コンピューターの未来を左右するWindows 8のセンサー機能
そもそもWindows OSにおけるセンサー(感知器)機能は新しいものではない。既にWindows 7でサポートされているからだ。Windows Sensor and Locationプラットフォームで定義されたセンサーデバイスへの対応は、GPSに代表される位置情報に限らず、加速度センサーや温度センサーなど様々なデバイスをサポートすることが可能だった。もっとも、実際のデバイスが出そろうことがなかったため、現時点で有効活用される場面に出会うことは少ない(図10)。
Windows Vista時代のWindows SideShow機能を思い出してしまうが、Windows 8におけるセンサー機能は現実味を帯びてきそうだ。前節で述べたようにWindows 8はデスクトップ/ノート型コンピューター向けOSに限らず、タブレット型コンピューター上での動作を意識した設計になっている。そのため、タブレット型コンピューターが特定のセンサーを備えることで、OS側のセンサー機能が役立つ場面が増える可能性が高いからだ。
Windows 8の公式ブログである「Building Windows 8」の最新記事では、このセンサーが取り上げられた。タブレット型コンピューターの必須機能となりそうな、適応型光度センサーや自動的に画面の向きを回転させる傾斜計センサーを引き続きサポートし、タブレット型コンピューター上でのWindows 8有効性を高めたと述べている(図11~12)。
このあたりは既存のデバイスやOSで実現された機能のため、目新しい話でもない。興味深いのは、各種センサーを組み合わせることで実現するアプリケーションの存在だ。公式ブログに掲載された動画では、タブレット型コンピューターに車のダッシュボードを描き出し、タブレットを傾けるとハンドルも傾くというものだ。もちろん同様の機能を実現しているiPad/Android用ゲームが存在するのは周知のとおりだが、ここで述べたいのは可能性の問題である(図13~14)。
Microsoftとしては、ソフトウェアデベロッパーが開発しやすい環境をそろえることが重要であり、センサー機能を用いて新しいアイディアを生み出すのは開発者の仕事だ。しかし、肝心のハードウェアが出そろわなければ実現は難しい。もちろんセンサー部分はハードウェアが担うため、ハードウェアベンダーとの協力体制が重要だが、冒頭のWindows 7におけるセンサー機能の埋没や、前述のWindows SideShow機能のように開発途中版では話題に上がるものの、実際には対応するデバイスが出そろわずに終わってしまう可能性はないのだろうか。
長年Windows OSを見てきたが、同社が提示する新技術すべてが世の中に定着したわけではない。その一方で、タブレット型コンピューターと各センサー機能が生み出す可能性は、今後コンピューターのあり方に大きな影響を与えるはずだ。また同社はKinectという独自のセンサーデバイスを保有しており、既に同デバイスを内蔵したノート型コンピューターの開発に取り組んでいるという噂もある。それだけにWindows 8と対応するタブレット型コンピューターにおけるセンサー機能の拡充は、今後を占う試金石となるだろう。
阿久津良和(Cactus)