10月末にGLOBALFOUNDRIESのCEOに就任したAjit Manocha氏

2011年12月12日、GLOBALFOUNDRIES(GF)は都内で記者説明会を開催し、CEOとしては初来日となるAjit Manocha氏が同社の現状と今後の展開について説明を行った。

説明会ではまずグローバルファウンドリーズ・ジャパン社長の吉澤氏が挨拶に立ち、日本国内のビジネスに関しては2012年には最低でも2桁%は伸ばしてゆきたいと簡単に説明を行った(Photo01)後で、Manocha氏にバトンタッチした。

Photo01:日本の半導体メーカーが相次いで自社での先端プロセス開発を放棄し、外部に委託するFab Lite戦略をとりつつあるのは既に周知の事実で、こうしたメーカーとのパートナー関係を結ぶことと、(Chartered Semiconductor時代からの)既存のファブレスメーカーとの関係を拡大することの両方に力を入れてゆく、という話でもある

変わってManocha氏はまずワールドワイドにおける同社の現状について説明を行った(Photo02)。現在はドレスデンのFab1、シンガポールのFab7が300mmウェハで稼働しており、ニューヨークのFab8も設備据付がほぼ完了してまもなく稼働するという話で、さらに旧Chartered Semiconductorの200mmウェハの生産能力も増強中ということだった。

Photo02:ちなみに氏はGLOBALFOUNDRIESのCEOとしては初来日であるが、それ以前はSpansionやNXP、AT&Tなどの企業を経ており、こうした時代に何度も日本を訪れているとか

ここで氏は同社のファンドリとしての概念の他社との違いを説明し(Photo03)、根本的にソリューションの提供の仕方が異なる、と説明した。またテクノロジに関しては、ファンドリだったCharteredとIDMだったAMDの両方を継承している点が他のファンドリとの大きな違いであると説明した(Photo04)。

Photo03:地理的な分散では日本の東日本大震災やタイの洪水を引き合いに、地域的に分散していることによるメリットを強調していた

Photo04:氏はHKMGを最初に導入したファンドリであることを何度も強調していたが、こうしたAMD由来となる先端プロセスをCharteredの資産と組み合わせる、というのがここまでのGLOBALFOUNDRIESの競争力の源の1つであったのは事実

その一例として示したのが特許ポートフォリオ(Photo05)で、主要なものは米国に集中しているが、日本ですら158の特許を保持している、という点を挙げておりこれも競争力に繋がる、としている。

Photo05:単に技術革新のみならず、顧客保護(GLOBALFOUNDRIESで製造したチップが他社の特許を使っているような場合でも、同社が保有している特許のクロスライセンスなどの形で利用料を支払わずに済む)とか、逆に同社の保有する特許を使いたければ同社で製造するという囲い込みも可能な訳で、特許保有数は多いに越したことは無い

その同社だが、先にも述べたとおり300mmウェハと200mmウェハの生産能力を急速に拡大しつつあり、またHigh-K/メタルゲート(HKMG)プロセスの量産も順調だとしている(Photo06)。

Photo06:もっとも200mm換算で720万枚/年という生産枚数は、TSMCの2011年通期の生産能力見通しの1325万枚の半分強でしかない訳で、まだ増強の余地はあるというか、まだまだ足りないという考え方も可能。ちなみにHKMG製品とはAMDの32nm SOIプロセスのLlano/Bulldozerの各製品の事

ついでFab 1/7/8のそれぞれについて現状の紹介と今後の動向をまとめた上で(Photo07)、今後も引き続き競争力を高める努力を続けることを紹介した(Photo08)。

Photo07:Fab 7の「特殊技術」とは、たとえばEmbedded Flashといったものになるそうだ

Photo08:当面はドイツのFab 1が先端プロセスを作り分けるための拠点となり、その間にNYのFab 8を立ち上げ、20nm以降に備えるというのが基本方針となる

これに続く質疑応答では色々と面白い話があった。特に20nm以下の先端プロセスでは、露光技術にArF液浸のマルチパターニングからEUVあるいは電子ビーム直描(EB)といった話が出てきているし、トランジスタ構造も3D化したり、あるいは300mmに続き450mmウェハとか3D TSVといった幾つかのテーマが業界内で進行中である。こうしたものについて、たとえばEUVや3Dトランジスタなどは既に共同開発を行っているし、450mmに関してはIBMなど5社で共同開発を行うAllianceに加盟するなど、準備は整えているとした上で、「我々はまずテクノロジーを作って顧客に提示するというやり方ではなく、顧客がそれを求めてきたら、そのタイミングで提供をする」というスタンスをとると強調した。こうした先端プロセスは現状、経済的に引き合うレベルにはまだ至っておらず、そこで必ずしも先頭を走ることでテクノロジの優位性をアピールするというやり方はしない、という話であった。

また28nmに関しては、既に同社が提供している32nmプロセスと28nmプロセスは殆ど同じであり、なのでスムーズに移行できるという説明がなされた。実は同種の説明は今年11月に開催されたARM Technical Symposia 2011における同社のセッションでも行われており、その時には「32nmと28nmでは殆どの寸法が同一なため、32nmプロセスでの開発の結果がそのまま28nmに利用できた」と説明されている。また同社は28nmで2010年8月にはCortex-A9を、2010年11月にはARMベースのValidation Chipをそれぞれ試験的に製造しており、既に物理IPなども揃い始めていることがアピールされている。実際同社はこの中セッション中に"32nm/28nm platform"という表現をしばしば使っており、たとえば32nmプロセス向けのIPやEDAのデザイン出力は、ほぼそのまま同社の28nmで利用できると説明していた。

今回は特に何か目新しい話があったというよりは、10月末にCEOに就任したばかりのManocha氏のお披露目、というのが主眼であった。「海外でのお披露目はこれが初」という話であったが、その背景にはGTC(Global Technology Conference)2011の開催がキャンセルされた(当初は10月27日に予定されていたが、CEO交代などもあったためか、急遽中止になった事も関係しているのかもしれない。ちなみにGTCは2012年もSanta Claraを初めとして各国で開催するという話であったが、具体的な日程とか日本での開催については「今のところ詳細はまだ決まっていない」(同社関係者)との事であった。