小型/薄型のPCでも低音を楽しめる「FR-Port」
省スペースのディスプレイ一体型デスクトップPC「VALUESTAR N」シリーズや、ノートPC「Lavie L」シリーズのスピーカーには、「FR-Port」というバスレフ方式の内部構造が採用されている。
「LaVie L」に搭載されている超小型スピーカーのデモ。この状態でしっかりとした低音を聴かせてくれた。手前側が「VALUESTAR N」用のスピーカーユニットで、新井氏が持つ「LaVie L」用と比べ二回りほど大きい |
従来のバスレフ方式では、吹き出し口(ポート)の内外に空気流が発生してしまい、その空気流が音に悪影響を及ぼすのだという。
「従来型のポートでは、空気砲のように"渦輪"が発生する。その渦輪がパネルなどの障害物にぶつかると、大きなノイズの発生につながる。バスレフ型はキャビネットが小さくなるほどポートから吹き出す風が強まるため、超小型スピーカーで従来型バスレフを採用するのはほぼ不可能」(新井氏)。
そのバスレフ方式を超小型スピーカーで実現したのが、ヤマハが開発したFR-Port(Flat Radial Port)だ。従来のバスレフに採用されている円筒ポートと異なり、FR-Portは両端に近づくにつれ口径が広がる。
新井氏は、「FR-Portでは、音が横方向へは広がるが、縦方向には広がらない。ポート内部で強制的に横方向へ音を広げる結果、空気はポート内部で振動し、開口部には空気流が発生しなくなる」と説明する。これには、エンクロージャを薄くできる利点もある。
風量の減少はノイズの抑制につながる。PCでは、ポート開口部をパンチングメタル(金属に細かく穴を開けた金網状の板)で塞ぐ必要があるが、そうすると従来型のポート形状では出力が増すほど抵抗も増し、音圧は低下してしまう。
しかし、FR-Portでは開口部を塞いでも効率が低下しないメリットがあるのだという。「FR-Portはポートの中央部だけで空気が振動し空気流を妨げないため、開口部をパンチングメタルが覆っても影響がない」(新井氏)。これによりポート終端を曲げられるため、低音と中高音の出口をコーン近くに設けられる。
LaVie Lに搭載されているスピーカーと同じ、2cm口径の超小型スピーカー。外部に生産を委託する際、スティック状のポータブルオーディオを見せて「こういう製品をつくりたい」と話したという |
試作機も多く展示されていた。この試作機では低音域の開口部が、中高音と離れた場所に設置されている |
ノートPC「LaVie L」シリーズでは、スピーカーの取付位置が音に大きく影響しているという。「ノート型機はキーボード上部が"一等地"。『スピーカーでここを取りますよ』『では電源スイッチを移すしかないね』と、その一等地をスピーカーに優先して割り当ててくれたことが奏功している」(新井氏)。
NECの"音へのこだわり"を感じさせる開発エピソードで、説明会は締めくくられた。