マーケットとセットになったデバイスの強さはiPhoneやAndroidが証明しているだけに、Windows Storeの完成度や利便性はWindows 8(開発コード名)の普及を左右する存在となる。また、MicrosoftはWindows 8自身を強化するため、センサー(感知器)機能に関する努力も怠っていない。今週も同社の公式ブログに掲載された記事を元に、新たに公開されたWindows StoreのデザインとWindows 8のセンサー機能に関する動向をお送りする。

ユーザーの利便性につながるデザインを用いた「Windows Store」

Windows 8のアプリケーション環境を大きく左右するWindows Storeだが、大方の予想では、Windows 8パブリックベータ版となる「Windows 8 Consumer Preview」と同じタイミング(今年2月後半)で一般公開される予定だ。Windows StoreとWindows 8の関係性については以前の記事をご覧頂き、本レポートではWindows Storeの公式ブログで公開された、Windows Storeのデザインとユーザーエクスペリエンスについて報告する。

まずは現時点で大きな成功を収めているAppleのAppStoreをご覧頂きたい。ページ上部はアプリケーションの広告を表示させ、続いて新作や注目のアプリケーションを列挙。右側にはナビゲーション用リンクやランキングが並んでいる。もう一方はタブレット型コンピューターやスマートフォン向けOSであるAndroid用アプリケーションストアであるAndroidマーケット。基本的にはAppStoreと同様のデザインだが、ランキングは左側に配置されている(図01~02)。

図01 iTunesからアクセスしたApp Store。iPod/iPhone/iPadユーザーに見慣れた光景である

図02 Webブラウザー経由でアクセスしたAndroidマーケット。基本的なデザインはApp Storeと同じだ

このようにコンテンツのダウンロード販売を主目的とするオンラインストアのデザインは、どうしても似通ってしまう。蛇足だがMicrosoftが現在運営しているオンラインショップの一つ、Microsoft StoreはWindows OSやMicrosoft Officeといったソフトウェアだけでなく、キーボードやマウスといったハードウェアも販売しているが、ほぼすべてが同社製品のため、前述した二つのオンラインストアと比べるとシンプルなデザインである(図03)。

図03 同じくWebブラウザー経由でアクセスしたMicrosoft Store。販売するアイテムが少ないせいか、シンプルな印象を受ける

そして本題のWindows Storeだが、やはりAppStoreおよびAndroidマーケットに似たコンセプトをもとにデザインされるようだ。ユーザーが目的のアプリケーションを簡単に見つけ出すことができるようにアプリケーションと検索、カテゴリリストを統合するデザインを採用。最初に表示されるページ(ランディングページ)では、注目アプリケーションを先頭に表示させ、そこから右ページにゲームや写真といったカテゴリごとにアプリケーションが表示される(図04)。

図04 Windows Storeにアクセスすると表示されるランディングページ。カテゴリごとにアプリケーションが並んでいる(画面は公式ブログより)

なお、カテゴリの順番などはユーザーの興味がありそうなブランドやアプリケーションを表示させる仕組みを用いて、常に変化するようになる予定だ。どのような情報をもとに判断するのか詳しく述べられていないものの、アプリケーションの閲覧やダウンロードといった情報を使用するのではないだろうか。

また、操作性はWindows 8を踏襲し、メトロスタイルが用いられる。ピンチ(二本の指を広げる/狭めるジェスチャ:セマンティックズームと呼称)でタイルのサイズを変更することができるため、興味がある特定のカテゴリは大きく、興味のないカテゴリは小さく表示させることができるという(図05)。

図05 興味がないカテゴリはジェスチャ操作で小さく表示させることもできる(画面は公式ブログより)

Windows 8とWindows Storeの親和性はメトロスタイルに限ったことではない。前述した検索機能はWindows 8の一機能として提供されるからだ。ローカルファイルの検索機能と同じく、メトロスタイルの右側に表示されるペインから検索を実行する仕組みを用意し、様々なアプリケーションを探し出すことができる。同じユーザーエクスペリエンスを持たせるために、Windows Store内でも同様の検索を行うことが可能なようだ。なお、同社では本機能を「Search Contract」と称して開発者向けの技術資料を公開している(図06~07)。

図06 メトロスタイル上の検索シーン。ローカルアプリケーションやファイルに加えて、Windows Store上での検索を示すアイコンが用意されている

図07 Windows Store上でも同じインターフェースを使用し、ユーザーの操作性を一貫させている

このほかにも公式ブログの記事では、検索時の絞り込みやアプリケーションのリストアップに関して説明しているが、興味深いのはアプリケーションの導入と更新機能である。アプリケーションがバージョンアップするたびに、その更新情報を探し出す疲労感は経験者ならご存じのとおりだが、Windows Storeで同様の苦労を強いられることはない。導入済みアプリケーションが更新された場合は、一日一回行われる自動チェックを経て、アプリケーションの更新をうながしてくる仕組みが用意されているからだ。

また、Windows 8を異なるデバイスに導入し、同じアカウントでWindows Storeにアクセスした場合、5台までの異なるデバイスで同じアプリケーションの実行を許可する仕組みが用いられる。この制限を超えた場合、いずれかのデバイスでアプリケーションの削除をうながすメッセージが現れる仕組みだ。当たり前だが本ロジックは有料アプリケーションに対する緩和策であり、無償使用可能なアプリケーションに関しては用いられることはないだろう(図08~09)。

図08 導入済みアプリケーションのアップデート画面。<Install>ボタンで更新を実行する

図09 こちらは購入済みアプリケーションを列挙した状態。1ライセンスに対して最大5デバイスまでの使用が可能

現時点でわかっているのは、従来のオンラインショップと違ったコンセプトを求められるWindows Storeが、ユーザーエクスペリエンスを踏まえたデザインを採用したことだけである。確かに先行中のAppStoreおよびAndroidマーケットと比較したくなるところだが、デバイスが異なる点で直接競合することはない。だが、台頭するスマートフォン市場を横目にタブレット型コンピューターという新天地を目指すWindows 8とWindows Storeの存在は、ビジネスモデルが同じだけに比較されるはずだ。

ユーザーとしてはアプリケーションストアとしての利便性を求めるだけで済むが、ソフトウェア開発者は自身もしくは自社製アプリケーションによる利益が伸びやすいストアであるか否かが重要なポイントとなる。先行組の長所と短所を踏まえてデビューするWindows Storeの完成度がいかようなものになるのか、Windows 8に期待する方々と共にその公開日を待とう。