果たしてヒューマンビートボクサー気分は味わえるのか!?

「ヒューマンビートボックス」をご存知だろうか。人間の口だけでドラムやベースなどの音を再現するというスゴ技で、うまい人がやるとめちゃくちゃかっこいいのだ。

とはいえ、当然のごとく簡単にできるものではなく、きちんと楽器の音に聞こえるようになるまでには相当な修練が必要だ。筆者も何度か見よう見まねで挑戦してみたことはあるが、まったくもってうまくいかず、自分で聞く自分の声の恥ずかしさに耐えられずに赤面しながらベッドを転がりまくった経験を持っている。

そんな少年期の筆者にトラウマを植えつけたヒューマンビートボックスだが、聞くところによると、BOSSブランドの「LOOP STATION RC-505」を使えば素人でも簡単にできるというではないか。

もしそれが本当なら、ぜひ挑戦してみたい。

今こそ長年の夢を叶えるときがきたのだ。

ということで、BOSSブランドのLOOP STATION 「RC-505」をお借りして、実際に遊んでみることにした。といっても筆者は音楽ド素人で、機材の使い方がさっぱりわからない。そこで今回は音楽ライターの内山さんに同席していただき、レクチャーを受けながら手探りで体験していくことにする。

LOOP STATION RC-505

「LOOP STATION RC-505」は、ライブ・パフォーマンスの定番ルーパーである「LOOP STATION RC」シリーズの最新モデル。RCシリーズでは初となるテーブルトップ型を採用しており、5つのループ・トラックを組み合わせることで無限にパフォーマンスを生み出すことができるという。……という説明を聞いても何のことやらさっぱりなので、とにかくまずは触ってみることにしよう。

未知の物体に遭遇したとき、人は知らず知らずのうちに変なポーズをとる

本体のサイズは一般的な成人男性の肩幅程度と思ったよりも小さく、重量もそれほどではない。別途用意していたスピーカーとマイクを接続すれば準備は完了だ。今回はスピーカーをつないだが、本格的にレコーディングをするならマイクが音を拾わないようにヘッドホンなどを使用するといいだろう。

さて、セッティングが完了したところで、

いよいよヒューマンビートボックスに挑戦だ!!

といっても、かつて挫折した通り筆者はドラムやベースの音を口で表現できるテクニックなどは持ちあわせていない。

じゃあどうするのか!?

ここはこの製品に完全に頼り、マイクに適当に声を吹き込み、RC-505内でエフェクトをかけることでヒューマンビートボックスっぽい音を作り出すのだ。

たくさんのボタンやつまみがあるが、使っているとすぐに操作は覚えられる

それにしてもこの製品には、実に多種多彩で面白いエフェクトが入っている。しかもリアルタイムに声が変わるので、つい色々と試してみたくなる。たとえば「VOCAL DIST」や「ROBOT」は声をひずませたり、機械音のように変えてくれるし、「FLANGER」をかければジェット機の上昇音/下降音のような金属的な響きを持たせることができる。また、ボーカル用だけでなく、ギターをベースサウンドに変化させるエフェクト「GUITAR TO BASS」なども用意されている。これは本来、外部から音源を取り込んで加工するためのものだが、声に使ってみると独特な効果が得られて面白い。

中でも特に気に入ったのは、音を連続的にカットすることで、バッキング・フレーズを刻んでいるような効果を作り出してくれる「SLICER」だ。これを使うと、たとえばマイクに向かって「あーーーーー」と声を伸ばしているだけで、自動的に「あー、あー、あー、あー」のようにリズミカルに声を区切ってくれるのである。この時のリズムの切り方は、あらかじめ設定しておいた曲のテンポに応じて自動的に調整してくれる。リズム感のない筆者にとっては夢のような機能だ。なお、エフェクトの効果のかかり具合はノブを回すことで細かく設定することができる。

片手にマイク、片手でRC-505を操作する

さて、ひと通りエフェクトで遊んだら、いよいよ録音してヒューマンビートボックスに挑戦してみよう。

まずは曲の根幹となるリズムパターンを選ぶ。RC-505には「POPS」や「ROCK」、「Conga&maracas」、「Fusion」などの多彩なリズムパターンが用意されており、これを再生しながら、リズムに合わせて声を録音していくことができる。今回はわりとスタンダードなリズムパターンである「ROCK」を使うことに。本当は「Fusion」あたりを使ってみたかったのだが、あまりにも複雑すぎて筆者のリズム感ではついていけなかったのである。

そんなプチ悲劇を乗り越えて、次は声を録音する。RC-505には録音できるトラックが5つ用意されており、それぞれにボリューム調整のつまみがついている。たとえばトラック1にドラム、トラック2にベースを入れた場合、再生時に両方のボリュームつまみを最大にすればドラムとベースが重なって流れるが、片方をぐっと下げるとドラムだけ、あるいはベースだけを聞くこともできるのだ。

トラックは5つ用意されている。それぞれのトラックに複数の音を重ね録りも可能

おそるおそるマイクを握りしめて録音スタート

また、各トラックには何度でも音を重ねて録音できるので、ドラムを録音したのと同じトラックにさらにベース音を重ね録りするなどし、複数の音を1トラックにまとめることもできる。これを活用すれば、かなりの数の音を重ねることが可能になるというわけだ。

さっそくアドバイスを受けながら、マイクに声を吹き込んでいく。まずはバスドラム。文字に起こすと、「ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ」という感じだろうか。今回の仕事の前にこっそり自宅で練習したときは、バスドラムというよりも足の小指を机の脚にぶつけたときに漏れるうめき声みたいな音にしかならず絶望していたのだが、RC-505の「GUITAR TO BASS」をかけてみると……あら不思議! ちゃんとドラムっぽく聞こえるではないか! これはすごい。

だんだん楽しくなってきた

よーし、この調子でどんどん音を重ねてみよう。バスドラムの次はシンバルだ。マイクに息を思い切り吹き込み、それを加工するとそれらしく聞こえるのだとか。「いくらなんでも息の音がシンバルになるのか?」と半信半疑のままやってみると……。

驚いた! 自分の声がちゃんとシンバルっぽい音になっているではないか!

使ったエフェクトは「TAPE ECHO」というもので、これがうまい具合に無機質な感じを演出してくれるのだ。もっとうまい人ならさらにシンバルに近い音になるのかもしれないけど、初めての筆者ですらこれだけ音が変わるのはちょっとした感動である。

さらにトラック3には、「チキチキチキチキ」という音を入力して、エフェクトの「FILTER」をチョイス。さらにノブをいじることでかかり具合にバラつきを持たせ、不思議な雰囲気を作り出してみた。

意味もなくDJを意識したポーズをとる

ベースとなる部分が完成し、だいぶそれらしくなってきた。次はメロディーっぽいものを録音しよう。普通に歌ってエフェクトをかけても面白いのだが、今回は単に「あー」という音を音程を変えながら発声し、前述の「SLICER」効果をかけてみた。すると、これがまたうまい具合に「ROCK」のリズムに合わせてカットされ、まるでそういう楽器があるかのようなナチュラルさでぴたりとハマったのだ。アドバイスをもらいながらとはいえ、音楽素人で機材自体を初めて触った筆者に、ここまで手軽に音を作れるとは思わなかった。

これ、ライブはもちろん、パーティーの余興などで使ってもかなり面白いんじゃないだろうか。

エフェクトやリズムパターンを選びながら、どう仕上げるかを考えるのが楽しい

一応ここまでのところでヒューマンビートボックスは形になり、個人的には大いに満足したのだけど、実はまだトラックがひとつだけ余っている。せっかくなら最後に何か入れたいところだけど……。

ということで頭をひねった結果、「マイナビニュース」という決め台詞を入れることにした。「マイナビ」の部分は「LO-FI」効果で低音のロボットボイスに、「ニュース」は「TRANSPOSE」で音程をがつんと上げてギャップ効果を狙う。イメージはテレビCMで企業ロゴが表示されるときに流れるアレだ。どんな感じに仕上がったのかについては、動画で撮影したのでそちらをご覧いただきたい。

「LOOP STATION RC-505」は素人でも簡単に操作できて、手軽にヒューマンビートボクサー気分を味わえる優れモノだった。今回の体験取材のように友だちとワイワイ遊ぶもよし、パーティーや飲み会、カラオケの余興に使うもよし、もちろん本格的な音楽制作に使うもよし。いろいろな楽しみ方がありそうだ。