米カリフォルニア州サンフランシスコ市内において5月15日から17日(現地時間)まで開催されたGoogleの開発者会議「Google I/O 2013」。多くの一般ユーザーは新型NexusやAndroid新バージョンを期待していたかもしれないが、今回のGoogle I/Oではこれらに関する話題にはいっさい触れず、 Music All Accessや新Google Mapsなど一部サービスが新たに発表されるに留まっている。期待外れという意見もある今年のイベントだが、今回見送られたこれらアップデートについて最新情報を追いかけてみる。

なぜ「Android新バージョン」「新Nexus」の発表がなかった?

Google I/Oの最初のイベントは2008年5月にスタートしたが、当時は最初のAndroidバージョンがリリースされてまだ半年ほどしか経っておらず、その前身であるGoogle Developer Dayというイベントでの主役がGoogle Web ToolkitやApp Engineであったことを考えれば、むしろこれまでのAndroidプッシュがGoogleとしては異端だったといえるかもしれない。特に今年はAndroid開発を統括していたAndy Rubin氏が退任し、ChromeチームのSundar Pichai氏がAndroid開発を包含するようになり、GoogleとしてはAndroidに頼り切りだったモバイル戦略を「本流へと戻す」タイミングになりつつある。AndroidとChromeの統合を目指しているという噂の絶えない昨今だが、今年のGoogle I/Oはその分水嶺を見極める重要な機会といえるかもしれない。

興味深いのは、今年のGoogle I/OはAndroidやハードウェアのアップデートよりも、むしろサービスを中心とした発表になることを、Wiredがイベント前に行ったインタビューの中でSundar Pichai氏自らが報告している。そのため、この記事をあらかじめ読んだ読者であればGoogle I/Oにこれらのアップデートを期待してはいなかっただろう。実際、「Android 4.3」「Key Lime Pie」といったキーワードは発表会場では登場せず、新デバイスも期待された第2世代Nexus 7やNexus 4の後継ではなく、素のAndroid OSがそのまま動作して最新アップデートが配信される開発者向け「Galaxy S 4」だった。

このあたりは筆者の予想レベルではあるが、これまでAndroidアプリやOS自体の機能強化偏重だったモバイル戦略を見直し、より広い視点で製品の改良を進めているのが現在のGoogleであり、今回のサービス改良の紹介中心だったGoogle I/Oは、その現れではないかと考えている。AndroidはあくまでGoogleサービスへの導線の1つであり、メインではない。むしろプラットフォームとしてのGoogleを強化していくことが重要だ。新サービスのGoogle Play Games、SpotifyやRdio対抗となるMusic All Access、強化されたメッセージングサービスのGoogle Hangouts、新UIを搭載したGoogle Mapsなどはその構成要素だ。また地味ながら、Appleの「Siri」ライクな自然言語による音声入力インターフェイス、WebGLや高速JSエンジンを中心としたChromeの改良、(法制度の問題で)日本では意味ないもののGmailとGoogle Walletを使っての個人間送金など、Web開発者と個人ユーザー双方にとって便利な機能強化も行われている。

今後の見通しだが、あと数年でAndroid OSがなくなるようなことはないものの、OSそのものの機能強化を中心とした改良は一段落し、より周辺環境を整備していく方向を模索していくのではないかと予測する。しだいに「スマートフォンとタブレット」「PC」という垣根は取り払われ、あくまでスクリーンサイズや利用形態で区分けされる方向へ転換していくのではないかと思う。