インターネット端末として進化する時計

カシオに籍を置いて二十数年になるというベテランの道蔦氏だが、意外なことに、G-SHOCKに関わったのは今回が初とのこと。改めて、その存在感を実感したという。ただ、G-SHOCKはあくまでスタートであり、いずれはスマートウオッチをカシオの腕時計の全モデルで標準仕様にしたいと考えている。

道蔦氏「スマートウオッチというと難しく聞こえますが、早い話が携帯電話を経由して、腕時計がインターネットにつながったということなんです。つまり、これからの腕時計はインターネット端末として機能が向上していく。アプリケーションをバージョンアップすることで、買ったあとも機能が増えたり、追加したりできるのです。現在公開中のG-SHOCKアプリも近々バージョンアップして、機能が向上する予定です」

iPhone 4S以降はハードウェアとiOSがBluetooth v4.0をサポートしているため、プロファイルをインクルードしたアプリを用意するだけで、スマートウオッチに対応できる

―― 以前、一般の開発者やアプリメーカーにも、G-SHOCKアプリを開発するための技術を公開するとお聞きしたことがあるのですが。

道蔦氏「正確には、すでに公開されています。実際のところ、仕様書をポンと渡されて、『これで作って』と言われてもなかなか難しいですよね。やはり、作るためのノウハウやアドバイスを得られる環境がないと…。これは早急に整備したいと思っています。G-SHOCKアプリの開発者会議なんてできたらいいですね。アップルさんのWWDC(編注:WorldWide Developers Conference。毎年、米カリフォルニアで開催されるApple主催のデベロッパー向けイベント)くらいの規模で。それはまだ夢のレベルですが。

でも、今年中にはなんらかの形にしたいと考えています。正式にアナウンスできる段階ではありませんが、iPhoneだけでなく、各スマートフォンのデベロッパーさんにも参加していただけると嬉しいですね」

いずれ「当たり前」になっていくスマートウオッチ機能

道蔦氏「接客業の人や、仕事中にメールチェックできない人などには、スマートウオッチを積極的に使って欲しいですね。フィルタリング機能もあるので、特定の人からのメールだけ通知することもできますし。特に女性はスマートフォンをバッグに入れておく人が多いので、便利に使っていただけるのではないでしょうか」

最近、女性向けゴルフ雑誌から「誌面でスマートウオッチを取り上げたい」という話があったという。プレイ中でも着信が分かるし、G-SHOCKはタフネス仕様でスポーツ向け。特にGB-5600やGB-6900はファッションとも相性がいい。なるほど、納得の視点だ。

ところで、Bluetooth SIGでの道蔦氏の活動は、現在もなお続いている。

道蔦氏「現在は、次のプロファイルを作る作業をしています。製品化が目の前に迫っていた頃よりは余裕が出てきましたが、メンバーが全員ボランティアなので、スケジュールや進行のやりくりが難しいところがあります。でも、忙しい中でみんなに見てもらって意見を聞けるか、いろいろと工夫していますよ」

現時点では、着信音や振動のコントロールをはじめ、電話やメール、SNSメッセージの着信通知といった、情報を取り出すための『気付き』を与える機能がメインとなっているスマートウオッチ。今後は、カシオのアウトドアウオッチ「PROTREK」のような、センサーを搭載した時計とのデータのやりとりも実現する予定だという。例えば、PROTREKの気圧センサーのログを定期的に取得しつつ、アプリやWebサービスに自動記録していくといった使い方もできるようになるかもしれない。

数年後には、カシオウオッチでは当たり前の一機能になっていくというスマートウオッチ。Bluetoothと道蔦氏が見せてくれる新たな時計の未来像に、期待は膨らむ一方だ。

2011年のBluetooth SIGにおけるキャンペーン・オブ・ザ・イヤー賞をカシオ計算機として受賞

Bluetooth SIGのオールハンズミーティング2011では、道蔦氏が副議長を務めるPUIDがワーキンググループ・オブ・ザ・イヤーを受賞