富士通が10月26日に発売した「STYLISTIC QH77/J」は、ノートPCの液晶ディスプレイ部を取り外して、タブレットPCとしても利用できるコンバーチブル型PCである。いやむしろ、開発コンセプトを聞けば、普段はタブレットPCとして利用し、必要に応じてキーボード部分を付属して利用するという提案であることがわかる。

タブレット分野において長年の実績を持つ富士通が、Windows 8時代におけるタブレットPCのひとつの提案として打ち出したのがSTYLISTIC QH77/Jであり、それは結果として、着脱式としては国内PCメーカーで唯一のものとなった。そして、携帯電話のビジネスで同社が重視してきた、「利用シーンを想定したモノづくり」のノウハウが活用された点でも注目されよう。

富士通は、どんな狙いで、STYLISTIC QH77/Jを製品化したのだろうか。

STYLISTIC QH77/J(ダークシルバー)

「もっと多くのユーザーにタブレットを」 - タブレット利用が前提の1台

「もっと多くのお客様に、タブレットを使っていただきたい。そうしたコンセプトから開発したのが、STYLISTIC QH77/Jである」と、富士通ユビキタスビジネス戦略本部モバイルプロダクト統括部第四プロダクト部の日置健二氏は語る。

富士通ユビキタスビジネス戦略本部モバイルプロダクト統括部第四プロダクト部の日置健二氏

Windows 8の発売に伴って、タブレットとノートPCの双方で利用できるコンバーチブル型PCは、いくつかのPCメーカーから登場しているが、その多くが、ノートPCとしての利用を強く意識した開発コンセプトになっている。しかし、富士通のSTYLISTIC QH77/Jの場合は、タブレット利用を主な用途にしている点が、これらのコンバーチブル型PCとは大きく異なるといえる。

では、なぜ富士通は、タブレット利用を前提とした、他社とは一線を画す製品開発に取り組んだのだろうか。

理由の1つには、ユーザー個人の用途を想定すると、タブレット形状での利用が多いと判断した点が挙げられる。

日置氏は、「個人の利用シーンで最も多いのがWeb閲覧や、SNSの利用。そうしたシーンでは、キーボードを使うのではなく、タブレット端末での利用が適している。しかし、たまに仕事を持ち帰ったり、レポートを書かなくてはならないといった場合、あるいは年賀状を作成するために住所録を作成しなくてはならないという場合には、キーボードがあった方がいい。その時にはキーボードを持ち出して、タブレットに接続してもらえばいい」と語る。

ピュアタブレットとして使えるよう、ディスプレイ部が着脱できる形状

キーボード部との接続部分。タブレット(ディスプレイ部)を置くとカチリとはまる仕組み

あくまでも、普段はタブレットPCとして利用し、必要に応じてキーボードを接続するという、タブレット利用を前提とした提案である。実際、同社では、「使用イメージのバランスは、タブレットが8割、キーボード部を付属したノートPCとしての利用が2割」と想定している。

もう1つには、富士通がタッチ機能を搭載したコンバーチブル型市場において長年の実績を持ち、その流れのなかでラインアップを刷新したという要素だ。

もともと富士通では、中央部のヒンジが回転し、ディスプレイを折り畳む形のコンバーチブル型PCを、ディスプレイのインチサイズごとにシリーズ化。10.1型、12.1型、13.3型という3つの製品をラインアップしていたものの、10.1型ディスプレイを搭載した製品の売れ行きが鈍く、この分野でのテコ入れが求められていたところだった。また、「10.1型のコンバーチブル型PCは高さが4cmあり、もっと薄型化する必要があった」という点でも、最小ディスプレイサイズ製品の改良に乗り出す必要があった。

STYLISTIC Q550/C

さらに、同社ではタブレットPCの製品ラインも存在していた。2011年に投入した「STYLISTIC Q550/C」は多くの引き合いが出ていたものの、CPU性能をはじめとして、パフォーマンスの向上を求める声が上がっており、機能強化が課題となっていた。

そんな中で開発されたSTYLISTIC QH77/Jは、10.1型のコンバーチブルPCの進化版でありながら、製品の位置づけは、タブレットPCの最上位へと定義を変更したものとなっている。タブレットPCとしての機能強化を中心に開発が進められたのだ。

また、STYLISTIC QH77/Jは、着脱式としたことで、ワンアクションでタブレットとして利用できる構造となった点も大きなポイントだ。従来のコンバーチブル型では、ディスプレイを回転させて折り畳む、というアクションだったが、すぐにタブレットで使用したいという場合に着脱式の便利さは秀逸だ。

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