人気番組「ほこ×たて」の裏側

「ほこ×たてを見たことがある人~!」との司会の問いかけに、ほとんどの来場者が手を挙げる。さすがは科学イベントに参加する子供たち! ところで「ほこ×たて」と言えば、対決の勝敗予想を外す滝川教授が名物になってしまっているが…。

「あの番組は、私たち出演者にもまったく事前情報を与えてもらえないんですよ。ですから、テレビを見ているみなさんとほとんど同じ条件で予想しているんです。で、私は11回連続して間違えました(会場爆笑)。でもね、そういう演出じゃないんです。一生懸命考えると外れちゃうんですよね。で、奥さんに怒られる(笑)」(滝川教授)

「ミスターほこ×たて」日本タングステン

カシオブースの隣は、「ミスターほこ×たて」日本タングステンのブース。圧縮成形した金属と焼結した金属の硬度差を手で触って体験できるなど、多くの興味深い展示がされていた

日本タングステンは、社名のとおりタングステンをはじめとする、高融点金属や超硬合金の製造・加工を業務としている。「絶対に穴の開かない金属」をひっさげ、切削工具メーカーなどの高性能ドリルと計5回の対決があり、4勝1分という圧倒的な強さを誇っている。

日本タングステン 超硬部品部 主任 中川内浩二氏(写真左側)

日本タングステンでは、倭の那国王の金印レプリカをタングステンで作成。直接触ることができた

「初出場は4年前でした。ある日、上司に呼び出されて『今度ドリルと戦うことになったから負けないように』と訳の分からないことをいきなり言われまして…。番組中に名刺交換をするシーンが出てきますが、本当にあの瞬間まで、私たち出場者には対戦相手の企業名や製品などの情報がまったく提供されないんです。とにかく固い金属を作れ、と言われるだけ(笑)。だから、毎回緊張します」(中川内氏)

共和技研 × カシオ計算機

共和技研 取締役 TOPGUN事業部 田中慎一郎氏

共和技研は、圧縮空気によって超剛速球を撃ち出すピッチングマシン「トップガン」でカシオのEXILIMと対決。トップガンが撃ち出したボール(最高370km/h)がワイングラスの脚を打ち抜く瞬間を、EXILIMの高速連写(30コマ/秒)で写せるかというもの。結果はトップガンの勝利となった。ボールの移動跡らしき白い光線がワイングラスの脚を貫く瞬間は見事に写っていたが、ボールの形がはっきりと写らなかったため、番組としては共和技研の勝利となった。

「あの対戦時には、思わず笑ってしまいました。テレビをご覧の皆さまには、不敵な笑みと見られたかもしれませんが、そうじゃないんです。実はトップガンの調整にはEXILIMを使っていたんですよ。当日もポケットに入っていたんですから。

トップガンには、ボールを打ち出すときに回転をかける仕組みがあるんです。ほぼ回転のないナックルボールから、毎秒42回転まで設定できますが、目に見えないボールの回転をしっかりマシンに落とし込む作業には、ハイスピードカメラでの撮影と確認が不可欠なんですね。

EXILIMでハイスピード撮影ができるようになるまで、何十万、何百万の業務用カメラを使うしかありませんでした。レンタルでも高価な機材です。ハイスピード撮影できるEXILIMは数万円で買えますから、おかげでじっくり映像解析と調整ができるようになり、マシンのパワーアップにつながったのです。

だから、相手がカシオさんと知った瞬間に、いやだなぁと思いました。だって、写ると思っていましたから。それで思わず笑うしかなかった。あれは、どうしようもないというあきらめの笑いだったんです」(田中氏)

エア式ピッチングマシン「トップガン」のデモンストレーション。投球速度は160kmに制限されていたが、それでもすごいスピード!

判定としては勝利を得たものの「ワイングラスの脚が撃ち抜かれる映像には鳥肌が立った」と語る田中氏。一方、カシオの西坂氏も、トップガンの球威に驚愕したという。

カシオ計算機 QV事業部 商品企画部 第二企画室 西坂信儀氏

「時速370kmの球がどのくらいすごいか、なかなかイメージできないでしょう。これは1秒間に100m以上を進む速さ。それをEXILIMの30コマ/秒(1コマあたり0.033秒)で高速連写しても、1コマ撮影する間にボールは3m以上進んでしまう。しかも、ピッチングマシンは野球のマウンドにセットされています。

ピッチャーのマウンドからホームベースまで18.44mですから、ほんの0.2秒弱(0.185秒程度)で到達することになります。つまり、投げた瞬間からホームベースへ到達するまでに、わずか5~6枚しかシャッターが切れない。その中に写っているコマがあるかどうか、というすごい世界なんですよ」(西坂氏)

しかも、その球の姿は目に見えない。見えない球の一瞬を撮るのがどれだけ難しいか、西坂氏はトップガンのスーパーウルトラ剛速球を前に、あらためて痛感したという。いやはや、まさしくあの対決はハイスピードの頂上対決だったのだ。

しかし、勝者敗者ともに今ひとつ釈然としなかった「EXILIM vs トップガン」の勝負、カシオのリベンジは果たしてあるのだろうか? 共和技研の田中氏は「いつでもお受けします!」とのことだが…。

「私個人としてはやりたいんですよ。子供からも、その話題が出るたびにパパ負けたんでしょと言われますし。今日は仕事で九州に行くと言ったら、また負けに行くの? なんて…。早くいいところを見せたいとは思いますけれど、やるとしたら"ほこ×たて専用機"みたいなものを作る必要があるかもしれない。ただ、そうなると開発には時間も予算も必要なので、すぐにはいかないかもしれませんね。気長に待っていてください」(西坂氏)

「世界一行きたい科学広場in宗像 2012」の模様やトークショー、展示のスライドショーはこちらから →

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