Windows RTの制限を確認する

Office 2013 RTだけでは物足りないので、Windows 8を比較対象としたWindows RTの制限も確認しておこう。前編と重なる部分もあるが、こちらも同じように箇条書きとしてまとめてみたので、まずはこちらをご覧いただきたい(図32)。

図32 Windows RTに設けられた各種制限

本稿以外でもWindows RTの特徴として語られるのが「Win32/Win64デスクトップアプリの実行」ができない点である。理由は簡単。Windows 8は対応プラットフォームがx86(Intelが開発した32ビットマイクロプロセッサアーキテクチャ)やx64(x86アーキテクチャを64ビットに拡張したアーキテクチャ)を対象にしているが、Windows RTはARMアーキテクチャ上で動作するOSだからだ。

つまり、サードパーティメーカーがリリースする従来のデスクトップアプリは使用できず、「ウイルス対策ソフトの選択」は執筆時点で不可能。マルウェアを中心としたセキュリティ対策は、Windows RT標準のWindows DefenderやSmartScreenフィルターに頼るしかない(図33~34)。

図33 Windows RTの標準セキュリティ対策ソフトとなる「Windows Defender」

図34 Internet Explorer 10を含めた全体を保護する「SmartScreenフィルター」

その一方で、標準アクセサリと呼ばれるWindows RTの標準デスクトップアプリの数は少ない。図35はWindows RTの「Windowsの機能」だが、Windows 8と比べてみると項目数の少なさが目立ってしまう。

例えばデスクトップ側でメディアファイルを再生するWindows Media Player 12は用意されておらず、Webサーバー機能を提供するIIS(Internet Information Services)8.0も未搭載。もちろんSurface RTをWebサーバーにするメリットは皆無と思われるが、選択肢が用意されていないのは事実である。「リモートデスクトップ接続(サーバー)」機能も備えていないため、他のWindowsマシンからSurface RTに接続することはできない。

ただし、リモートデスクトップ接続クライアントは用意されているので、Windows 8 Proなどサーバー機能を備えたWindows 8マシンへの接続は可能だ(図35)。

図35 「Windowsの機能」で取捨選択できる機能は多くない

Surface RTを社内ネットワークの端末として使用しようと想定していたユーザーが困る制限が「ドメインへの接続」だろう。Windows RTはActive Directoryドメインに対応していないため、接続したコンピューターを一括管理するグループポリシー管理を行えないのである(ローカルグループポリシーエディターは使用可能)。

Surface RTは優れたハードウェアで個人よりも、コンピューターを持ち歩く場面が多いビジネスマン向けだと筆者は感じたが、この制限は大きなデメリットとなるだろう(図36)。

図36 「システムのプロパティ」ダイアログを確認すると、ワークグループにしか参加できないことがわかる

最後に

筆者は普段からWindows OSをメインで使用しているため、Surface RT(Windows RT)にそれほどの不満を覚えていない。また、当初述べたように、クライアント企業や発表会場で使用する入力デバイスとしてSurface RTを選択したが、IMEやテキストエディターの問題を除いて、何とかなっているのが現状だ。

では、当初述べた他のタブレット型コンピューターを使用するという選択肢はあったのだろうか。そこで主なタブレット型コンピューターを列挙してみた(図37)。

図37 各タブレット型コンピューターの参考価格

ご覧のとおり価格はKindle Fire HDを除いて、ほぼ横並びである。Android OS向けには多くのテキストエディターやIMEが選択できるのは大きなポイントだ。個人的にはATOKが用意されているのが大きい。

その一方でiPadにはいくつかのテキストエディターが提供されているものの、IMEの変更を解放していない。その点Surface RTはテキストエディターとして選択できるのは、メモ帳やワードパッド、Word 2013 RTの3種類に限られ、IMEもMicrosoft IMEのみ。

いずれにせよSurface RTを含む各タブレット型コンピューターに関する(個人的な)不満はアプリケーションの自由度に集約されているのである。Surface RTが広まればサードパーティメーカーの参入も期待できるが、Surface RTの普及には魅力的なWindowsストアアプリが必要となる。

繰り返しになるが、Surface RTは良いデバイスだが、活用シーンはノート型コンピューターと比べるとさほど多くない。それでもSurface RTから、コンピューターを取り巻く一歩先の未来を感じ取れる方は、Surface RTを手にさまざまな場面に利用してほしい。


阿久津良和(Cactus