富士フイルムは7月4日、成人以降に突発的に発生する「大人ニキビ」の発生メカニズムの解明に向け、独自の画像解析技術を用いた肌の解析調査を行った結果、従来、大人ニキビの発生に影響すると考えられてきた肌の油分量ではなく、顔全体の中で肌の水分量が部分的に減少する「部分乾燥状態」によるところが大きいことを確認したと発表した。

従来、ニキビは「皮脂が過剰に分泌され、毛穴付近に皮脂が詰まって炎症が引き起される」ということ要因として考えられてきており、思春期に発生するニキビは、男性ホルモンの活性化による過剰な皮脂分泌が要因とされているほか、皮脂分泌量が減少する成人後において発生する大人ニキビは、生理周期やストレスなどでホルモンバランスが乱れることによる皮脂分泌量の変化や、肌の乾燥を補うために皮脂分泌が盛んになることが要因とされてきたが、実際にそのメカニズムは十分に解明されたとは言えていなかった。

そこで今回研究グループは、そうした成人後に発生する大人ニキビのメカニズムを解明するために3つの実験を実施したという。

1つ目の実験は「ニキビ発生箇所の可視化」として、さまざまな色や形状をしている肌に存在するシミ、シワ、毛穴、ニキビに対して独自の画像解析技術を活用して、その色や形状、発生箇所の特徴を抽出。実際に20~30代女性25名の顔画像から、赤く炎症状態となっているニキビを抽出し、ニキビの多い人(15カ所以上)、ニキビの少ない人、ニキビのない人という3つのカデコリに分け、それぞれの発生箇所を1つの顔画像に重ね合わせ、顔全体の中でニキビが発生しやすい部位の可視化を行ったところ、発生箇所が顔面の下部に集中し、中でも顔の輪郭であるフェイスラインでの発生頻度が高いことが確認されたほか、ニキビ発生が少ない人では、顎部で局所的に発生しやすいことが判明したという。

顔全体の中のニキビ発生箇所(画像中の色が青から赤に近づくほど、ニキビ発生数が多い事を示している)

2つ目の実験は「水分・油分量とニキビ発生箇所との関係」で、20代~30代女性12名を対象に、洗顔後、室温23℃、湿度50%の環境で肌を安定させてから、顔の水分量、油分量を多点測定し(フェイスライン上5カ所、フェイスライン以外9カ所のポイント)、水分量、油分量とニキビ発生箇所との関係を解析した。その結果、ニキビの多い人は、顔全体の中でフェイスラインを中心に、水分量の少ない"部分乾燥状態"になっていること、ならびにニキビの少ない人は、額や顎の一部分が局所的な乾燥状態になっていることが確認されたほか、ニキビがない人は、顔全体の水分量に大きなばらつきがなく、乾燥している箇所が見当たらないことが確認されたという。また、ニキビの有無に関わらず、顔全体の油分量には大きな差がないことも確認された。

顔全体の水分量、油分量図の概要

この結果、フェイスラインとフェイスライン以外の部分での水分量の比とニキビの量の相関関係から、フェイスラインとフェイスライン以外の部分との水分量の差が大きいほど、ニキビの数が多くなるという傾向があることが判明。一方、油分量の比とニキビとの相関関係は見られなかったという。

フェイスラインとフェイスライン以外の水分量、油分量とニキビ発生個数の関係

そして3つ目の実験は「水分・油分量と生理周期の関係」についてで、20代~30代女性18名を対象に、洗顔後、室温23℃、湿度50%の環境で肌を安定させてから、生理前後の顔の水分量と油分量を多点測定し、顔の水分量と油分量と生理周期の関係を解析した。この結果、生理前にニキビが多くできる人は、顔の"部分乾燥状態"が生理前に顕著になり、生理前にニキビがほとんどできない人は生理前後の水分量変化が少ないといことが判明。また、従来、生理周期によるホルモンバランスから皮脂分泌量に変化が生じることで、生理前にはニキビが発生しやすくなると言われてきたが、今回の実験からは生理前と生理後を比較しても肌の油分量が増加するといった変化が見られなかったという。

生理前にニキビが多くできる人、生理前にニキビがほとんどできない人それぞれの、生理前後での水分量、油分量の分布の代表例

これらの結果は、大人ニキビの主な要因とこれまでされていた肌の油分量よりも、顔全体の中で、肌の水分量が部分的に減少する"部分乾燥状態"が大きな発生要因であることを示すものであり、研究グループでは今後、新たなニキビケア用化粧品の開発に応用していく方針としている。