マイナビニュースの姉妹サイト「iPad iPhone Wire」の協力のもとお届けする、海上忍さんによる新型iPadの詳細レビュー。第4回となる今回は、新iPadならではの機能・特徴を踏まえた活用方法を考えます。

※本記事は、2012年3月30日にiPad iPhone Wireに掲載された記事の転載です。第1回~第3回と合わせてお読みください。
●第1回 Retina Displayを実現させた『A5X』の実力
●第2回 Retina対応or非対応? アプリの互換性を考える
●第3回 一気に高性能化した「iSightカメラ」の活躍の場所は

フォトストレージとして

新iPadの特性を活かす使い方の最右翼、といえる使い方が「フォトビューア」だ。iPhoto/Apertureからケーブル経由で、あるいはワイヤレスのフォトストリーム経由で新iPadに写真を取り込めば、2,048×1,536ピクセル(約314万画素)/264ppiという緻密な画面で楽しめる。これだけでも、新iPadを購入した満足感を得られるはずだ。

食べものの写真もシズル感たっぷりに再現できるRetinaディスプレイはフォトビューア向き

しかし、どうせならもうひとひねりして、『iPad Camera Connection Kit』を使ってフォトストレージ化したほうがいい。SD/SDHCカードのほか、USBカードリーダにマウント可能な各種メモリカードを利用でき、JPEGだけでなく各種RAWフォーマットにも対応している。アプリ『iPhoto』がリリースされるなど、レタッチ機能も充実しつつある。16GBモデルでは容量が心もとないものの、64GBモデルならば1日の撮影には対応できるはずだ。

『iPad Camera Connection Kit』を使えば、安価にフォトストレージ化できる

電子ブックリーダとして

もうひとつ、新iPadの"鉄板"な活用法と思われるのが、電子ブックリーダだ。Apple謹製の『iBooks』、Amazonの『Kindle』など、すでにいくつかの電子ブックリーダアプリはRetina対応を完了していることからしても、この方面における新iPadの需要は底堅いと考えられる。

課題があるとすれば、フォーマットおよび画像の解像度の問題だろう。現在、国内の出版社が多数参加している電子ブックストア、たとえば『マガストア』や『ビューン』など雑誌系は、コンテンツをPDFやEPUBなどの拡縮自在なタイプではなく、画素固定のフォーマットで配信しているため、拡大表示するとギザギザに見えてしまうのだ。

画素固定のフォーマットで配信されている既存のコンテンツは、拡大するとジャギーが目立ってしまう

スケーラブルなフォーマットのEPUBとPDFは新iPad向きだが、収録されたビットマップ画像はそのかぎりではない

これはコンテンツプロバイダーたる出版社が高画素化に応じるかどうかという単純な話ではなく、この際(600ppiなどさらなる高品質化に備えた)中間フォーマットでデータを保持しようという中長期的な話に発展する可能性もある。エンドユーザはただ期待して待つしかないが、『日本経済新聞 for iPad』など迅速に対応した事例もあるので、案外楽観的に構えていていいのかもしれない。

リモートデスクトップとして

今後PCのディスプレイも精密化するのかもしれないが、現時点にかぎり言えば、新iPadは一般的なPCより高い解像度で動作している。たとえば、MacBook Pro 13インチは1440×900、iMac 21.5インチは1920×1080ピクセルだ。言い換えれば、新iPadの画面内にすっぽりMacのデスクトップが収まってしまうことになる。

ここに着目すると、新iPadに「リモートデスクトップクライアント」としての可能性が見えてくる。OS Xにはシステム標準でVNCサーバ(画面共有機能)が装備されているため、新iPad側に『Remoter VNC』などのVNCクライアントを用意すれば準備は完了、低コストで実現できるところもポイントだ。

VNCクライアントアプリを導入すれば、高解像度のリモートデスクトップ環境を低コストで実現できる(画面は『Remoter VNC』)

ただし、現在のところRetina対応のVNCクライアントは見当たらない。独自方式でリモートデスクトップを実現する『TeamViewer』も、現時点ではRetinaディスプレイに対応しておらず、1920×1080ピクセルのデスクトップは画面の書き換えを目で追えるほどだった。Retina対応と描画速度の問題さえ克服できれば、という条件付きで大いに「アリ」の活用法といえるだろう。

1920×1080のデスクトップも、新iPadならキレイに収まる(画面は『TeamViewer HD』)

「for the rest of us」な人向けのプレゼントとして

iPad/iPad 2にはなくて、新iPadにはある機能に、「音声入力」がある。iOS 5.x/iPhone 4Sの音声アシスタント「Siri」と共用の(と推測される)技術を利用し、話しかけた言葉をそのまま文に置き換えてくれるこの機能は、新奇さが先行する現状では実用性に懐疑的な見方もあるが、新世代のインプットメソッド(IM)になりうるポテンシャルがあることは確かだ。

ただ、サーバからのレスポンスには数秒ほど待たなければならないこと、音声ゆえに結果の個人差が大きいこと、利用環境を選ぶこと(人前や騒がしい場所はNG)など、TPOを選ぶという点では既存のIMほど実用的ではない。IMを標榜するには、まだ洗練が必要だろう。

しかし、キーボードの前で固まってしまう年配の方など、デジタル機器に苦手意識を持つ層には大いにウケるのではなかろうか。"音声入力機能を備えたタブレットデバイス"として新iPadを考えると、エントリモデルで4万円台という値頃感もあり、一昔前ブームになったWindows 95は使いこなせなかったけどもう一度チャレンジしてみるか、というきっかけになりうる。デジタルデバイデッドな老親を持つ筆者も、プレゼント用にあと1台購入しようかと真剣に考えているところだ。

音声入力機能を使い、キーボードにほとんど触れることなく漢字混じりのメールを書きあげることができた

年配向け日本語文書作成ツールという意味では、強力な手書き入力アプリ『7notes』との組み合わせが最強かもしれない

(提供:iPad iPhone Wire)

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