ストックフォトの販売収入だけで生活しているフォトグラファーたちは確かにいる。これまでのフォトグラファーとは少し違う、新しい生き方を確立したフォトグラファーに話を訊いた。

今回、話を訊いたのはオランダのIvar氏だ。個性的な人物写真をiStockphotoに出品するIvar氏は2003年からiStockphotoに参加しているという。

「グラフィックデザインの学校を卒業した後、全く関係ない仕事をしていたのですが、それが嫌になり、写真が好きだったのでiStockphotoを始めました。当時のiStockphotoは審査基準が今よりゆるやかだったという印象があります。データもデジカメではなく、フィルムで撮影した物をスキャンして出品するのが一般的でした」(Ivar氏 以下同)

1年の半分は世界を旅しているというIvar氏

当時、21歳だったIvar氏。仕事を辞めて取り組んだiStockphotoですぐには収入を得ることはできなかったという。ただ、得るものは大きかったようだ。

「iStockphotoを初めて最初は年間30ドルしか販売収入がなくて、周囲にも『お前は何をやっているんだ』とバカにされていました。ただ、自分の写真に対して、色々な人がフィードバックをくれるので、自分の技術が進歩していくのは実感できましたね」

努力を続けるうちに、Ivar氏の生活も変化していったという。

「2005年くらいから徐々に収入が増えてきて、2007年、25歳の頃から完全に収入が安定しました。今ではiStockphotoの収入だけで生活していて、1年の半分位は世界中を旅しながら写真を撮っています。また、iStockphotoで写真が売れたおかげで、フォトグラファーとして撮影の依頼も受けるようになりました」

iStockphotoで成功を掴んだIvar氏は、ストックフォトサービスの魅力をこう語った。

「依頼された仕事は収入になりますが、その分拘束される時間も増えます。iStockphotoではそれがないので、時間の自由が増えました。世界各国に友達が出来るのもiStockphotoの良さですね。私は外国に行ってもホテルに泊まらないで、iStockphotoで出来た知人の家に泊めていただくことが多いです」

Ivar氏は通常の撮影仕事に対するストックフォトの利点も語ってくれた。

「ストックフォトサービスは、よく単価が安過ぎると言われますが、私はそうは思いません。フォトグラファーとして1回の受注仕事では、コストをかけて作品を作っても、1回収入を得ればそれで終わりです。でもストックフォトはWeb上にアップロードすれば、それ以上のコストはかからず、半永久的に収入が見込めます。そういう見方も大切だと思います」

撮影:糠野伸