ボイスチャットやシンボルチャットを有効に使えれば有利に戦えるが、それでも意志の疎通は簡単ではない。ガンダムのテーマである「わかりあうこと」の難しさを知る、というのはいささかシニカルなものの見方かもしれないが、ボイスチャットでだんだんキレはじめる兵士を見ているとカミーユを見守るクワトロ大尉の気持ちも分からんでもない、と思う反面、急ぎすぎも絶望もしなかったアムロの異常性も見えてくるのだな、などとゲームをやりながらゲームじゃないことを考えてしまったりもする。
死に際に感じる自分の生き様に酔えるか
ガンダムの面白さは敵を撃破する瞬間ではなく、撃破される瞬間にある、と言ったらどれくらいの人が共感してくれるだろうか。戦死する瞬間に拡散する人の意志、とまで言うと大げさだが、うかつに前に出て孤立して蜂の巣にされた時の死、ひとりで多数の敵を引きつけ、自軍の勝利に貢献しつつも力尽きて倒れた時の死、化け物じみたエースと遭遇して手も足も出ずに消し炭にされた時の死……などなど、その瞬間に自分がどのような兵士であったかを省みる瞬間に、本作の「ガンダムらしさ」がある。「ふざけんなよ! 次はぶっ殺す! 早く出撃させろ!」とイラつきながらリスポーンを待っているようでは教習所内で車を運転している仮免許未満といったところだ。それもひとつのプレイスタイルではあるが、おそらく本作はそういうゲームではない。散り際に自分がどう戦ったか、戦えたかを省みて、充実感があるか否か? 登場人物の誰に相当する働きができたか? それを考えるくらいの感性があれば、本作の面白さは増すし、上達もしていくだろう。
死に想う、ゆえに生あり。最終的な理想は戦闘で最後まで生き残り、かつ自軍の勝利に貢献することだ。とくにザクⅡ、ジム以外のMSは撃破されると失うものが多く、なるべく撃破されないように戦えなければ運用が難しくなっている。先に紹介した低階級、無料プレイで遊ぶライトユーザーがひたすら血を流し続ける戦場をくぐり抜け、真に鍛え上げられた兵士だけがグフやドム、陸戦型ガンダム、プロトタイプガンダムなどを戦場でうまく使えるのだ。いや、精鋭でさえ性能を引き出し、戦果をあげるのは難しい。アムロやランバ・ラル、黒い三連星、シロー・アマダなどはこんなに難しいことをやっていたのか、と認識を改めざるを得ない。名機と呼ばれるザクⅡやジムの扱いやすさ、ジオンのベテラン兵がリック・ドムやゲルググに乗り換えずザクⅡに乗り続けた意味も分かるし、ハヤトがガンタンクで生き延びた凄さや、アポリーの「コックピットが違っても3日もあれば自分の手足にする事ができます」という言葉に秘められたジオン軍の実情と彼の凄さも再評価することになるだろう。
壁を越えていくことと、オンラインゲームの予測不能さ
最初に精神力が求められる、ということを書いたが、結局それに尽きる。安定して戦えるザクⅡ&ジム系を捨てて新しいMSに乗り換えるには相応のタフさが必要だ。そしてオンラインゲームの常であるアップデートと修正。これにより愛機が弱体化したり、上位機種が登場したり、敵機の強化で相性が変わったりすることは避けられない。これらに適応していかなければただの老兵に成り下がってしまう、というのがこの手のゲームの難しくも面白いところである。
最初は無料で遊べるゲームでは常套文句の「無課金でも楽しめる」は、本作でも通用するといっていい。現状、解消すべき問題点はあるものの、2時間に1プレイ無料で階級上限はなく、上等兵になれば機体のペイントが解放され、自由なカラーリングで出撃可能。歴代ガンダムゲームの中でも珍しい機能で、これだけでもなかなか楽しい。また無課金でも7月末時点で入手可能なMSの種類に制限はなく(機体と武装のレベルには制限あり)、ここまで無料プレイに出せるのかと感心すると同時に、おそらく一番重要となる課金プレイ領域がどこまで充実するのか、先々のプランが気になるところだ。あとはやはり通信環境の安定がカギとなるだろう。そこさえクリアできれば、息の長い作品になる可能性は十分にある。抜け出せないメビウスの輪のようなゲームになるか否か? 一兵士として見届けようと思う。
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