結局、今回の値上げで「容量キャップつきで30ドル」という、元と同じ水準の価格ながら2年と経たずに割の悪いプランとなってしまったわけだが、これは米国の携帯電話料金プランの変化の激しさを物語る事象の1つだといえる。米国で取材する機会の多い同業者らは、現地で安定したデータ通信を行うために、毎回渡米のたびに新しいデータ通信手段を試しているのだが、過去にはVirgin MobileやT-Mobileといったサービスが料金改定で一気に使いにくくなり、現在はClearのWiMAXサービスが適度な料金で高速安定の接続環境を得られるものとしてよく活用されている。現在、AT&Tの「最低50ドル」というプランは米国でも最も値段の高い水準のデータ通信サービスに位置するが、これはVerizon Wirelessと同様だ。同社は現在2GB/30ドル、3GB/50ドル、10GB/80ドルでスマートフォン/タブレット向けサービスを提供しており、AT&Tの値上げによって両社がほぼ同水準で並んだ形となった。Verizon Wirelessはテザリング用のプランを別途定めていないため、この部分の差が両社を料金プランで比較した場合のポイントになるかもしれない。

2012年の米国での無線ブロードバンド利用はClearのWiMAXサービスがお得。Best Buyなどの家電量販店で、ブロードバンドルータ本体が100ドル、サービスの初期契約費用が50ドルで、1ヶ月の間安定した通信環境を(都市部限定だが)得られる。実際、CES取材の同業者5人が同時にルータを購入したほどだ

トラフィック分散でAT&Tが採った究極の手段とは?

料金プランの値上げはユーザーのデータ通信使用を抑制するとともに、収益拡大による設備投資回収や利益増大が狙いとなる。だがこうした対策だけでは増大するデータ通信を3Gで捌くのは難しく、別のネットワーク経路にトラフィックを分散させることで対応しているのが実情だ。AT&TやVerizon Wirelessはネットワーク関連会議の場で毎回必ずといっていいほど域内のトラフィック逼迫を訴えており、政府にはより周波数の割り当てを求めるとともに、当面の対策として3G以外の技術、例えば4G世代といわれるLTEやWiMAXなど別周波数で展開される技術の利用や、HSPA+のような上位規格を使ってネットワーク収容数の増大、そしてWi-Fiホットスポットの積極活用やフェムトセル/マイクロセルによるセルの密度増大など、さまざまな方策を進めている。