スイスのバーゼルで開催された「BASELWORLD 2012」で、カシオ計算機は耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」の新モデル「GW-A1000」を披露。人気の高いパイロット仕様のスカイコックピットシリーズだ。開発には英国空軍(ロイヤルエアフォース)のパイロットも参加し、特別な「ロイヤルエアフォースモデル」(以下、RAFモデル)が存在する。開発に携わった英国空軍の現役エースパイロット、ネイサン・ジョーンズ氏にお話を聞くことができた。

現役パイロットの声を反映した「GW-A1000」

ネイサン・ジョーンズ氏

GW-A1000は、パイロット仕様にこだわった新モデルだ。英国空軍の現役パイロットから意見を聞きつつ、試作の段階から実際に使ってもらい、「こんな機能が欲しい」「こうなったら使いやすい」といった声を開発に反映させていったという。「カシオにはとてもたくさんのリクエストを実現してもらった。いくつか挙げると、ズルタイム(UTC)とローカルタイムの切り替えや、カウントアップ/ダウンタイマー、温度計、時計の色や文字板の光り方などだ」(ジョーンズ氏)。

補足していくと、まず「ズルタイム」は航空関係の用語で、世界標準時(UTC:Universal Time, Coordinated、協定世界時)のこと。戦闘機でフライトしているときは、ズルタイムとローカルタイム(日本時間やパリ時間など)との切り替えが割と頻繁に発生するそうだが、それをボタン1つで行えるのがポイント。GW-A1000のRAFモデルには、パイロットのリクエストによって、ズルタイムの"Z"をマーキングしたボタンが採用されている。

カウントアップ/ダウンタイマーは、いわゆるストップウオッチ機能だ。軍事のミッションというのは秒単位で正確に行われるため、タイマーを使うことでより正確にミッションを遂行できるという。

GW-A1000のRAFモデル(日本発売は未定)。赤い"Z"マークのボタンや針の形状、本体カラーに注目

ところで、GW-A1000はG-SHOCKとして初めて、"Smart Access"を搭載したモデルだ。Smart Accessを簡単にいうと、時計が持つ複数の"針"を別々のモーターで独立駆動させることで、スムーズな操作性を実現した機能/技術だ。このSmart Accessもパイロットの要望で、高速でフライトする戦闘機、そして狭いコックピット内では、腕時計を色々と操作するのは難しい。そこで、ワンボタンや少ないアクションで数々の機能を操作できる、Smart Accessの搭載となったわけだ。

こちらはレギュラーモデルのGW-A1000(日本発売は未定)。RAFモデルとは細かい違いがある

話を戻して、温度計については、戦闘機のコックピット内にある計器類を補助する一面があるとのこと。ミッション中に外気温が変わったときなど、どれくらいの温度までなら人間の身体や飛行機が大丈夫なのか、また、ある温度のときは「○○の出力で○○の速度」といったことを、パイロットは知っている。それらを計器類だけでは確認しきれないので、腕時計にも温度計を組み込んで欲しかったそうだ。

時計の針や文字板の光り方についても、"なるほど"と思った。時計の針は太く見やすくあって欲しいが、同時にシャープさと精密さも求められる。RAFモデルの針は根本が太く、先端に向かうに連れて細くなっていく。先端は矢印の形状をしており、太さ、シャープさ、精密さをうまく実現している。

文字板(針も含む)の光り方は、ナイトフライト時のリクエスト。夜間の飛行では暗さに目が慣れるため、明るい光が来ると目がそちらに戻ってしまい、計器類が見にくくなってしまう。パイロットとカシオの開発陣との間でトライ&エラーを重ね、ちょうどよい発光レベルに調整していったそうだ。

また、GW-A1000のRAFモデルは"ステルスグレー"のカラーだが、もともとは"黒"だった。このステルスグレーも、英国空軍のナイトフライト戦闘機の色に限りなく合わせたという。加えて、"黒"だと意外に目立つため、パイロットが地上に降りたときやサバイバル的な状況になったとき、発見されやすくなって命にかかわる。RAFモデル全体のカラーは、完全にパイロットのリクエストによるものだ。

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