2010年のハイライト

ファウンドリ大手の米GLOBALFOUNDRIES(GF)は1月25日、同社CEOであるDouglas Grose氏が来日し、同社の2010年のハイライトと2011年の展望に関して説明を行った。

GLOBALFOUNDRIESのCEOであるDouglas Grose氏

同社は2010年1月にシンガポールのファウンドリChartered Semiconductor Manufacturingとの統合を果たし、その結果、「カスタマ数は大手ICベンダを含む150社となり、真のグローバルなファウンドリとなった」(Grose氏)とする。また、同氏は2010年を「プロセスの微細化による設計の複雑さの増大および、プロセス技術として新材料や新プロセスの導入による投資負担増などの影響を受け、それまでもそうした流れはあったが、IDMのファブレス/ファブライト化が進んだ年となった」と振り返った。

現在、同社は独ドレスデンにある300mmウェハ対応工場「Fab1」と、シンガポールにある「Fab2~7(Fab7が300mmウェハ対応)」の7工場を稼働させているほか、米国に300mmウェハ対応工場「Fab8」を建設している。2010年にはFab1は11万ft2のクリーンルームを新設。これにより、ウェハ処理能力は最大月産8万枚まで引き上げることが可能となり、2011年半ばまでに稼働を開始させる計画。現在の主流プロセスは45/40nmだが、32/28nmプロセスへの移行を順次進めており、すでに32nm High-K/メタルゲート(HKMG)によるSOIプロセスを用いたAMDの「Llano」(開発コードネーム)やSamsung ElectronicsのSiバルクプロセスによるモバイル機器向けSoCなどが立ち上げられており、Llanoは2011年中に量産出荷が行われる計画。

Fab1の処理能力を月産8万枚まで拡大

32nm HKMGプロセスで製造したAMDとSamsungのSoC

一方、Fab8についても、クリーンルームを約9万ft2追加し、総面積約30万ft2に拡張することを決定。これにより、全体のウェハ処理能力は月産6万枚となる。スケジュールとしては、当初予定の2013年からの稼働に変更はなく、プロセスとしても32/28nmより開始され、22/20nmに注力していくことに変更はない。

Fab8の処理能力を月産6万枚まで引き上げることを計画

また、同社はアブダビに先端テクノロジーの研究開発用クラスタを構築することを決定。すでにアブダビ国際空港の隣接地約3000m2の用地を確保しており、同地においてIPベンダとの協力による自社ファブ向けIPの拡充を進めるほか、次世代プロセス以降での効果的なクリーンルームの開発などを行う。同氏は「同クラスタには、必要なものを必要な時に立ち上げられるようにしたい」というスタンスを表明しており、需要などがあれば、将来的にアブダビに前工程工場の建設の可能性もあるとした。

中東のアブダビに研究開発拠点を設置し、アラブの学生などの囲い込みなども進める。アラブ人学生のための国際奨学金制度などの創設も行っており、すでに2010年夏に60名のアラブ人学生がFab1にて半導体技術の習得などが行われた

なお、同社の28nmプロセスはIBMなどと共同で開発を進めているもので、Gate Firstを採用。40nmプロセス比で集積度は約100%増大するほか、最大50%の高速化、スイッチあたりのエネルギーの50%低減が可能なことに加え、仮に同プロセスでGate Last構造を採用した場合に比べてもチップサイズを10~20%縮小することが可能となっているという。

28nm HKMGプロセスを40nmプロセスと比較した場合の各種性能指標

同プロセスは、GLOBALFOUNDRIES、IBMおよびSamsungによるCommon Platform Allianceでも用いられるもので、これら3社およびSTMicroelectronicsの「Crolles2」の4つのFabにて2011年の内に同期立ち上げが実施される計画で、彼らはこうした取り組みを「FabSynch」と呼んでいる。「カスタマに複数Fabでの製造オプションを保証することで、Fabを選択するメリットを提供できるようになる」(同)ということが、この同期立ち上げの売りであり、多拠点展開をすることで、世界的なサポートを提供していくとする。

世界4極で同期して立ち上げることで、カスタマのニーズに合わせた場所での製造が可能となる

また、ARMのCortex-A9と組み合わせ、SoCプラットフォームとしての提供(Semper:開発コードネーム)に向けた開発も進められており、すでにシリコン上にコアを搭載した状態での動作確認を終えているという。

ARMとの協業により、同社プロセスに最適化されたCortexが搭載されることとなることから、より低消費電力、ハイパフォーマンスを実現可能となるというのがGLOBALFOUNDRIESの主張。この協力関係は20nm以下のプロセスでも継続して進めていけることを期待するとGrose氏はコメントしている

2011年は28nmプロセスを本格的に立ち上げる年に

こうした2010年の取り組みを背景にGLOBALFOUNDRIESでは、2011年の設備投資額を前年比2倍となる54億ドルとすることを計画しているという。主な内訳としては、Fab1の生産能力の拡大、Fab8の建設および製造装置の導入、アブダビの技術クラスタの推進、そして200mmウェハのMEMS向け処理能力の拡大としている。

特に28nmプロセスのデザイン実用化について重要な年になるとの見方を示しており、製造プロセスとしてはモバイル機器などに向けた低消費電力プロセス(SLP:Super Low Power)のほか、ハイパフォーマンス(HP)、超高性能(HPP)の3つを現時点では計画しており、最初のカスタマは2011年第2四半期の初めころにテープアウトする計画としている。

28nmプロセスはEDAやIPなどもパートナー企業と開発が進められており、総合的に開発する環境が整いつつある

また、28nmプロセスの次のフルノードとしては、22nmではなく20nmを選択した。「我々としては多くのカスタマが22nmではなく20nmを選択すると見た。それは28nmから22nmでは、それほどメリットを受けられないと感じているためだ」(同)としており、2012年の後半にリスクプロダクションを行う計画。トランジスタ構造としては、Gate Lastを採用し、SLPおよびHPの両方に適用可能な構造を採用する予定としている。

22/20nmプロセスはGate Last構造を採用。また、フルノードは22nmではなく20nmとしている

この28nmで採用したGate FirstからGate Lastへの変更に対し同氏は、「カスタマニーズによるもの。他のファウンドリが同世代のプロセスにGate Lastを採用しようとしており、我々としてもGate FirstかGate Lastかでその部分での差別化を提供するつもりはなく、むしろカスタマにいらぬ混乱を与えないためGate Lastを選択した面もある」と説明する。

3Dパッケージの研究開発も推進していく

MEMSもセンサなどの市場拡大に伴い需要が急増しており、そうしたニーズに対応するために200mmウェハでのMEMS対応を進めていく計画

さらに、20nmプロセスの先にはEUVを用いた次々世代プロセスの姿も見えている。すでにIBMらと共同でASMLのEUVαデモツールの活用などを進めており、2012年後半にはFab8へのEUVの導入を行い、実際の製造現場でのすり合わせを進めていくことで、製造装置の試作フェーズを省略し、2014年もしくは2015年に14nmプロセスで量産体制を確立する計画としている。

EUVは14nmプロセスから適用する計画だが、スケジュールは流動的で、現時点では14nmとしているが、状況次第では変更も大いにありうるとGrose氏は語っていた