるいは大容量メモリ空間が欲しいといったニーズにも最適であろう。

逆にいえば、こうした明確なニーズが無い限りHaswellで十分ということだろうか? 3D系も、幾つか確かにHaswellを上回る性能を出したケースもあるが、総じて「大きくは変わらない」という範疇から抜け出すものではなく、$990という価格を正当化できるほどの性能差は今回は見出せなかった。まぁそもそもの価格が価格だけに、一般ユーザーが手を出すような製品ではないから、あまり性能/価格比を論じる必要はないのかもしれないが。

ちょっと残念だったのは、それほど省電力ではなかったこと。勿論絶対的な消費電力はIvy Bridge-Eに比べて減っているが、動作周波数を上げていった時の消費電力の上がり方がSandy Bridge-Eとさして変わらないのは、頭では理解できるとはいえ、ちょっと物足りない感じがする。また既存のSandy Bridge-Eユーザーにとって買い替えするほどの魅力があるか? というのも性能と消費電力の両面で微妙なところ。

これがHaswellが出る「前に」リリースされていたら、すごく魅力があったと思うし、ハイエンド性能を求めるユーザーはみんな飛びついたと思う。そして、「だからといって$990は払えない」というユーザーが、ほぼ変わらない性能がずっと格安で手に入るHaswellに流れるというシナリオは、皆が幸せになれたと思う。

それができなかったのが、Ivy Bridge-Eの可哀想なところかもしれない。「いま、Ivy Bridge-Eが買いか?」と言われると、どうしてもHaswellと比較せざるを得ないし、するとメリットは非常に少ないわけで、どうしても躊躇することになる。このあたりを考えると「やや残念な商品」というのが、筆者の評価である。