米AT&Tが1月18日(現地時間)に発表した、同社スマートフォン/タブレット契約ユーザー向けのデータ通信の新料金プランだが、使用可能容量が増えているものの、実質的に最大33%の値上げであり、日々急増するデータ通信にネットワークが圧迫される各社の懐事情が透けて見える。

米国では1年前の常識が役に立たないほど頻繁に料金プランの改定が行われているほか、トラフィックを3G以外に逃がすさまざまな試みが行われている。この最新米国データ通信事情についてレポートする。

新料金プランは「値上げだがユーザーには損をさせない」がポイント

同社が18日に発表した新料金プランと、従来の料金プランの料金比較をまとめた表が下記になる。

スマートフォン向け 旧プラン(2010/6~2012/1) 新プラン(2012/1~)
AT&T Data Plus 200MB/15ドル 300MB/20ドル
AT&T Data Pro 2GB/25ドル 3GB/30ドル
AT&T Data Pro (テザリング) 4GB/45ドル 5GB/50ドル
タブレット向け 旧プラン(2010/6~2012/1) 新プラン(2012/1~)
AT&T DataConnect 250MB 250MB/15ドル 250MB/15ドル
AT&T DataConnect 3GB (2GB) 2GB/25ドル 3GB/30ドル
AT&T DataConnect 5GB (New) 5GB/50ドル

スマートフォンでは一番安価なAT&T Data Plusで5ドル値上げされる代わりに、使用可能容量が100MB増えている。同様に、Data Proでも5ドル値上げの代わりに1GB使用可能容量が増えている。もし1ヶ月の支払いサイクル中にこの容量をオーバーした場合、Data Plusでは20ドルの追加料金が請求され300MB使用可能容量が伸び、Data Proは10ドルの追加料金請求で1GB使用可能容量が増える仕組みとなっている。現在ユーザーがどの程度データ通信容量を消費しているのかは逐一Webのマイページやアプリで確認できるほか、一定のリミット(65%など)を超えるごとに警告メッセージがSMSで端末に送信されてくるため、おおよその目安となる。

タブレット向けプランであるAT&T DataConnectはiPad 3Gの発売に合わせて導入されたプランで、主に250MB上限の低額プランと3GB上限の大容量プランの2種類に分かれている。こちらは15ドルで250MBプランは現状維持となっているものの、大容量プランはスマートフォンのData Plus同様に5ドルの値上げで1GB容量が増えている。スマートフォンでテザリングする場合は明確に5GBのプランを選択しなければならないのに対し、こちらはテザリングの種別はなく、純粋に消費データ容量での区分となっている。新たに5GBのプランが提示されたのが特徴だ。また上記のカテゴリに入らないUSBスティックやホットスポット、PC等デバイス内蔵モジュール向けのデータ通信プランは、5GB/50ドルの固定となっている。使用容量をオーバーした場合の換算方法はすべてスマートフォンと同様だ。

単価あたりの通信容量は変化していないためわかりにくいが、これは実質的な値上げだ。そもそも多くのユーザーは月あたりの容量リミットに到達することはほとんどないため、指定した容量プランの下限料金を支払っていると思われる。ゆえにベース料金引き上げは、実質的な値上げとなる。実はAT&Tが2010年にiPhone 4発表のタイミングでデータ通信の無制限プランを廃止し、容量キャップ制を導入したとき、もともと30ドルで提供していた無制限データプランの代わりに用意したのが、上記の200MB/15ドルまたは2GB/25ドルのプランだった(この2年前までは「20ドルで無制限のプラン」だった)。新規ユーザーは強制の一方で、無制限プランを契約している既存のユーザーには「上限つきだけど安いプランがありますよ」という触れ込みでサービスを提案している。このあたりがAT&Tのうまいところで、今回の改定を含めて「実質的な値上げだがユーザーに損をさせない選択を用意する」という方針で一貫している。