iPhone/iPadを業務に活かしたい、と考える小規模事業所のオーナーは多い。しかし、同業他社の導入事例も知らないし、どこへ相談すればいいかもわからない、という向きが大半ではないだろうか。その助けとなるべく登場したWebサイトが、FileMakerの「fmgo.jp」だ。

FileMaker Goでできること

FileMakerといえば、Mac向けのカード型データベース……と連想するのはいささか古い。確かにカード型のデザインを引き継いではいるが、約16年前のバージョン3の時点でリレーショナルデータベースへと進化しているし、データベースの内容をオンタイムにインターネットへ公開できる「Web公開」、携帯電話やPDAのサポートなど、時代に応じた機能を投じ進化を続けている。

そのFileMakerが、スマートフォン/タブレットの普及期に投入した関連プロダクトが「FileMaker Go」だ。FileMakerデータベースをiOSデバイスで利用するためのアプリであり、データベース自体を作成する機能はないが、新規データ(レコード)の追加や変更ができる。FileMaker Serverでホストされたデータベースにアクセスする、端末としても利用可能だ。かみ砕いていえば、FileMaker ProからDB設計/プログラミング機能を取り払ったデータベース端末、それがFileMaker Goなのだ。

当初FileMaker Goは有償アプリとして登場したが、2012年春に「FileMaker Go 12」がリリースされたことと前後し、無償化された。FileMaker Pro 12では、デザインツールやレイアウトツールの改良などiOSデバイスのサポートが大幅に改善されており、FileMaker Pro/Serverで構築したデータベースをほぼそのままiPhoneやiPadで利用できるようになった。

課題があるとすれば、その「解法」が一部にしか知られていないことだろう。FileMakerは高い知名度を有していても、FileMaker Goは登場してから日が浅い。データベースをiPhone/iPadらしく活用できることを知ってもらうには、FileMaker Goを実際に手にしてもらうのが近道だ。今回公開された「fmgo.jp」は、まさにそのためのWebサイトだといえる。

「FileMaker Go 12 for iPhone」と「FileMaker Go 12 for iPad」は、App Storeで無償ダウンロードできる

ブラウザで「fmgo.jp」にアクセスし、ダウンロードしたサンプルファイルを開けば、すぐにFileMakerならではの機能と操作性を試すことができる

ビジネスの現場でつくられたデータベースを試す

2月26日にオープンした「fmgo.jp」は、FileMakerのiOSデバイス向けソリューションを実体験できるWebサイト。現時点で公開されているサンプルデータベースは40以上、顧客管理や商品管理、店舗レジシステムや医療・教育など、多くの業務カテゴリをカバーしている。

データベースの開発は、FileMaker Business Alliance(FBA)に加盟する国内のFileMakerデベロッパが担当しており、いずれもビジネスの現場向けにデザインされた実践的なもの。そのため、一部機能や試用期間に制限が設けられているが、FileMaker Goとその上で動くデータベースに実際に触れることができる。Appleグループ企業ならではのノウハウを生かしたUIを気軽に体感できるという点でも、FileMakerのiOSデバイスとの親和性を知るうえでも、参考になる試みといえるだろう。

筆者が試用したデータベースは、写真レイアウト作成DB「ArrangeMaster」と、訪問診療支援システムDB「Beluga」の2つ。どちらもiPhone/iPad用に最適化されているため、利用する環境に応じた画面構成で利用できる。タッチパネルやカメラなど、iOSデバイスならではの操作性を実感できるサンプルだ。

「ArrangeMaster」は、背景画像(顔写真)にメガネのイラストをレイヤー表示し、どのように見えるかを検証するデータベース。ピンチやドラッグなど操作でフィッティングでき、顔写真はその場で撮影することもカメラロールのものを使うこともできる。fmgo.jpから入手できる試用版では、背景画像が5つまで、アイテムは登録不可という制限はあるが、このデータベースの特徴を知るにはじゅうぶん。メガネや帽子などアクセサリを扱うショップでは、興味を持って試すことができるだろう。

「Beluga」は、訪問診療を行う医療機関向けのデータベース。FileMakerを使った医療ソリューションであり、1カ月に2,500件もの往診を行う在宅療養支援診療所とともにデザインされたデータベースだ。それだけに、住所・氏名や年齢、既往歴はもちろん、薬剤の禁忌や後方支援病院など患者の情報が網羅されている。

このような特定ジャンルの業務に特化したデータベースを試用できる機会はあまりなく、その点で「fmgo.jp」が果たす役割は大きい。すべて無償ということもあり、スマートフォン/タブレットを業務に使いたい、と漠然と考えている中小企業や店舗オーナーにとって参考になるのではないだろうか。

顔写真にメガネなどのアイテムを重ねて表示できる「ArrangeMaster」。その場で撮影した写真も利用できる

アイテムは回転や拡大/縮小が自由に行えるため、どのような顔写真にもフィットする

カメラロールの画像も利用できるため、このような歴史上の人物の絵にメガネをかけさせることも

訪問診療を行う医療機関向けのデータベース「Beluga」。1カ月に2,500件もの往診を行う在宅療養支援診療所とともにデザインされた

iPad/iPhoneどちらにも最適化されているため、画面の大きさを除けば操作感は維持される。これがFileMakerならではのメリットだ