スマートフォンを構成する重要なもうひとつの要素

ここまで見てもわかる通り、らくらくスマートフォンはあらゆる面でスマホ初心者に向けて作りこまれており、なおかつ非常に多機能だ。スマートフォンの定義を"多機能な携帯電話"とするなら、らくらくスマートフォンは間違いなくスマートフォンに分類できるだろう。

文字が大きくて読みやすいのはらくらくホンからの伝統

しかし、一方で現代におけるスマートフォンにはもう一つの重要な要素がある。それは「パソコンの機能をベースとして作られ」ているからこその"自由度"と"拡張性"である。

後からアプリを追加したり、アプリのアイコンの並びを変更したり、お気に入りのアプリをホーム画面に移動したり……スマートフォンは購入後にどんどんカスタマイズして自分色に染め上げるのが楽しみの一つであり、その拡張性の高さこそがフィーチャーフォンとの大きな違いなのだ。それが、らくらくスマートフォンにはまったくない。

しかし、これは仕方のないことでもある。自由度が高いということは、それだけ迷う余地をユーザーに与えるということだからだ。

たとえばアプリをダウンロードするためにはGoogleアカウントを取得する必要がある。取得に成功しても、次はアプリをどうやって探せばいいのかという問題が出てくる。何とか見つけてダウンロードできても、そのアプリをどこから起動すればいいのかわからないかもしれない。

アプリ一つ落とすのにこれだけのつまずきポイントがあるのだ。ちょっとスマホに興味が出てきた程度のシニア層では、途中であきらめてしまうのが関の山だろう。逆にここをスッと理解できるようなら、最初から違うスマートフォンを持てばいいだけの話である。

らくらくスマートフォンがトレードオフしたもの

拡張性を高める方向性と、らくらくスマートフォンのシンプルなインターフェースとの相性もいいとはいえない。

らくらくスマートフォンでは、すべてのアプリや機能が並列に位置づけられているのではなく、はっきりと重要度によって区別した上で配置されているからだ。アプリの並び替えや入れ替えを想定していては、こうした思い切ったレイアウトにはできなかっただろう。らくらくスマートフォンの迷いなく使える優れたインターフェースは、スマートフォンが本来持つ拡張性とのトレードオフだったのである。

そう考えると、らくらくスマートフォンはスマートフォンではなく、フィーチャーフォンでもない、そのちょうど中間に位置する携帯電話であるといえる。よくいえばおいしいとこ取り、悪くいえば大画面とタッチパネルを備えただけの"スマートフォン風フィーチャーフォン"だ。そうした設計思想は、らくらくスマートフォンが従来のらくらくホンそっくりのインターフェースへの切り替え機能を搭載していることからも見て取れる。

従来のらくらくホンに近いインターフェースも用意

ただ、個人的にはらくらくスマートフォンの登場は歓迎すべきことだと思っている。というのも、周囲のシニア層を見る限り、フィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り換えのハードルは予想以上に高いからだ。らくらくスマートフォンは、その溝を埋めるのにちょうどいいバランスを保った機種であるといえる。

らくらくホンを足がかりに多くのシニア層が携帯電話に慣れていったように、らくらくスマートフォンの登場でシニア層へのスマートフォンの普及が一気に進む可能性も十分にあるだろう。

(記事提供: AndroWire編集部)