米PayPalは8月22日(現地時間)、カード会社大手の米Discover (DFS)との提携を発表した。これにより、2013年にもDiscoverのカード処理ネットワークを使ってPayPalによる支払いが可能になる。PayPalユーザーが自身のアカウントを使って店頭等で簡単に決済を行えるようになるほか、DiscoverはPayPalユーザー流入分のトラフィック増でVisa、MasterCard、Amexといった大手競合らに対抗できるメリットがある。

両社の説明によれば、Discoverを取り扱う小売店は既存のPOS等のアップグレードや入れ替えは必要なく、そのまま全米で5000万以上のアクティブアカウントを誇るPayPalユーザーのトランザクションを2013年のしかるべきタイミングで受け付けられるようになるという。具体的にどのような仕組みで支払いが行われるのか不明な部分はあるが、従来より提供されている「PayPal In-Store Checkout」の仕組みを用いるのであれば、PayPal Payment Cardを利用することになると思われる。これはPayPalアカウントに直接結びついた専用カードで、Home Depotなど契約リテーラー以外での買い物には使えないため、クレジットカードより悪用されにくいメリットがある。そのほか、アカウントに紐付いた携帯電話番号とPINの組み合わせで支払い認証を行う方法もある。もしDiscoverがこれに対応した場合、現在5種類3000店舗しかないPayPal In-Store Checkoutの提携パートナーが一気に数百万拠点規模へと拡大する。

なおクレジットカードではなくPayPalアカウントを利用するメリットだが、複数のクレジットカードを利用するユーザーがPayPalで支払い窓口を一本化できるため、管理が簡単になることが挙げられる。クレジットカード番号を相手に直接晒すことなく、さらに期限切れカードの管理も容易だ。このあたりはGoogle Wallet (Checkout)で複数の支払いカードを登録して適時使い分けが可能な点と共通する

今回の提携は利用者拡大を目指すDiscover側の思惑のほか、モバイルペイメントの分野でStarbucksとの提携を発表したSquareへの対抗という側面もある。Starbucksではクレジットカード処理ネットワークにSquareを採用してコスト削減を図ったほか、Square特有の支払いシステムである「Tab」を全米のStarbucks店舗で利用可能にすることを表明している。一方のPayPalはMcDonald'sと共同でモバイルペイメントの実験を行っていることが伝えられているDunkin' Donutsもモバイルアプリでの商品代金支払いを可能にするシステムの実験を進めており、NFCのような非接触通信を使わないタイプでのモバイルペイメント活用が急速に進み始めている。

これらは大手リテーラーとの提携によるシステムの一斉展開だが、これとは別に独立系の小売店主が個別に導入できるソリューションにも注目が集まっており、前述のSquareはこの分野の目指したスタートアップ企業だ。一方のPayPalは「PayPal Here」という仕組みを今年3月に発表しており、主に中小の小売店舗をターゲットとしたモバイルペイメントの拡大を目指している。これについては5月にソフトバンクとの提携が発表されており、日本での本格展開に向けて動き始めた段階だ。米国での話だが、先日はWal-Martなど大手リテーラー連合がモバイルペイメントに焦点を合わせたジョイントベンチャーを設立する動きもあり、今後1~2年は激しい変化に目が離せないといえる。

(記事提供: AndroWire編集部)