本誌でも報じているように、2013年度第2四半期(2012年10月~12月期)の決算を発表した。前述のリンク先で詳しく述べられているが、ビジネス部門とエンターテインメント&デバイス部門が落ち込んでいる。全体の売上高は前年同期比2.7パーセント増の214億5600万ドルだが、営業利益は2.8パーセント減の77億7100万ドル、純利益は3.7パーセント減の63億7700万ドルだという。

私企業であるMicrosoftは常に利益を追求しなければならないが、コンピューターを取り巻く状況は日々変化し、一歩先に抜きんでなければならない。そのため、最終的に利益へとつながるか分からなくとも常に研究を続ける必要がある。同社は1991年から独立した研究所としてMicrosoft Researchを設立しているが、その研究結果として生み出されたのがNUI(ナチュラルユーザーインターフェース)であり、Kinectシリーズだ。今週は次世代に連なる自社の取り組みを紹介する公式ブログ「Next at Microsoft」で取り上げられたNUIに関する記事を中心にレポートをお送りする。

2012年のNUIを振り返る

本レポートでは何度か述べているように、Microsoftは次世代のUI(ユーザーインターフェース)として、NUI(ナチュラルユーザーインターフェース)を研究開発し、当初は同社のコンシューマーゲーム機「Xbox 360」向けのデバイスとして2010年に「Kinect for Xbox360」をリリース。2012年にはWindows OS向けの「Kinect for Windows」のリリースに至っている。ジェスチャーや音声認識による入力システムは、コンピューターのあり方を変化させるのは想像に難くない(図01)。

図01 2012年にリリースされた「Kinect for Windows」

タイプライターを祖に持つキーボードや、1961年に発明されたマウスから数えるとコンピューターを操作するデバイスに大きな変化は生じていないことにお気付きだろうか。Windows Vistaリリース時は発表会で音声認識機能のデモンストレーションを行ったが、その結果は散々だった。Reuters(ロイター)など各種報道機関を通じて酷評されたのは記憶に新しい。その後のWindows 7やWindows 8にも同機能は搭載されているが、Windows OSのように過度な対応を求められるOSを、音声認識で済ますことは難しい。

図02 1997年にリリースされた「iPod touch」。画像は第5世代モデル

その一方で、マルチタッチスクリーン方式のインターフェースを採用した「iPod touch」は2007年にリリースされているが、当時のMac OS Xをタブレットに最適化するために再構築したiOSを搭載している。このようにコンピューターと連動するUIはOSを含めた大幅な再構築が必要であることに気付いたMicrosoftは、タブレット型コンピューターでの操作性を最適化したWindows 8のリリースに至った(図02)。

現時点でWindows 8が成功に至るOSか否かの評価は下せないが、UIという観点から見ると、冒頭述べたNUIが今後のMicrosoftを牽引する存在であることは明白である。Microsoftも自社の置かれた現状を踏まえ、NUIに注力し始めた。同社は次世代に連なる取り組みを紹介する公式ブログ「Next at Microsoft」を用意しているが、先頃の記事では改めてNUIに関する現状を紹介している。記事を投稿したのはデジタル人類学者であり、同ブログの編集者であるSteve Clayton(スティーブ・クレイトン)氏だ。

「a primer」と題したPart 1では、過去に投稿した記事を振り返りつつ、同社のCEOシニアアドバイザーであるCraig Mundie(クレイグ・マンディ)氏が述べた「われわれの五感を模写できるコンピューターを開発するという目標」や、同社会長のBill Gates(ビル・ゲイツ)氏が自身のブログに投稿した記事を紹介しつつ、過去に公開されたNUIに関する研究結果のビデオを紹介している(図03~04)

図03 「The Power of the Natural User Interface」と題されたGates氏の記事。正しくは2011年10月にワシントン大学で行われた講演の内容だ

図04 ビデオではMicrosoft Researchが公開したNUIの実験結果を紹介。画面はジェスチャーでテトリスのブロックを回転させている1シーン(画像は動画より)

「Kinect at work」と題したPart 2では、文字どおりkinectの活用事例を解説。Xbox360用アクセサリーとして商品化された「Kinect for Xbox360」が、NUIを具現化するために"促進剤"として働き、「Kinect for Windows」に至ったと説明している。

また、Microsoft ResearchのディレクターであるStevie Bathiche氏が率いる応用化学チームを紹介し、彼らが目標としている「Magic Window(魔法の窓)」の制作にKinectを広範囲に利用していることを紹介した。Magic Windowは以前のレポートでも述べたので興味のある方はこちらの記事をご覧いただきたい(図05)。

図05 Bathiche氏が行っているNUIのデモシーン(画像は動画より)