新たなバックアップ&復元機能となる「リセット」と「リフレッシュ」

Windows 9x時代、定期的に再インストールするユーザーは少なくなかった。OSを使い続けることで、不要なファイルや邪魔なレジストリエントリが蓄積され、全体的なパフォーマンスが低下していたからである。Windows 7時代になるとレジストリエントリを起因とするパフォーマンス低下は見られなくなり(実際には遅延が発生しているものの、その差は微々たるものである)、OSを再インストールする場面は激減した。

それでも以前の状態に戻す復元機能や、バックアップによるリカバリを行う場面が減ったわけではない。何らかの理由で出荷状態に戻すことを求められることもあり、前述の機能が必要になってくる。その一方でWindows 8はタブレット型コンピューター向けOSという側面も担っており、コンピューター初心者に従来の復元機能を駆使させるのは難しい。

そこでWindows 8から新たに用意されるのが「リセット」と「リフレッシュ」機能である。前者はコンピューターから個人データやソフトウェア、ユーザー設定といった情報の削除と、Windows 8が導入されていたパーティションを消去し、同OSの再インストールが行われる。文字どおりすべての環境を"リセット=初期化"する操作方法だが、オプション設定を行うことでファイル復元を抑制するためにファイルの完全抹消も実行できるようだ(図08~09)。

図08 Windows REを利用し、出荷状態に戻すリセット機能(画像は公式ブログより)

図09 「Thoroughly」を選択することでファイルの完全抹消が実行される(画像は公式ブログより)

後者の「リフレッシュ」は理論ディスクをスキャンし、個人データやMetroスタイルアプリケーション、ユーザー設定といった情報をバックアップした上でWindows 8の再インストールを行ってから、バックアップデータの復元が自動的に行われる。いずれもWindows RE(Recovery Environment:回復環境)上で自動実行され、ユーザーはバックアップ&復元といった一連の作業から開放されるというものだ(図10)。

図10 ユーザーデータを保持したままWindows 8を再インストールするリフレッシュ機能(画像は公式ブログより)

しかし、気になる点はある。例えばリフレッシュ機能でバックアップ&復元されるのはMetroスタイルアプリケーションに限られ、デスクトップベースのソフトウェアはユーザーの手による再インストールが必要だ。その理由としてMicrosoftは、OSが不安定になる理由としてユーザーが導入したソフトウェアに起因する可能性が高い点と、誤ってソフトウェアを導入した際のことを考慮して復元対象から除外したとブログ記事で述べている。

本機能の目的は不安定化したWindows 8を安定した状態に戻すことであり、従来のバックアップ&復元とは違ったコンセプトで設計されている。そのためリフレッシュ機能では、ネットワーク設定や個人設定は保持されるものの、ファイルの関連付け設定やディスプレイ設定、Windowsファイアウォール設定は破棄されるようだ。

同社がWindows 8 Developer Previewで各機能の実行に要した時間も紹介しよう。システムイメージバックアップを用いた復元に24分29秒かかったマシンでリフレッシュ機能を実行した場合は8分22秒、リセット機能は6分12秒と、かなり高速に処理を終えている。前述のようにコンセプトが大きく異なるため、バックアップ&復元の代わりになるわけではないが、新しい復元方法として日常的に役立つ可能性は高そうだ。

本機能はコンピューター初心者向けのように見えるが、中上級者も活用できそうな機能も用意されている。それが、カスタムイメージを作成する「recimg.exe」コマンドだ。各種設定やアプリケーションの導入を終えた状態で同コマンドを用いてカスタムイメージを作成すると、リフレッシュ機能を実行する際のベースとして使用可能になる。我々が従来OSセットアップ後に一連の設定を終えたらバックアップイメージを作成し、復元時に活用するといった操作が可能になるということだ。

現在のWindows 8 Developer Previewでも使用可能だが、ブログ記事でも安定動作していない旨を示す注意があったので紹介にとどめるが、ベースとなる「Install.wim」に現在のデータをマージする仕組みのようだ。本機能が安定動作するか否かは実際に運用してみないと判断できないが、面白い使い方ができるのは間違いないだろう(図11)。

図11 独自のイメージを作成する「recimg.exe」。WIM(Microsoft Windows Imaging Format)イメージファイルの改良を行う

阿久津良和(Cactus)