NECは6日、報道関係者を対象とした技術説明会「NEC Tech Day」を開催した。2013年最初となる今回は、製品企画やスピーカー技術にまつわるエピソードを紹介。PCとは思えないレベルの音を聞かせる秘密は、その「音へのこだわり」にあった。
ファミコンにもミニコンポにも負けない音を
最初に登壇したNEC 商品企画本部の栗山浩一本部長は、日本のPC黎明期を飾ったPC-8800シリーズに始まる「音へのこだわり」に関する開発史を披露。1980年代半ば、PC-8000/8800シリーズの"音"から話は始まった。
氏は、「1980年代中頃、パソコンの音はゲーム機のファミコンに大きく劣っており、もビープ音を工夫してゲームの効果音を出す状況だった。1万円台のホビー機に20万円台のパソコンが負けるわけにはいかない、それが音へのこだわりの出発点」と、音を重視する開発姿勢を強調した。
現在まで続くYAMAHA(ヤマハのブランド商標)との協力体制は、音源を探す過程で始まったという。
「当時ヤマハさんは、すでに民生機器用FM音源LSIを製品化していた。その『YM2203』というチップをPC-8801MKII-SRに搭載したところ、ゲームや音楽などホビー用途でさかんに活用されるようになった」(栗山氏)。以来、ミニコンポに負けないレベルの音を追求するようになったとのことだ。
若年層は動画配信サイトで音楽を試聴 - 再生機器は「PCがダントツ」
続いて登壇したのは、NEC コンシューマ商品企画部 主任の石井宏幸氏。YAMAHA製スピーカーを採用したデスクトップ機「VALUESTAR W」と「VALUESTAR L」、ノート機「LaVie L」の製品企画の背景を説明した。
社団法人日本レコード協会による音楽と視聴機器の環境調査で、興味深い結果が得られたという。「AM/FMラジオに代わり、無料動画配信サイトが楽しみ方のトップとなった。特に若い世代の消費者は、YouTubeやニコニコ動画の利用率が高い」(石井氏)。
その傾向は、視聴機器の変化にも現れているという。「音楽視聴でもっとも使われている機器はパソコン、CD再生とファイル再生で断トツだ。iPhoneなどスマートフォンも利用されているが、それは屋外持ち出し用で、家の中ではパソコンが選ばれている」(石井氏)。
しかし、音楽再生で重要な低音域を綺麗に鳴らすには、ある程度の大きさが必要となる。PC内にいち部品として組み込むような小型サイズのスピーカーでは、低音域の音がうまく再生されない課題があった。
キーは「SR-Bass(Swing Radiator Bass)」と「FR-Port」という2つの低音再生技術。
前者は「VALUESTAR W」シリーズに搭載され、パッシブラジエータを用いてキャビネット内のエネルギーを効率的に低音へと変換できることが特徴。後者はYAMAHA独自のバスレフ方式スピーカー内部構造で、「VALUESTAR N」シリーズと「LaVie L」シリーズに搭載されている。今回のTech Dayの主題は、この2つの技術に関する解説だ。
「VALUESTAR W」シリーズには、低音を確保できるSR-Bass 2.1chスピーカーを搭載。薄さが必要な「VALUESTAR N」と「LaVie L」には、FR-Port採用スピーカーが搭載される |
スピーカーを覆うパンチングメタル表面には「sound by YAMAHA」のプレートが光る(写真はVALUESTAR W) |
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