2013年の「一太郎2013 玄」登場

2013年現在、ワープロ(ワードプロセッサ)ソフトのニーズはどこにあるのだろうか。文章を入力して見栄えを加工し、書類として印刷するシステムは、海外のタイプライターから発展して生まれたものだが、ひらがなや漢字を組み合わせる日本語入力は難しかった。その後の技術発展から日本語文書が作成可能なワープロ専用機、パーソナルコンピューター上のワープロソフトと進化している。現在はWindows OSが持つ圧倒的シェアから、Microsoft Wordが事実上のデファクトスタンダードと述べても過言ではないだろう。だが、パーソナルコンピューターの黎明期からワープロソフトとして開発され続けてきた「一太郎」シリーズの存在は大きい。

世相やユーザーニーズに応えながら発展してきた「一太郎」シリーズは、1985年5月にリリースされた「一太郎」から数えると今年2月にリリースされた「一太郎2013 玄(以下、一太郎2013)」はバージョン23にあたる。純国産ワープロソフトとして日本語文書の作成に必要な、縦書きやルビといった日本独自の文書構成を早い時期からサポートし、原稿用紙など国内で流通する用紙テンプレートを用意するなど、改めて目を見張る箇所は多い。Microsoft Wordもワールドワイドを対象にした機能拡張やサポートを行っているが、"日本語に特化"という観点から見れば「一太郎」シリーズの有用性は十二分にある。

その「一太郎」シリーズの最新作にあたる「一太郎2013」では、改めて文書作成そのものを見直し、文書を紡ぎ出す書き手の発想を支援する「感太」を搭載。日常生活や行事、四季折々の言葉や情景を、文書に併せて単語候補を提示する機能だ。単語と連動する写真やイラストと組み合わせて提示する「感太カード」によって、普段使えない単語や言い回しを文書に組み込むことができる。

前バージョンとなる「一太郎2012 承」で電子書籍フォーマットであるEPUB 3.0の出力に対応したが、スマートフォンやタブレット型コンピューターなどデバイスに併せて表示を最適化するリフロー型に加えて、新たに「固定レイアウト型」に対応。出力サイズを固定することでレイアウトを維持し、作り手のイメージどおりに電子書籍を作成することが可能だ。

そしてバンドルされる「ATOK 2013 for Windows」は、入力ミスや確定ミスを予測して自動的に訂正する入力支援機能を新たに搭載している。確定後の単語を踏まえて適用されるため、これまで以上に誤字脱字を減らせると言う。もちろんWindows 8のモダンUI(ユーザーインターフェース)環境にも対応し、チャームバーやWindowsストアアプリ上での日本語入力にMicrosoft IMEを使用する必要はなくなった。

一太郎2013のラインナップは以前と同じく、構成によって上位エディションが用意されている。秀英体フォントや電子辞書、読み上げソフトとなる「詠太3」などをセットにした「一太郎2013 玄 プレミアム」。さらに音声入力ソフト「ドラゴンスピーチ11J」やフォトレタッチソフト「Zoner Photo Studio 13 HOME J」をセットにした「一太郎2013 玄 スーパープレミアム」を用意。構成差は公式Webページに掲載された表をご覧いただくと一目瞭然だ。

前述したのように一太郎2013 玄 プレミアムには、秀英体5書体が収録されている。そもそも秀英体とは、日本の総合印刷会社である大日本印刷の前身企業、秀英舎の社名を冠にした活字書体だ。同社の紹介ページにあるとおり、上海から日本へ渡った金属活字を元に同社が明治15年に開発を始め、明治末期に完成させた書体である。

秀英体は現在でも「広辞苑」の本文や自動車広告のデザイン、携帯電話の書体として利用されているが、一太郎2013 玄プレミアムでは、秀英明朝L/M/Bと秀英横太明朝M/B、計5書体のOpenTypeフォントを収録。フォント埋め込みも可能なため、PDFファイルに埋め込むことも可能だ。実際に目にするとわかるのだが、漢字やカナの判別しやすく、ゴシック体よりも見やすいため、頭に言葉がストレートに入ってくる(図01~02)。

図01 一太郎2013上で各明朝フォントを使用してみた。上から「MS P明朝(太字)」「秀英明朝B」「秀英横太明朝B」を設定した文字のバランスが異なり美しく見える

図02 こちらはフォントをWindows 8のビューアで表示させたものだが、OpenType形式が用いられ、PDFなどへの埋め込みが可能だ

個人的には、この書体だけでも同プレミアムを選択する価値があると思うが、必ずしも万人が必要になるとは言い難い。それでは次ページから一太郎2013 玄 プレミアムの製品版を精査し、新「一太郎」がバージョンアップに見合うものか確認していく。