既報のとおり、NVIDIAがKepler世代GPUの新モデル「GeForce GTX 660 Ti」を発表した。既存Kepler GPUに対してかなり抑えた299ドルという価格設定ながら、スペック上は上位のGeForce GTX 670に非常に近いというコストパフォーマンスに期待できる新GPUだ。今回、このGTX 660 Tiを搭載するASUSTeK Computerの新グラフィックスカード「ASUS GTX660 TI-DC2T-2GD5」を入手できたので、実性能を検証してみたい。

GeForce GTX 660 Tiを搭載するASUSTeK Computerの「GTX660 TI-DC2T-2GD5」

上位モデルと同様にGK104コアがベース

GTX 660 Tiは、28nmプロセスでトランジスタ数35.4億個のGK104がベースとなっている。リファレンス・スペックを紹介しておくと、CUDA Core(SP数)は1344基で、ROP数は24基、テクスチャユニット数は112基、GPUクロックは915MHz、GPU Boostクロックは980MHz、メモリは192bit接続の2GB GDDR5でメモリクロックは6008MHz(データレート)、TDPは150Wだ。スペックをよくよく確認してみると、GTX 670との違いはROP数とメモリ接続バス幅、TDPくらいしかない。

Kepler(GK104コア)のブロックダイアグラム。緑色の四角形それぞれがCUDAコア1個で、CUDAコア96個を備えるひとかたまりがSMXを構成。さらにSMX2基でGPCを構成する。GK104のフルスペックではSMX8基/GPC4基で、製品で言えばGTX 680がこれに当たる。GTX 660 TiはGTX 670と同等の、SMX1基分をDisableしたSMX7基/GPC4基だ

■既存モデルとのスペック比較
モデル GeForce GTX 660 Ti GeForce GTX 670 GeForce GTX 680
製造プロセス 28nm 28nm 28nm
トランジスタ数 35.4億個 35.4億個 35.4億個
ダイサイズ 294平方mm 294平方mm 294平方mm
GPC数 4基 4基 4基
SMX数 7基 7基 8基
CUDAコア数 1344基 1344基 1536基
ROP数 24基 32基 32基
テクスチャユニット数 112基 112基 128基
GPUベースクロック 915MHz 915MHz 1006MHz
GPUブーストクロック 980MHz 980MHz 1058MHz
メモリクロック 6008MHz 6008MHz 6008MHz
メモリタイプ 2GB GDDR5(192bit接続) 2GB GDDR5(256bit接続) 2GB GDDR5(256bit接続)
TDP 150W 170W 195W
補助電源ピン 6ピン×2 6ピン×2 6ピン×2
出力端子 DL DVI×2、DP×1、HDMI×1 DL DVI×2、DP×1、HDMI×1 DL DVI×2、DP×1、HDMI×1

なお、今回は機材手配の都合でテストは実施できていないが、GeForce GTX 660には無印モデルも存在する。NVIDIAから単体GPU製品として未発表のモデルのため、詳細は不明なのだが、グラフィックスカードの実機を確認してみると、基板長がGTX 660 Tiに比べてかなり短くなっており、扱いやすそうな印象を受ける。ただ、このGTX 660無印についてはGPUコアがGK104ではないという話も聞こえてきており、その真偽のほどや詳細スペック、無印がTiからどのくらい性能を落とすのかなどはわからないが、後日機会があればこちらも試してみたい。

こちらが無印の「GeForce GTX 660」搭載カード。今回はちょっと試せなかったが、GTX 660 TiとはベースのGPUコアが違うという話も。コネクタを見る限り、3way SLIにも対応している感じだ

Ti(右)と無印(左)の基板を比較してみた。冷却ユニットのプラスチックケース分の追加部分を除けば、カード長はかなり短い

電源補助ピンもGTX 660 Tiが6ピン×2なのに対し、無印は6ピン×1のみ

さて、今回実際に試すグラフィックスカード、ASUSの「GTX660 TI-DC2T-2GD5」について紹介しておこう。オーバークロック版の製品となっており、コアクロックがリファレンスの915MHzから1059MHへ、GPU Boostクロックがリファレンスの980MHzから1137MHzへと引き上げられている。そのため、今回のテストではオーバークロック状態での検証のほか、ツールでクロックをリファレンス相当まで落としたパターンでも検証を行う。その際、GPU Boostクロックのみうまく調節できずにやや高めであることと、GTX660 TI-DC2T-2GD5がかなり豪華な冷却ユニットと電源回路を実装した製品である都合上、GPU Boostの上限が高いと予想できるため、この後のテストではリファレンス準拠の製品よりは高めの性能が出るであろうことを留意しておいていただきたい。

「GTX660 TI-DC2T-2GD5」のGPU-Z。メーカー独自のオーバークロックが施されている

ツールで定格相当に引き下げた際のGPU-Z。Boost時のクロックはぴったりあわせることができなかった

「GTX660 TI-DC2T-2GD5」では、かなり太めのヒートパイプを装備していたり、リファレンス準拠クラスのカードと比べれば冷却能力が格段に高いと考えられ、そうなるとBoostの挙動も変わってくる可能性がある

ほか、性能比較用のグラフィックスカードとして、前世代のシングルGPU最上位である「GeForce GTX 580」と、同じ299ドル帯のライバルとして、NVIDIAがGTX 660 TiのターゲットGPUとしているであろう「Radeon HD 7870」も用意した。また、今回の検証では、以前記事をお届けしたこちらのリンク先の「GeForce GTX 670」の検証時と、ドライバ・バージョンは異なるがハードウェア環境を揃えておいたので、こちらの結果データも都度引用する。

■今回のテスト環境
GPU GTX 660 Ti (OC版) GTX 660 Ti (定格相当) GTX 580 Radeon HD 7870 GTX 670 (参考引用)
グラフィックスカード GTX660 TI-DC2T-2GD5 リファレンス リファレンス リファレンス
GPUドライバ ForceWare 305.37 Beta Catalyst 12.7 Beta ForceWare 301.34
CPU Intel Core i7-3770K
M/B GIGABYTE GA-Z77X-UD3H(Intel Z77 Express)
RAM Corsair CMZ8GX3M2A1866C9 4GB×2枚
Storage Plextor PX-128M2P 128GB SSD
Power ENERMAX REVOLUTION87+(ERV750AWT-G) 750W 80PLUS GOLD
OS Windows 7 Ultimate SP1 64bit

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