Maxim Integrated Productsの日本法人であるマキシム・ジャパンは3月1日、都内で会見を開き、同社の自動車(オートモーティブ)向け戦略説明会を行った。

Maxim Integrated Productsの社長兼CEOであるTunc Doluca氏

まず、別件で日本に立ち寄ったという同社社長兼CEOであるTunc Doluca氏が挨拶に立ち、同社の成り立ちなどを説明した。「我々の製品カテゴリは28あり、実際に製造されている品種は約7000、ほぼ毎日新しいICを発表している。過去4-5年にわたり、Maximは大きな変化を行ってきた。組織改編を行い、注力市場へのアプローチを強化したり、サプライチェーン(SCM)の強化による需要への柔軟な対応の実現、特に2011年は大きな天災が日本とタイで生じたが、そうしたダメージを最小限に抑えることを可能にした」(同)とするが、こうした動きの背景には、市場の要求が変わってきており、小型化への要求が高まってきていることが挙げられるとした。また、こうした市場の動きに合わせて、アナログ半導体市場も変化してきており、1チップにデジタルもアナログも高集積化したものを求められるようになってきたという。

Maximのオートモーティブ事業部マネージング・ダイレクターであるKent Robinett氏

同社はアナログ半導体ベンダであるが、オートモーティブ分野は「ワールドワイドでトップフォーカスとしている分野」(同)であり、そうした分野への取り組みとして、「一番に考えているのは自動車メーカーや電装機器ベンダに対して、未来の自動車を実現するためのデバイスを提供していくことを目的としている」(Maximのオートモーティブ事業部マネージング・ダイレクターであるKent Robinett氏)とのことで、中でも日本は多くのOEMメーカーなどが軒を並べていることもあり、重要な市場とした。

そうした意味では同社がオートモーティブ向けに提供している半導体製品の種類は幅広い。LED照明やカーインフォテイメント向けといった比較的安全性は重要視されない部分から、ドライバアシスタンスやクルーズコントロールなど向け製品など。中でもUSBは非常に重要なインタフェースになると説明する。

Maximが提供するオートモーティブ分野向けソリューション(左)と、日本市場向けに注力するソリューション群(右)

この鍵を握るのはタブレットやスマートフォンの進展だ。スマートフォンやタブレットであれば、ワイヤレスで接続できたほうが良さそうだが、「確かにワイヤレスで接続させようという試みは行われているが、それではタブレット/スマートフォンのバッテリはただ消費されていうだけで、特に車内でいろいろなことをやらせようと思うと、すぐにバッテリが消耗してしまう。そこをUSBに接続して利用することで、USBポート経由で充電/給電しつつタブレット/スマホの機能をフル活用できるようになる」(同)とのことであった。

Maximの提供するUSB関連製品群

Maximのバッテリーアンドインダストリアルパワー事業部マネージング・ダイレクターであるNaveed Majid氏

また、こうしたダッシュボードやインフォテインメントの分野に加え、リチウムイオンバッテリ向けマネジメントICにも注力しているという。「Maximは19年にわたり、携帯電話などに向けたリチウムイオンバッテリ用ICの開発を行ってきており、現在はマネジメント向けソフトウェアの提供なども進めている」(Maximのバッテリーアンドインダストリアルパワー事業部マネージング・ダイレクターであるNaveed Majid氏)と、もともとは自動車向けではないが、バッテリマネジメント向けICの開発ノウハウを持っており、より安全性などが重要となる自動車分野に対しても、そうしたノウハウを活用することでマネジメントICを提供していくとしており、すでに第2世代のソリューションの生産体制が進められている状況にあり、第3世代に関しても近いうちに詳しい話をアナウンスできる予定だとしている。

幅広いアプリケーション向けにバッテリマネジメントICなどの提供を行ってきており、電気自動車やハイブリッド車もそのうちの1つと位置づけられる

ちなみに第1世代と第2世代の違いは、第1世代では各バッテリモジュールの監視コンポーネントをCAN経由でマスターコントローラに送っていたが、これだとコストを抑制できないということで、第2世代ではモニタIC側などもデイジーチェーンで接続することで、CANを使用しなくてもバッテリの監視を可能としたという。「バッテリの個々の充電状況や劣化状況を適切に判断することはリチウムイオンバッテリを大量に使う電気自動車では重要となってくる。これが監視できないと安全性を担保できない」(同)とのことで、第2世代品「MAX17830」では外部とのセルバランスの強化と診断機能を強化。そして次世代となる第3世代品「MAX17823」では、第2世代比でソリューションの堅牢性を向上させることを目指しており、差動のデイジーチェーンの強化やISO26262やASILのDグレードへの対応などが図られている。また追加機能としてリチウムイオン向けのユニポーラのほか、燃料電池向けバイポーラのメジャメント機能も搭載されるという。

Maximの提供するバッテリモニタICのロードマップ

なお、日本市場に関しては、「インフォテイメント分野」、「ボディエレクトロニクス」、そして「パワートレイン」の3分野に注力していくとしており、インフォテイメント向けにはUSBを中心としたインタフェースICやナビゲーション/デジタル放送受信向けICなどを、ボディ向けにはタッチセンサによるUIソリューションやヘッドアップディスプレイ向けソリューションなどを、そしてパワートレイン系では、電気自動車やハイブリッド車、燃料電池車といった新規分野向け製品の提案による新分野の開拓を進めていく計画としている。