岡山大学は7月2日、適度なメカニカルストレスが、さまざまな転写因子の働きを活性化させ、それにより軟骨様細胞における細胞外基質産生を亢進させることを確認したと発表した。

同成果は、同大病院整形外科の古松毅之助教らによるもので、詳細は国際英文科学雑誌「Journal of Biomechanics」に掲載された。

ヒトが歩く際には、体重の3倍の重さが膝にかかっており、膝への負担から「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」となり、ねたきりや要介護といった状況になる人も多い。

研究グループが行った今回の研究では、「適度な運動ストレスが軟骨を元気にしてくれる」という可能性が示されたという。

具体的には、II型コラーゲンは関節軟骨の主要成分で、細胞核内の転写因子「SOX9」や細胞内シグナル「Smad3」、成長因子である「CCN2」や「TGF-β」などの働きにより産生されるが、1秒間に1歩のリズムで歩くストレスを身体に与えることで、SOX9が細胞核内部で、CCN2やTGF-βなどが細胞外で活発化し、II型コラーゲンの産生が活発化することが判明したとしている。

なお、研究グループでは、1秒間に1歩の膝に無理をかけず、ゆっくりと歩くことを楽しむ習慣をつけることで、細胞に適度な運動ストレスが伝わるようになり、放っておいてもII型コラーゲンを作り出してくれるようになるため、サプリメントなどに頼らずに、ロコモと決別できる可能性が示されたとコメントしている。

II型コラーゲンを作り出すためのさまざまな因子の活動イメージ。1秒間に1歩のリズムによる細胞への適度なストレスを与えることで、Smad3が活性化され、TGF-βが分泌され、II型コラーゲンを作り出すための下地が整い、それを元にSmad3とともに働くSOX9がII型コラーゲン遺伝子の発現を活性化しはじめる