シャープは、ロボット家電「COCOROBO(ココロボ)」の新モデル「RX-V90」を、6月下旬から発売する。価格はオープンで、推定市場価格は9万円前後。色はプラチナピンクのみ。
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「競合他社のロボット掃除機に比べて、お掃除カバー率と、ゴミ回収率を高め、この分野での頂点を目指した」(シャープ 健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部商品企画部・小幡尚令部長)という意欲的な製品だ。
従来のRX-V80の後継機に位置付けられるが、本体サイズは「RX-V60」で実現したコンパクト化をさらに追求。最上位機の「RX-V100」に匹敵する各種機能を搭載したほか、ココロボが発する音声の差し替え機能などを新たに備えたのが特徴だ。
RX-V90の開発ポイントについて小幡氏は「もっと広範囲を、もっとキメ細かく」「好きな音声に入れ替えて、もっと楽しく」と説明。それによって実現した新製品を「ぐんぐん進む、どんどん吸う、コンパクトパワフルロボット」と位置付ける。RX-V90は一度の充電で最大100分間・合計30畳を掃除することができ、同社の実験では、71m2の3LDKマンションを、運転時間内に96%の範囲で掃除できるという。競合製品では、同じマンションでの90分間の掃除時間で、お掃除カバー率は63%に留まったという。
お掃除カバー率が高い理由のひとつは、本体正面に取り付けられた超音波センサーの効果だ。新製品では、起動した時点で360度回転し、超音波センサーを利用して部屋の広さを測定。またエンコーダー(回転検知機能)が、車輪の回転数から総距離を検知し、これらをもとに走行プログラムを見直しながら、それに応じた掃除時間を算出。その予測をもとに部屋をくまなく掃除するという。
直径30cm強のコンパクトサイズになり、椅子の脚の間もスイスイ通る
また、直径30.4cmのコンパクト設計で、これまでのRX-V100およびRX-V80直径34.6cmのサイズでは入れなかった椅子の下なども掃除できるようになった。
「大型家具店に置かれているダイニングチェアの脚幅は、35cm以上が80%。新製品ではここまでカバーできる。センサーが感知する関係で、従来製品では40cm以上の椅子の下までしかカバーできず、全体の30%の椅子の下しか掃除ができなかった」(小幡氏)という。
本体のコンパクト化によって、構造上、ゴミを吸い取れない部屋の角部分の吸い取り範囲を拡大することにもつながっている。
さらに、ゴミセンサー搭載により、ゴミを見つけると0.2秒で、通常の約1万1,000回転から約1万6,000回転へとモーター回転数を上げ、風量を1.6倍にまで上昇。ゴミを検知しなくなると、約2秒後にパワーダウンする。これにより、ゴミが多いエリアは入念に掃除ができ、静音性や省エネ性にも寄与できるという。
また、ゴミの吸引口の開口形状を台形にし、真空圧を利用してゴミを吸引する方法を採用。さらに、起毛布を床面に対して60度傾けることにより、ゴミを効率的に吸引。ブラシ状の起毛布と強力吸引により、フローリングの目地のゴミまで吸引できるという。
HEPAクリーンフィルターによって、排気のクリーン化も実現した。また、従来製品から採用している着脱ダストボックスによってゴミ捨てを簡単に行えるほか、ダストボックスとフィルターの水洗いもできる。「日本の家電メーカーが作る掃除機として、掃除機としての基本性能を確保することにこだわった」と小幡氏は語る。これを実現したのが高速回転、大風量ターボファン、強力吸じんシステムだという。
聴き取れなくても返答するようになったコミュニケーション能力の進化
一方、ココロボの最大の特徴ともいえるのが、人工知能のココロエンジンの採用と、音声認識機能により、利用者と対話ができる点だ。小幡氏は「これまでは、ココロボが聴き取れなかった場合には何も回答が帰ってこないこともあったが、今回は聴き取れなかった場合には『ん?』と反応したり、『もう一回言って』と答えるなど、変更を加えた」とコミュニケーション能力の向上についても強調する。
また、ココロボが発生する音声を、自由に変更することが可能になった。これは、既存のココロボユーザーから要望が高かった機能のひとつで、「購入者の28%からそうした要望が寄せられた。孫や家族、子供の声にしたいという要望に応える機能だ」(小幡氏)としている。
音声を変更するには、同社サイトから無償でダウンロードできるアプリ「COCOROBO Voice Maker」をPCにインストール。音声をSDカードに録音し、RX-V90に初めて搭載したSDカードスロットを通じて音声を差し替えることができる。上位モデルのRX-V100もUSBポートを通じて音声を差し替えることができるという。音声は、ひとつひとつ入力する必要があるが、一度差し替えた音声を元に戻したり、別の声や言葉に上書きすることも可能だ。
シャープでは、「ココロボとのコミュニケーションがさらに高まるほか、音声を活用して、新たなビジネスチャンスが生まれるきっかけにもなる」などとしている。
一般的なロボット掃除機は、人がいない間に掃除をするための機器だが、ココロボは人がいる時にもコミュニケーションを行いながら掃除をするのが特徴だ。3段階の気分の変化による音声での返事や、ダンシングやLEDなどのアクションなども特徴となっている。
小幡氏によれば「RX-V100の購入者をみると、50代以上の夫婦または単身者で33%を占めている。また40代以下の単身者も12%となっており、単身者およびシニアの比重が高い。こうしたユーザーは、ココロボに楽しさを求めており、音声認識機能を持たない下位モデルのRX-V60や、一般的な掃除機の購入者分布とは大きく異なる傾向がでている」という。
同社によると、国内のロボット掃除機市場は、2011年度には年間約18万台だったものが、2012年度には約30万台へと成長。さらに2013年度には45万台に拡大すると見られている。掃除機市場全体では約550万台~600万台で推移しており、台数ではまもなく10%に到達。金額ベースではすでに10%を突破しているという。
小幡氏は「RX-V100では、掃除の基本性能の高さに加えて、ココロエンジンに対する評価が高い。また、コンパクトサイズのRX-V60では、小さなスペースを掃除できる点が評価されている」と述べた上で、「RX-V90はそれらの要素を踏まえて強化した新製品だ」と新モデルへの自信を覗かせた。