パナソニックは11日、同社ノートPC「レッツノート」「タフブック」の生産拠点である神戸工場(兵庫県神戸市)において、レッツノートの新製品「AX3シリーズ」およびノートPCの事業戦略に関するプレス向け説明会を開催した。また同工場内にあるショールームではリニューアルが完了、同時にオープニングセレモニーも行われた。

パナソニックの神戸工場。部品の実装から組み立てまで一貫生産を行う

神戸工場内にオープンしたショールーム。製品やソリューションなどが展示

神戸工場は、1990年にワープロ工場として竣工、翌91年からはPCの生産が開始されており、20年以上に渡って同社のPCを作り続けてきた。海外での生産や、組み立てのみ国内で行うメーカーが多い中、基板上への部品の実装から、製品の組み立て、顧客ごとのカスタマイズやサポートまで一貫して行っており、同社の「メイド・イン・ジャパン」の象徴とも言える工場である。

ノートPCの事業戦略について説明したのは、同社AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部長の原田秀昭氏。

パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部の原田秀昭事業部長

また神戸工場の清水実工場長は、生産体制やサービス内容について説明した

ある調査によれば、レッツノートはノートPCの国内市場において9年連続でシェアNo1であり、しかも割合は拡大傾向にある。これを支えているのは、比較的堅調な法人向け需要だ。同社はR1シリーズ以降、個人向けから法人向けへのシフトを進めてきたが、今年度は75%が法人向け販売となる見込み。原田事業部長は「今後も店頭販売の比率が増えることはないだろう」とみる。

ノートPCの国内シェア(IDC調べ)。レッツノートはV9を達成したという

圧倒的な割合を占めるのが法人向け販売。残りは店頭が20%、通販が5%

レッツノートは全体的に高めの価格設定だが、「市場全体で低価格化が進んでいるのは揺るぎない事実。しかし顧客と話してみると、ビジネス向けPCは価格よりも生産性の向上を重視するという声が大きい。価格帯は高めでも、それを3~4年使ったときのROIで役に立てる」(同)と自信をみせる。「99,800円で行こう」というような価格ありきの考え方は「一切していない」(同)と、低価格路線とは一線を画す。

法人需要を獲得するために、重視しているのは顧客とのパートナーシップだ。顧客が欲しがるような魅力的な製品を開発することはもちろんだが、企業には1社ごとに違ったニーズがあり、大量生産では十分に対応しきれない。顧客からの要望に応じた柔軟なカスタマイズ、きめ細かなサービス、迅速な対応が求められており、そこは同社がこだわる国内生産の強みを活かせるところでもある。

実際に、これらのサービスは、顧客からの要望で生まれたという

国内生産であることが同社の強み。そこを活かして満足度を向上させる

今回、ショールームをリニューアルしたのには、顧客との対話をさらに強化したいという狙いがある。様々な企業ユーザーに来てもらい、要望を聞き、それを新製品や新サービスの開発に反映させる。神戸工場を「これまでの『見るだけの工場』から『体験・体感する工場』へ転換する」(清水実工場長)ことで、来場者数を前年比2倍の年間3,000人にすることが目標だ。

入って左半分のスペースには、マイルストーンとなった歴代PCなどを展示

これが最初のレッツノート「AL-N1」。CPUは120MHz駆動のPentiumだった

現行ラインナップの展示。レッツノート、タフブック、タフパッドが並ぶ

HDD遠隔消去サービスなど、各種ソリューションも展示している

右半分のスペースには、業種別の商品展示や、要素技術の展示などがある

これはカスタム製品の例。航空業界モデルや、防爆モデルなどもあった

こちらは要素技術の展示。レッツノートいえばこのボンネット構造だ

業種別の展示。様々な業種で様々な機種が利用されているという

「まだまだ顧客の声を聞く必要がある。同じようなことをやっていたら、日本のPCメーカーは生き残れない」と原田事業部長は危機感を隠さない。「我々が目指すのは、マス生産ではなく、顧客からの要望にもとづいた一品一様のカスタマイズ」と述べ、2012年度に3割程度だったコンフィグレーションサービス(カスタマイズ)の利用率を、2015年度には出荷全体の7割程度まで増やす意向を示した。

また説明会には、ゲストとして日本マイクロソフト社長の樋口泰行氏、インテル取締役副社長の宗像義恵氏も招かれ、それぞれスピーチを行った。

日本マイクロソフトの樋口社長

インテルの宗像義恵取締役副社長

日本マイクロソフトの樋口社長は、急成長を見せるタブレットについて言及した。現在、PCはiOS/Androidのタブレットに押され気味だが、それは「新しく登場してきたタブレットというものにみんなが飛びついたフェーズ1の現象」だという。しかし、セキュリティやソフトウェア互換性の問題もあり、特に企業向けでは、本格的な普及には至らないというのが樋口社長の見方だ。

「これまでのWindowsの流れを断ち切る形でタブレットが出てきたが、これからは、その流れをくんだタブレットが必要だとユーザーも気づき始めている。Windows 8ベースのタブレット/PCによって、本格的なフェーズ2が来るだろう」と予測。「私はAX2を使っているが、抜群のマシン。パナソニックとはこれからもパートナーシップを強固にして、メイド・イン・ジャパンを盛り上げて行きたい」とエールを送った。

一方、インテルの宗像取締役副社長は、AX3にも採用されている第4世代Coreプロセッサを「過去10年の中で最大の技術革新を起こしたCPU」と紹介。パフォーマンスや省電力性が向上したことで、PCとタブレットを一体化したような、薄くて革新的なPCを実現可能にしており、「この第4世代CPUを搭載したAX3は、ユーザーに高度な処理能力の体験と新しいコンピュータの可能性をお届けできる」と自信を見せた。

インテルとパナソニックの共通項は「技術革新」であると宗像取締役副社長は強調。「これまでパナソニックは革新性の高さでビジネスモバイルをリードしてきた。これに第4世代CPUの最新技術が融合されることで、妥協のない最適なビジネスモバイルが実現されると確信している。インテルはこれからも協力関係を続け、メイド・イン・ジャパンのイノベーションを支援していく」とアピールした。

ショールームのオープニングセレモニー。4氏によるテープカットが行われた

続いてはAX3の組み立て作業を披露。スタッフが手際よく組み立てていた

最後のネジだけは、樋口氏と宗像氏がそれぞれ締めて完成

組み上がったばかりのAX3の上にアクリル板を敷いて、乗ってみる試験も

そして電源ボタンを押すと…両氏のPCともちゃんと起動した

オープニングセレモニーの最後には、景気づけの三三七拍子も行われた

同日、プレス向けの工場見学も行われたのだが、残念ながらほとんどが撮影不可。唯一許可されたのがこちらの環境試験で、タフブックが激しく放水を浴びていた